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無気力JKの非日常生活  作者: CHEB丸
第1章
7/19

〜こんな状況でなければ君を選んだのに〜

知由ちゃんのターンに戻ってきました♪

「うわぁぁあ!」

ボグリッ べチャッ


「っ!!」

グシャアッ


パチパチパチパチ

「お見事っ!」



数分前。


「ムリムリムリムリ!それは、ちょっとまだ待って!」

「あ?なめたことばっか言ってんじゃねーぞ、死にてぇのか。あとてめぇ、さっき言っただろ、大きな声は出すなよ。あいつらが何に反応して近づいてくんのかまだ分かってねぇんだから」


眉間に深くシワを刻んだ知由は、泣き出しそうな顔の田沼を睨んだ。


「ゔっ...わ、悪い、つい...。でも」

「でもじゃない。いいか、考えろ。

パターン1 : 私が外で見張っていて、みんなは中で食料および必需品の確保。そうしてる間に店の奥にいたゾンビに襲われ仲間を失う。

パターン2 : 私が中を一掃し、みんなはその間店内か外で待ってるが、その間に外から来たゾンビに襲われ仲間を失う。

パターン3 : 私が中を一掃し、他2人が外を見張り、やってきたゾンビを倒す。その間にみんなは物資を確保し、みんな安全にここを去る。

どれがいい?」

「分かってるけど!!いや、パターン3なのは分かってるけど!!」


確実に安全に物資を手に入れられる方法はもちろんパターン3であり、知由が考える他2人というのは、部長である田沼と腕力が期待できる戸塚(とつか)英智(ひでと)の2人だった。


しかし、その2人自身は非常に苦しい葛藤の中にいた。


仲間は守りたいし、生き残りたい。しかし、人を殺す勇気がない。


本当は知由も、迷いがあるうちはさせないべきだと考えていた。

こういう状況において何よりも怖いのは"迷い"であった。それはゲームでなく映画版のソレで何度も再確認していたことだった。


だが、この先を考えると、なるべく変なゾンビに会う前に少しでも手慣らしをしてもらいたかった。


本当にそんなゾンビがいるかは分からないが、最悪の事態を想定するのが基本だと考えたのだ。さすがにゲームの中で見た寄生虫などは出てこないだろうが、ケルベロスあたりは否定できない。


あまりに飛躍した考えに思え、自分でも呆れて笑ったが、事実、目の前でそんなことが起こっている。笑っていられない。


「分かった」

「え?」


それだけ言うと田沼は少し前から前方に姿を現していたゾンビに向かって歩いていく。それに続いて戸塚も小走りで付いて行く。


大声を出すなと言われたが、さすがに無理だった。



そうして、冒頭に戻る。



コンビニ内には2体いた。

知由はそれらを殺すと、みんなを集めた。


「じゃあ田沼と戸塚以外はいるね。できるだけ物資を荷物に詰めて。なるべくカロリー◯イトとかそこらへんの長持ちするやつね。あと水も2本は持っといて。それと電池、これもありったけ頼む。他の無駄なものは入れないように。それと女子、集まって。男子はほら、散った散った」


「女子、生理用品は各自で持って。このあとドラッグストアにも寄るけど必ず確保できるとは限らないから。それといくら信頼した部員だからと言っても所詮は盛んな高校生男子だから。言いたいことは分かるよね?くれぐれも気をつけて」


必要なことを端的に述べると知由自身も必要なものを詰め始めた。


そして見つけてしまった。

「こ、これは...!!!」


期間限定のちょっと贅沢なロールケーキ。そういえば今日が発売日だった。

知由は朝、帰りにコンビニに寄ろうとしていたことを思い出す。


そして悩む。


(「無駄なものは入れないように」...。ついさっき自分で言ったなぁ...。いや、これは無駄ではない。私のエネルギーとなりうるのだ。よし)


そうして例のブツを手に取るが...


(ぁあぁあ!こうやって欲に駆られてハッピーエンド迎えたやつ見たことねぇぇえ!うぉぉおおぉ)


(あぁあごめんなさい正直やったぁゲームよりスリルあるし楽しいかもとか思っててすいませぇえぇん)


そうして泣く泣くキラキラ輝いて見えるロールケーキを棚に戻したのだった。






知由は沈んだ気分のまま、田沼と戸塚のいる店外に出た。


「ありがとう」


知由はもっと説得に時間がかかると踏んでいたが、知由としては思った以上に早く2人が覚悟を決めてくれたのは嬉しい誤算だった。

こればかりは気分云々ではない。きちんと伝えておかなくては。


「いや、よく考えたらこんなヘラヘラな干物女に全部任せてる方が泣けてくるしな」

「お前そんなに動いてよく生きてられるな。いつも日光に当たってる時間なんかすくねぇくせに」




みんなが物資を詰め終わり、外に出ると2人はゾンビ並みに死んだ顔をしていた。

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