〜街1〜
すいませぇえぇん!半年も遅くなりました。
よろしくお願いします_:(´ཀ`」 ∠):
「櫻田先輩...」
「悪い、牧野までみんなとはぐれたな」
「いえ、それはまぁ...大丈夫です。櫻田先輩がいますし」
「・・・」
似ていた。
あまりにも似ていたーーー彼に。
(本当に、兄弟なんだな)
牧野と知由が非常階段を駆け下りた時にはすでに咲真たちの姿は無かった。
「それより、他の皆さんのほうが心配です。えっと...」
「由馬がいるから、だろ?」
「・・・」
「言いたいことはわかるが、きっと大丈夫だ」
「そう、ですか...」
由馬は確かに異常だった。
だがーーー
「少しの人間らしさと優しさくらいは残しておいてほしいものだな」
「櫻田先輩...」
(きっとあいつは私のいないところで無意味なことはしない)
「ま、とりあえず、ここにいたらまたあの化け物が来るかもしれない。移動しよう」
「はい」
「はーぁ、ちぃ姉と離れちゃったなぁ」
「・・・っ」
「な、梨蔵くん」
由馬は苦しそうにする咲真を横目で見た。
「苦しいの?」
「う、るせぇ・・・」
「はっ、威勢だけはいいんだね」
(ちぃ姉はきっと、そうだなぁ、あそこに行くかなぁ)
「行ってもいいんだけどねぇ・・・手間だからやめとくか。どうせまた会えるし」
町田は咲真を気遣いながらも由馬の出方を伺っている。
「そんなビクビクしないでよ。殺したりしないよ」
由馬からの意外な言葉に驚きつつも、ほ、と息を下ろす。
それも束の間
「殺すならちぃ姉の前でないと意味がないんだ」
「っ!!」
町田はじゃり、と地面を踏みしてめて身構える。
「だから今殺したりなんかしないってば。馬鹿だな。・・・ちっ、逃げる方向間違えたな・・・裏山のほうに来ちゃった」
ミーンミーンと蝉の音に包まれている。
「お、下りないの?」
「うーん、それでもいいんだけど。足手まといが二匹もいるから今市街に行くのは避けたいんだよね」
「・・・」
町田は由馬に違和感を感じていた。
「一度登って向かいから下りるよ。時間はかかるけど市街を通るよりマシだ」
そう言って由馬は歩き出す。
「山の向こう側に何かあるの?」
「別に君に教える必要はないよね」
「・・・っ」
違和感をぬぐいきれないまま町田は気を失いかけている咲真を肩で支えながら由馬の後を追った。
ズシャアッ
「ふぅ。市街地はやっぱ多いな」
「櫻田先輩」
「んー?」
本当は、どれだけ心配なのだろう。
咲真も、町田も、知由にとってどれだけ大切かなんて、見ていれば分かる。
(一緒なのが、僕じゃなければ)
牧野はそう思わずにいられなかった。
「あの」
「牧野」
「・・・っ、はい」
「日が落ちてきた。急ごう」
牧野はうなづく以外しようがなかった。
見晴らしがいい広場の中央、噴水に二人は腰掛けていた。
「あと5発、か・・・」
銃の玉数を数えて知由はため息をついた。
牧野はそれをただ見ていた。
「なんだ、使ってみたいか?」
「い、いえ!そんな、僕には無理です!」
言ってから、しまった、と思った。
(こ、これじゃあまるで櫻田先輩は異常だと言ってるようなものじゃないか・・・)
「あ、あの」
「冗談だ。お前が使ったりしたら肩が外れるぞ」
「!」
(じょ、冗談・・・。先輩も笑ったりするんだ。・・・笑ったというより、微笑んだ?)
「慎重に使わないとなぁ・・・」
そう言いながら大理石の上に寝転ぶ。
「仮眠をとる。何かあったらすぐ起こせ」
「あ、は、はい。おやすみなさい」
「ん...」
するとすぐに、すー、という寝息が聞こえてきた。
(はっや!!先輩寝るの早!!・・・そういえばよく寝てるって田沼先輩も言ってたなぁ・・・)
(田沼先輩・・・みんな・・・)
「死んじゃった・・・」
知由は牧野の殺すような泣き声を背中に聞いていた。
夢を、見ていた。
まだ、幼かった頃。
「ちぃ姉!見て!ひまわり!でっかいの!」
「お姉ちゃん!見て!せみ!」
「智知!やめてよ!」
「なによ、怖いの?男の子のくせに!」
あのとき、私はなんて言葉を返したんだっけ。
7日のいのちを握った手が、ひどく残酷に見える。
ジっ。
と、命の絶える音が聞こえた。
「ほら!智知が握るから!せみさん死んじゃったじゃん!」
「ゆ、由馬が!だって、ちあき、だって、ただ、お姉ちゃんに」
そうだ、それであの子、泣いちゃったんだった。
大変だったな。
由馬まで泣いちゃって。
「おねぇちゃん」
なぁに?
「命って、簡単に消えちゃうんだね」
「・・・はい・・・先輩!」
はっ。と目を覚ますと周りは闇に包まれていた。
「牧野、悪い寝すぎた。どうした」
「あの、ずっと、変化はなかったんですけど・・・不気味っていうか・・・何かに見られてる感じがするんです。すいません、こんな感じ、とかで起こしてしまって」
「いや、構わねぇ。ていうか寝すぎた。ほんとに寝すぎた。」
反省、と、心の中で思いつつ、周りに神経を集中させる。
「すいません、やっぱり気のせいでしたね。すいません」
「いや、謝るな。・・・ビンゴだ」
「え?」
やはりこの後輩はキれる。
「何かいる。それも大量に」
「っ!?」
(なんだ・・・?どうしてそこで止まってる・・・なにを伺ってる?・・・幸い、囲まれてはいないな)
広場の西方に広がる商店街にそれらはいた。
幸い、東方には何もいないようだ。
さて、どうする
おそらく、どれだけの数がいるか分からないが私1人では勝てない。
東方に進むのも手だが、そっちは知由はあまり道に詳しくない。夜の行動は避けたいところだった。
「えぇ、今探しています」
「!?」
「・・・」
北方の、渋滞や事故やらで積み重なった車の山の方から声が聞こえた。
2人はとっさに地面に履い、大理石に身を隠した。
「分かっていますよ。はいはい。ていうかそちらのミスでしょう。あんなに易々とケースが破壊されてしまうなんて。え?あぁ、そうですね・・・私はデスクワーク派ですのでそこらへんはいまいち。はい・・・〜〜・・・」
誰かと電話をしているらしきその人は西方に歩いて行った。
(あいつ・・・!向こうには大量のゾンビが・・・!)
「ちっ」
「先輩?」
仕方なく止めようと大理石の影から身を乗り出したときーーー
ブシャァ!ガシャ!
どがっ
バキバキッ
グキ ゴキ
フシュッッ!
男は、素手で、ゾンビの首を、頭を、胴体を、片っ端から破壊していった。
文字どうり、"破壊"していった。
「なんだよ・・・チートかよ。つまんねぇな・・・」
そう言いながらも、知由の目は細めたまま尚も破壊を続けている男の背中を見ていた。