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ヘルマンと娼婦

謎の老人と別れたあと、ヘルマンは彼から与えられた巨馬(グルファクシ)の手綱を牽きながら目的の場所に向かって歩いている。



「すげえ馬だ! あんな名馬を駆る戦士様なら、すげえ豪傑なんだろうな!」


「戦士様と白馬なんて素敵♡ ああ、あの戦士様が白馬にのって私を迎えに来たらと思うと…♡」


「あんな素敵な殿方の隣を歩きたいワ♡」



ヘルマンは街の皆の視線を無視するようにして目的の場所へと急ぐ。

そこには彼の師であるジエラが待っているのだ。






「…娼館…だと?」



ヘルマンは看板に書かれた文字にしばし固まってしまった。

女性に興味のないヘルマンとはいえ、娼館が如何なる店なのかは知識として知っていた。

恐らくヘルマンの生涯において利用する事などあり得ない店である。


しかし、ナキナ伯爵アロルドの話によると、ジエラはここに滞在しているのだという。

ヘルマンにとってジエラは武の達人という認識だ。

こういう店には無縁のはず。



(聞き間違いか? もしかすると此処でジエラ様の居場所を聞け、との意味だったか? 仕方ない。利用しなくともカネを払えば冷やかしとは思われないと思うが…)



するとヘルマンが入店するや否や、艶かしい下着姿の娼婦達が彼を取り囲む!

だがヘルマンはエロ下着姿の美女にピクリともしない。



「すまん。君たちに用があって来たわけではないんだ。少々聞きたい事が…」



すると、ヘルマンの視線は店のロビーにいたとある娼婦(・・・・・)に目が釘付けになった。

ヘルマンに見つめられるとある娼婦(・・・・・)もヘルマンを凝視して硬直している。



そのとある娼婦(・・・・・)

源氏名をセフレ。

正体はヘルマンの師であるジエラであった。


しかし、ヘルマンはその娼婦の正体がジエラとは気づいていない。

娼婦は鎧姿ではなく、全身黒い薄衣姿の娘なのだ。

しかも顔の下半分をフェイスヴェールで隠しているため人相が分からない。

カラダの特徴はジエラに似ているが、ヘルマンの知るジエラは白金髪(ブラチナブロンド)で碧眼だが、目の前の女性は漆黒の濡羽髪で黒目なのである。


そしてヘルマンがセフレに注目した理由。

それは彼女が三日月刀(シミター)を帯びていたからであった。





(ど、どどどうしてヘルマンが此処にっ!?)



ヘルマンはボクをジッと見つめている。


昨日の夜(・・・・)に逢った時と変わらない、イケメンな瞳だ。

あの時は…、ううん、あの時も、いや、毎晩ヘルマンの腕の中で鳴かされて…、って違うよ!

アレは夢の中の話だっての!

ボクは『自らの漢気を逆境に置く事で鍛える』という修行をしている。

そのせいか毎晩ヘルマンと『鍛錬(・・)』する夢を見ちゃってるんだ。

ヘルマンってば、すっごく激しいけど…でも優しくて…テクニシャンだから、ボクの『漢気』は毎晩瀕死の重傷を…って違うってば!


ああもうっ。

ヘルマンを見ているとヘンな事ばかり思い出しちゃう!


でも。

何日かぶりに現実に逢ったヘルマンは、やっぱりカッコ良くて…。


ああ…♡

ボクが与えた鎧が似合ってる♡

やっぱりサマになっているなぁ♡


ヘルマンを見つめていると、お立ち台で踊るスレイプニル(スレイ)と、その取り巻きさんたちの喧騒が遠く聞こえる気がする。

ボクの周囲にいたお客さまたちが「セフレさん…誰を見てるんだ…?」「あの男誰だ?」「セフレさん知り合いか?」とか言っているけど気にならない。

そんな雑音なんて聞こえな…



「カラダも素敵っ♡ イイオトコじゃない♡」


「お兄さん。そんなに素敵なのにお相手がいないの? それとも隠れて? イケナイ人ね♡」


「うふふ。いいわ♡ 貴方ならすっごい割引しちゃう♡ 無料(タダ)でもいいわよ♡」



っって!

