〜警察署 1〜
そろそろちゃんと怖くなってきます(^◇^;)
何体かゾンビには遭遇したが、移動距離が短いこともあって、特に危険はなく警察署に着くことができた。
しかし、予想通りといえば予想通り、辿り着いた警察署はひどい有様だった。
「こりゃ完全に機能してないな...」
警察署を見渡した咲真はそう漏らした。
咲真は一度警官ゾンビと遭遇している。怖さが人一倍リアルにのしかかってくるのだろう。
「いいね、ここからは今までほど甘くない。全員、自分が死ぬ可能性を考えておくように。まず先に私とサクが行く。合図したら中に入ってきて。」
知由が全員に釘を刺し、警察署の敷地内に入り、扉の中に入っていく。
知由達の姿はもう見えない。
知由達が警察署に入ると、そこには想像をはるかに超える景色があった。
「なんだ....これ....」
「どうして...」
その頃外では、知由たちの合図がなかなか出ず、みんな不安を隠しきれていなかった。
そんな中、田沼と戸塚が口論を始めていた。
「遅くねぇか?やっぱり補助くらいしに行ったほうが...」
「落ち着け、櫻田で苦戦してるなら俺らが行っても足手まといになるだけだろ」
「あぁ!?怖いだけだろ!?俺は行く!」
「な、おい、田沼!落ち着けよ!」
田沼が戸塚に掴みかかろうとしたその時
「あ、合図が出たよ」
「!!」
ガラスの割れた扉から知由の手が伸び、ひらひらと振っていた。
「じゃあみんな、行こーよ」
国田がみんなを先導し、知由達の元へ向かう。
しかし、歩き始めてすぐ戸塚が足を止めて警察署の裏をじっと見ていた。
「...?」
「戸塚くん?どうしたの?」
「いや、今何か横切ったような...」
「どうせ野生の動物が下りてきただけだろ。警察署の裏の方面、山だし」
「田沼くん。でも待って、ちーに言ったほうが」
「いいよ町田、戸塚のビビリはほっといて。いこーぜ」
「ビビリじゃねーし」
「置いてかれるぞ、早く行くぞ」
「うん...」
「すげぇな、これ全部お前ら2人でやったのか...?」
警察署内に入った部員達が漏らしたのは"感嘆"だった。
何せ、中には十何体もの警官ゾンビの死体が転がっていた。
警官ゾンビの他にも普通のゾンビの死体は山積み状態になっていた。
「いや、私らじゃない」
「え...?」
そう、知由と咲真が警察署内に入り込んだ時にはすでにこの状態だった。
一応死体となっているゾンビ以外にゾンビがいないか少し署内を見回ってから合図を出したのだった。
しかし、あることが引っかかり、見回りもそこそこに急いで合図を出したのだった。
「なんだ、ラッキーじゃん。誰かが倒してくれたってことだろ?」
田沼のその言葉にみんなほっとした顔を浮かべた。
みんなの久々の安堵の表情だった。
しかしその発言を知由が即座に否定した。
「いや...。みんなに一つ伝えておく。ここから注意すべきなのはゾンビだけじゃない。"人間"にも注意しておけ。むしろそっちのほうが危険そうだ」
「え?」
「どういうことか説明してやれ。ぼやぼやしてる時間はないだろ」
咲真が知由に厳しい声で言う。
「分かってる。急ぐから早口で一度だけ言う。質問は全てを伝えてからすること」
そう前置いて知由は考えを止めることなく述べた。
「入ってすぐに4、5歳の子供の死体があっただろ。おそらくゾンビになったものだろうが。あの位置からしてこれをやった奴がこの警察署内に入って1番最初に出会ったはずのゾンビだ。これはどのゾンビにも言えることだが、首のえぐれ方が異常だ。普通に殴ったくらいじゃこんなにはならない。それはその子供のゾンビにも言えることだ。でも君たちなら分かるはずだ、元は人間だったものを殺める罪悪感。ましてや子供だ。さすがに私やサクでも躊躇う。よほどの窮地を乗り越えてきた奴の仕業とも考えられるが、まだこんな世界になって1日も経ってないからそれは考えにくい。つまりーーー精神異常者。少し言い過ぎかもしれないけどこれが1番君たちがイメージしやすい言い方だろう」
「もうひとつ、おそらくこれは全てーーー
1人の人間がやったということ、だ」