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無気力JKの非日常生活  作者: CHEB丸
第1章
16/19

〜警察署4〜

コツン コツン


コツン



コッ


その影が廊下の左側に姿を現す。

逆光で影しか見えない。



小さい



それが知由を除く4人がまず初めに思ったことだった。その影は小さかった。

まるで、子供のように。


「グルゥゥッ...!」



パンッ パンッ


再び銃声が鳴り響き、走り始めていたケルベロスが動かなくなる。


「邪魔」


小さな影は一言そう言うと、5人に向かって歩を進めた。

だんだん近づいてきて、顔が少しずつ見えてくる。


「え、...あれっ....?」

近づいて来る人物を見て町田が動揺を見せた。

「町田?」

咲真が声をかける

「あ、あれって...多分...」


小さな影だった人物は5人の前に立つ。





「やぁ、ちぃ(ねぇ)、久しぶり」










少年は警察署へ向かった。

父親と母親には武器を所有するため、そう伝え。

本当の目的は


(ちぃ姉ならきっと警察署に向かうだろうな)


そう心の中で笑い。


少年の名前は、櫻田 由馬(ゆま)

正真正銘、血の繋がった知由の3歳年下の弟だ。


2年前に語学留学のためにアメリカに渡った由馬は、日本に戻ってきていた。


その顔に、ゆがんだ笑顔を張り付けて。






「由馬...」

4人を庇うようにして前に立つ知由の表情は見えない。

「そんな怖い顔しないでよ。会いたかったよ、ちぃ姉」

由馬は、そう言って笑う。


咲真は息を飲んでふたりを見つめていた。


ーーー姉弟の再会と言うにはあまりに場違いな殺気を知由から感じながら


「知由...」

「・・・」

「初めまして、櫻田由馬です!ちぃ姉の弟。僕のことを知ってるのはその女の子だけかな?確かちぃ姉と中学1年の時に同じクラスだった子だよね」

「よく覚えてるな」

知由が低い声でそう言う。

「覚えてるよ、ちぃ姉に関することはなんでも」

「相変わらず気持ちの悪い」

「ひどいなぁ」


からっと笑うと由馬は咲真に目線を移した。


「貴方は...」

「あ、俺は梨蔵咲真。知由と同じ高校の友達だ。助かった、さっきはありがとう」

「...梨蔵?」

「え?」


「由馬」


由馬は一瞬知由に視線をやり、また咲真に戻した。


「まぁいっか。ふーん、そう、よろしくね」

そう言って右手を差し出す。


咲真もそれに倣い右手を差し出す。



カランッ



「...え?」

咲真の前にはいつの間にか知由が立っていて、足元にはナイフが転がっていた。

「ったー...。さすがちぃ姉、よく気付いたね」

「サクを傷付けたら許さない」

「へぇ、そんなに大切なんだ?その男が。妬けるね」


由馬が左手に隠し持っていたナイフで咲真を切りつける直前、知由が由馬の左手からナイフを叩き落としたのだった。


「今ので確信した。あれ、お前の仕業だろ」

「なんのことかな」


知由は落ちたナイフを拾いあげる。

4人の思い浮かべた"あれ"とは、入り口の残骸のことだった。

しかし、知由の口からはもっと違う、狂気に満ちた事実が発せられた。





「お前がみんなを殺しただろ」





「...どうしてそう思うの?」

「考えれば分かることだ。お前、ケルベロス、わざと生かしたままにしといただろ。そして8階と1階の非常階段を意図的に開けておいた。警官ゾンビは計算外、ってとこか?」

「あったり〜♪」


カチャリ


知由がナイフを構えた瞬間に、安全装置が外された拳銃が、咲真の眉間に突き付けられた。


知由は知っている。

今の由馬は本当に引き金を引ける奴であることを。

そして、以前はこんな奴ではなかったことも。


ナイフを床に投げた。


「賢明だね。でもこの男にそんな価値があるの?怪我もしてるみたいだけど。罪滅ぼしのつもり?」

「黙れ、お前には関係ない」

「えー、冷たいなぁ。殺しちゃうよ?」


(罪、滅ぼし...?)


『僕ね、鼻がいいの。君から血の匂いがする』


咲真が混乱しているのを、怪我を言い当てられたことだと思った由馬は自分の鼻を人差し指でトントンしながら、まるで、内緒だよ、とでも言うように声を潜めて言った。


「由馬...。お前、どうして、そんな」

「僕にはね」


「僕には、ちぃ姉以外はいらないんだ」


「アメリカに渡った時に確信したよ。ちぃ姉、君がいなくて僕がどれだけ寂しかったか分かる?死にそうだったよ」

「だから、みんなを、殺したのか?」

「そうだよ」


さも、当然のように。


知由以外の人間は価値が無いかのように。

いや、実際彼には価値が無いのだろう。


「ちぃ姉以外は邪魔だもん」




精神異常者


知由のその表現が合っていたと、4人は初めて本当に分かった気がした。





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