ボクのヘルマンに同僚さんたちが群がってる!

しかもグイグイとカラダを押し付けて、「私を買って♡」アピールがすごい事になっている!

ヘルマンを女の魔の手から守らなきゃ!



「そちらの殿方はボクのお客さまです。関係ない皆様はどうかご遠慮ください」


「「「ッッ!!?」」」



周囲が息を呑んだ気配。


ザワザワ

「姐さんのオトコ!?」

「セフレさんって子持ちなんでしょ? まさか、この良い男が旦那様なの? 寄りを戻そうと乗り込んで来たって事かしら?」

「…自分の女が娼婦に身をやつしているのを知って…。ああ、私の男もこれくらいの気概があれば…」


ザワザワ

「セフレさんの男だと!? くっ。若くてもすげぇ貫禄だ。…負けたぜ」

「あの男ならセフレさんが堕とされたってのも分かるな…」

「セフレさん、毎日充実した女の顔してるからな。…羨ましいが、あの男なら納得だぜ」



…なんだか騒ついている。

変な内容も聞こえるけど、でもそんな事はどうでもいいんだ。



「此処じゃ煩いですから、奥の部屋に行きましょう!」



ボクがヘルマンの腕を取ると、彼は「部屋に行く必要はない」とか言い始めた。



「貴女に興味があるんだ。俺と手合わせしてもらえないか?」


「え?」


「外が良いかな。街中では問題があるだろう。人気(ひとけ)のないところに移動できないか?」


「え? え?」



ふと、ヘルマンがボクの腰に注目しているのに気づいた。

ボクはアラビアーンな踊り子衣装。

しかも股間の前に垂れている薄布は…かなり…際どいから…普通に立っていても腰から太ももまで見えている仕様なんだ。お尻もそんなかんじ。


ま、まさかヘルマン。

ボクと…その…エッチなコトしたいんじゃ……。





スレイは踊り子で忙しい。

ベルフィは予約客のお金持ちの家に出張中。そこで森乙女(ドライアード)を大量召喚をしてくるらしい。

サギニはベルフィの護衛として彼女と一緒に行動しているから不在。

ボクはお店の用心棒だけど、…まぁ大丈夫だろう。ヘルマンを守るためだしね。


なのでボクが一人でヘルマンと歩いている。


ヘルマンは見事な白馬の手綱を引いている。

ボクは仕事着だったから、ヘルマンから「店の中ならともかく、外で肌を晒すのは抵抗あるだろう」とか言われて、途中のお店で彼に外套を買ってもらっちゃった。

やっぱりヘルマンは紳士だよね♡


だけど、なんだか街の人の視線が集まっている気がする。



ザワザワ

「あの戦士様、すげえ女連れてるぜ! やっぱりあれ程の男なら女も極上なんだろうな!」

「顔が薄布で隠れてるが…目元だけで良い女だって分かるぜ」

「確かあの女…娼館(ローレライ)の『一億の娼婦』じゃねぇか?」


「ナニよあの女!」

「あの凛々しい戦士様が商売女と! なんで私じゃダメなの!? きっと戦士様は騙されているんだわ!」

「ギギギ…ユルセナイ…!」



………。

周囲の人たちがボクたちを見ながら色々話している。

注意深く話を拾ってみると、どうやら皆さんはボクとヘルマンを恋人同士だって認識している?

良い機会だ。

ヘルマンの女避けとして行動しちゃうぞ!


ヘルマンの歩みを邪魔しないように、カラダを近づけながら歩く。

この姿では初対面(・・・)なんで、自分の事を娼館の用心棒だって自己紹介する。

ヘルマンもボクを邪険にすることはなかった。それに「武者修行中でこの街に寄った」って言ってくれたんで、ボクが目を離しているスキにエルくんの勧誘に乗らなかったって事だよね。もちろん信じてたけどね!


色々話をした。

ここ数日は軍の鍛錬場で兵士たちと切磋琢磨しているとか。

ドラゴンを斃すためにこの街に来たのに、領主の許可がおりないとか。

このすごい馬はグルファクシって言って、さっき謎のお爺さんにもらったとか。



「…そう言えば貴女は我が主人に似ている気がする」


「えッ!? ヘルマン様の主人様ですか?」


「うむ。髪と瞳の色を除けば…他人の空似とは思えんくらいだ」


「あ、あははッ。ボクが偉大な騎士様と似ているだなんて光栄ですけど、もちろん別人ですよ!」


「まぁ、別人だろうが…。うん? 何故俺の主人が騎士だと知っている?」


「あ、あははっ。詮索しないでくださいぃ」



っとまぁ、ちょっとヤバそうな事はあったけどなんとか乗り切った。


うふふ。

まるでデートしているみたいだ。

紳士的な雰囲気のヘルマンを良く観察して、将来男に戻った時の参考にさせてもらうよ!



「おいおい。あの女スゲェ幸せそうだぞ。目元しか分からねぇが輝いて見えるぜ」

「腕を組もうか迷ってるみてぇだな。初々しくて微笑ましいな」

「な、ナニよ! 見せつけてくれるわね!」



周囲にもボクとヘルマンの強力な主従関係を見せつけられたみたいだ。

ふふふ。これでヘルマンにチョッカイを出す女がいなくなるね!




ふと、歩く先に宿屋があるのに気づいた。

あわわっ。

そうだ、忘れてた!

大切なコトを聞いておかなくちゃ!



「あ、あのっ。さっきボクに興味があるって…。その…どういうことですか?」



も、もしかして、これから宿屋でエッチなコトをっ!?

ここでご休憩する気じゃあ…!?



⬜︎ ⬜︎ ⬜︎妄想⬜︎ ⬜︎ ⬜︎



宿屋の一室。

ボクとヘルマンはベッドに腰掛けている。



「…ねえヘルマン。ホントに断って良かったの? エルくんの士官話、結構良い条件だったんでしょう?」


「ジエラ様…」



ヘルマンはボクを真摯な瞳で見つめてくる。



「俺はジエラ様にお仕えしています。ジエラ様の為に最強を目指すのが俺の悲願なのです。平穏なナキア伯国などに関わっている場合ではありません」


「ヘルマン…」


「…もっとも、理由はそれだけではありませんが」


「え…?」



ボクはヘルマンを見つめる。

ヘルマンもボクを見つめてくる。



「ジエラ様…。俺は貴方様と離れたくないのです。我が身は戦場に。そして貴方様の傍らで…」


「…ぼ、ボクも…ヘルマンと離れたくない! ホントはエルくんに取られちゃうんじゃないかって!心配で!」


「ジエラ様…俺は貴方の剣です。常に…貴方のお側に…」





チュンチュン

翌朝。



「フヒヒ。昨晩はお楽しみでしたね」



ご、ご休憩のはずだったのに…なぁ♡

あ、同じか♡♡



⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎




あ、違う違う。

今はジエラじゃなくてセフレだから。




⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ 妄想し直し⬜︎ ⬜︎ ⬜︎



事後。


「……済まない。君が魅力的過ぎて…少し乱暴にしてしまったようだな」


「そんなコトないです。ボク、頑丈ですから。…なんならもっと激しくしてくれても♡」



ボクはヘルマンの腕枕で甘い余韻に浸っていた。



「………」

「………」



沈黙。


やがてヘルマンが口を開いた。



「セフレ…だったな」


「は、はい」


「…俺は師と共に武者修行の身の上なんだ。女っ気がない道中だからな。時折無性に女が欲しくなる」


「………」



ん?

女っ気がない?



「女を買おうと娼館に来たんだが、まさかお前のように素晴らしい女に出会えるとは思ってもみなかった」


「………」



ちょっと待って。

女がいないって、ジエラ(ボク)が側にいるじゃないか。

あ、いや、ここでヘルマンが言っているのは、エッチの対象の女ってこと!?



「俺はお前を側に置いておきたい。…俺について来てくれないか?」



え!?

そ、それって…どういう?

ま、まさかヘルマン、ボクに…惚れ…っ!?



「師にも話はつけておく。無論、お前が娼婦だとしても他の男に抱かせるつもりは毛頭ない。お前は俺の女だ」



…俺の女って言われても♡

でもダメだよ!

ヘルマンの師匠はジエラ(ボク)で、今はセフレとして活動しているだけなんだっ。

同行なんてしたらさすがに同一人物だってバレちゃう!



「…だ、ダメ」



ボクはヘルマンの腕から離れようとする…と。

彼はボクを捕まえて…。

真摯な顔で…。



「俺は真剣だ。決してお前を捨てたりしない」


「で、でも…でもぉッ」


「分からないか? なら分からせてやる」





チュンチュン

翌朝。


「…お客さん。他にも泊まっている客がいるんだ。もう少し声を抑えてくれませんかね?」



一晩中、分からされちゃった♡♡



⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎



分からされちゃった♡、はこの際置いておくとしても。


ヘルマンがボクに興味があるにせよないにせよ、重要な事実に気づいてしまった。

ヘルマンが娼館に来たってコトは、エッチの相手を探していたって事。

つ、つまり、ヘルマンは…人肌を求めて…遊びの女を探しに娼館に来たってことは間違いない。

そんでもってジエラ(ボク)という者がありながらセフレ(ボク)に浮気を…!

もし、ボクがいなかったら…他の女を!?



「み、見損なったよヘルマン!」


「ん? 突然どうしたんだ?」


「キミにはジエラ様という素晴らしい女性がいるんだ! それなのにどうしてボクを!!」


「? 俺は貴方にジエラ様の名を話したか?」



あ。

し、しまった!



「あ、あははー。何でもないです。気のせいだと思います。気にしないで下さい」



うう。

ヘルマンの浮気疑惑。

モヤモヤしながらヘルマンについていく。


ヘルマンってば何処に行く気なんだろ。

そこでボクにエッチな事するつもりなのかな。

この踊り子服は『黄金の腕輪(ドラウプニル)』製だから、いくら際どくても貞操帯になると思うけど…。



そんな事を考えているうちに宿屋が通り過ぎちゃった。





やがて。


海岸に着いた。

でも最近、夜に何者かが争っているみたいで、塩田が荒らされているらしい。

なんとなく雰囲気がピリピリしているんで、岩礁帯っていうか、更に人気(ひとけ)のないところに移動する。


そこはゴツゴツした黒い岩場ばかりのつまらない場所だった。

地面はある程度平たい所があるだけの殺風景な場所。



「…さて、ここでいいかな」


「ヘルマン様、どうしてこんなところに? 人がいない所なら海の近くじゃなくても……」



ヘルマンはフッと笑う。



「俺は師と共にドラゴンを退治をする為にこの街に来たんだ。塩田を荒らさない為にも、この辺りが戦場になると思ったんだ。その下見を兼ねてかな」


「そ、そうなんですか。ならどうしてボクを連れて?」



師と共に?

ま、まさかヘルマン、ボクの正体に気づいて…?

それとも、やっぱり海を見ながらエッチなコトを?

ボクは胸と股間を隠すように身を竦める。



⬜︎⬜︎⬜︎ 妄想 ⬜︎⬜︎⬜︎



ざざーん

波の音しか聞こえない。



「だ、ダメ…。こんな…海岸…お外でなんて…。誰かに見られでもしたらぁ…」


「誰も見ていない。いや、誰かいたとしても見せつければいいじゃないか」


「そ、そんな…ぁ♡」



ヘルマンはボクを大きめの岩に押しつける。

そしてそのまま片足を抱え上げられて…



「あ…っ♡」



⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎



「…ヘルマン様、ボクは、その…、あの…、見ないで…見ないで下さい…っ!」



は、恥ずかしいよぉ。

顔を見られたくないんで、岩にもたれるようにしてヘルマンに背を向ける。



「せ、せめて…後ろから…♡」


「? 岩肌に手を付いてどうしたんだ? 」


「…え? ひうッ!!?」



しまった!

妄想が現実にまで!



「あ、あははっ。ストレッチですよ! 何でもないです。気にしないで下さい! やだなー!」

ドゴッ ドシッ ズシッ


もたれかかっていた岩を叩きながら言い訳する。

照れ隠しに軽く叩いたつもりだったけど、岩肌にヒビが入って表面が剥がれたっぽい。



すると。


ズズズ…

「え?」



なんか揺れてる。

地震?

いや違うっぽいぞ。


動いているのは黒い岩だけじゃない。

地面も揺れている。いや、盛り上がっている。



「え? え? え? ぅおっと!」

ズゴゴゴ……


地面が一律じゃなく不規則に動いているんで、動きが少ないところに跳んで移動する。

でもそこも動き出す。

動いていないところに移動していたら、最初の場所からずいぶん離れちゃった。

ヘルマンもボクの後をついてくる。



「こ、これは一体!?」



ヘルマンも驚いている。



唐突に悲鳴が聞こえた。



「うわぁぁーーーッ!?」



かなり離れたところに見覚えのある少年が立ち竦んでいる。

誰だったっけ?


あ、思い出した。


以前、グスタフ様、ジェローム様と一緒にいた気持ち悪…じゃなかった、何を考えているか分からない男の子だ。


確か彼もお偉いさんのお子様のはず。

名前はなんて言ったかな?

思い出せない。


そして。



「GAAAAAAAAA…!」



「ええ…」



動く地面と岩。

黒いモノの正体。

…それは巨大生物だったんだ!

黒い岩かと思ったら、どうやら黒い鱗って事か。

つまりボクたちはさっきまでこの巨大生物の背にいたっぽい。

巨大生物はしばらく海岸の浅いところに寝転がっていて、その上から砂が積もっていたんだ。



第一印象は。



「か、カッコ悪…」



どう見てもオオサンショウウオが巨大化した姿。

あの巨大な口の中は牙が生えそろっているから、見方によっては怖いかも知れないけど、そのずんぐりむっくりした姿は鈍重そうで、全然脅威に感じない。

それどころか、この巨大生物はせっかく海岸でお休みしていたのに、ボクの照れ隠しの平手打ちで起こしっちゃったっぽいんで、かえって申し訳ない気持ちにもなる。

大声で吠えまくっているんだから、突然起こされて不機嫌なのかも知れない。


すると側にいたヘルマンが声をかけてきた。



「セフレとかいったな」


「は、はい」


「ここは俺が引き受けた。貴女はあちらにいる少年を連れて離れて…いや、逃げろ!」



え?

もしかしてヘルマン、このオオサンショウウオモドキを退治する気?

ちょっと可哀想な気がするんだけど。


動くかどうか迷っていると、ヘルマンが再び吠える。



「ヤツが動き出したぞ!」



動き出したぞ…って言われても。

オオサンショウウオモドキは…なんか、動くのも大変そうで、足を引き摺っているみたいだ。



「お前たち(・・)は俺が守る! お前がいると全力で戦えない! 早く行け!」



え♡

お前(ジエラ)は俺が守る…だってぇっ♡!

こんな事言うと…ヘルマンは悲壮ぶっているから不謹慎かもだけど。


う、嬉しいっ♡♡


そうだ。

彼がボクのために戦ってくれるんだ!

此処はヘルマンの言葉に素直に従わなくちゃね♡



「は、はい! ヘルマン様、ご武運を!」



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