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準備

よろしくお願いします。

よーし!


真の男になるための鍛錬の集大成だ!


異世界で最後まで戦って、力及ばず戦死しちゃうぞ!



…死んじゃうのはちょっと怖いけど…まあ二回目(?)だしね。

最初は痛くなかったから…何とかなるだろう。


でも戦うとはいっても、やっぱり悪い国の味方して戦ったりしたらダメだよね。


誰もがボクの事を英雄として讃えてくれるように、勧善懲悪っぽく戦うぞ!







だけど、その前に…。

げ、現状を確認しなくちゃ。


「頑張って戦死すれば何の問題もないよっ」


…ってワケにはいかないコトもあるわけで…。







ボクは館のとある一室を借りて、姿見で全身を映し出していた。



「……すご」



容姿は…元の顔をベースにしているけど、完全に女性そのもの。

こうしてみると、今までは所詮女顔・・だったなってつくづく思い知らされる。

顔を構成する全ての要素がとてつもなく整っているんだ。


元の面影を残しているという意味では…。


うーん…。


今のボクにどれ位の女性的魅力があるかは、…自分の事だからかな。今ひとつ客観的には判断がつかない。


凛々しいか可愛らしいかでは、凛々しい要素が強い印象だ。

それでいて身体の方は…。





……。




多感な青少年には刺激的過ぎるけど、そ、その内慣れるさっ。

慣れるしかないっ。



ま、まぁ、それはそれとして…。

やっぱりボクって…魅力的…かなぁ。



「ボク…。異世界で男の人に迫られちゃったらどうしよう…。正当防衛って異世界でも通用するのかな…?」



ボクの男気に気付かない鈍感な男性に迫られちゃったり…。




□ 妄想 □



「何てイイ女なんだ! 付き合ってくれ!」


「こ、困りますっ」


「ふっ。不細工面は引っ込んでなっ。彼女は俺のモノだ!」


「ああっ」


「ええい! 下がれ庶民っ。彼女は貴族である私こそが相応しいのだっ」


「もうっ。なんなんですかっ」


「…貴方の美しさは城下まで鳴り響いています。是非に王太子の側室にと陛下がお望みです」


「ひええっ。こ、断ったら…どうなっちゃうのっ!?」



異世界に行ったみたはいいものの、ボクは連日のように街中の男共…貴族さん、王族も含めて求愛されてしまっていて、戦争に参加どころじゃない。



「ボク、け、結婚してるんですっ。子供(バルドル)だっているし…」


「ははっ。すぐにウソだと解るウソはいけないなっ。そのカラダで子供を産んでいるワケないだろうっ」



ボクの衣装は露出が高いから、外見でカラダのラインが丸わかりなんだ。

だから分かる人が見れば分かっちゃうみたい。

おかげでボクはフリー扱いで求愛されまくっているんだ。



だけど、本当に困るってるのは男問題じゃない。




「んまっ。ナニよあの女! 街中の男に色目使ってっ。キーーーッ。ユルセナイ!」


「ウチのヤドロクったら、あの女に夢中なのよ! ったく、この泥棒猫!」



ああっ。

いつの間にか街中の女の人を敵に回しちゃってるよぉっ!?


ボクのせいじゃないのにーーーッ!!??




□ □ □




…みたいに、追いかけまわされちゃったり…。



……ま、まさかねっ。

まさかそんなことにはならないと思うな。

ちょっと自意識過剰だったかもっ。



でも…。




□ 妄想 □




ボクが街を散策していると、唐突に衛兵さんたちから声を掛けられた。



「…きみ。ちょっといいかね?」


「え? ボクにナニか御用ですか?」


「どうもこうもない。キミがそんな恰好で出歩いているから…特に街のご婦人方からクレームが凄いんだ」


「…え? え? 良くわかんないんですけど…?」



ボクは全然身に覚えはない。

すると業を煮やした衛兵さんが呆れたように大声で言ってきた。



「君は自分の恰好を何とも思わないのかねっ!?」

「胸も尻も放り出しておいて! 街中の男を誘惑するつもりなのかっ!」

「ご婦人方から子供の教育上よろしくないと、キミは歩くワイセツ物だと言われているんだぞ!」



ぶっ?

ナニそれ?

誤解だよ!

…いやだなぁ。ボクの恰好が理解できないなんて。

田舎者は時代の最先端が理解できないみたいだ。



「あはっ。ボクのこの鎧はですね、ビキニアーマーと言って…」


「能書きはいい。ちょっと詰所まで来てもらおうか!」


「そんなっ。ボクは…騎士に…」


「そんな露出狂のナリして騎士のわけあるかっ! 兎に角アンタに街中で脱がれるのは困るんだ。…そんなに脱ぎたかったら場末の酒場でも紹介してやるよ!」



ボクは衛兵さんに連行されてしまった。

衛兵さんはさりげなくボクのお尻やおっぱいを触りまくっている。



「そ、そんなぁーーっ! ボク、英雄にならないといけないのにぃッ!!?」


「このチチやケツなら確かに英雄だな! どんな豪傑だろうが何人でも相手できそうだぜ!」


「おほっ。なんならこの露出狂姉ちゃんに娼館を紹介してやるか! そのまま俺たちが客になってやるよ!!」


「いやぁーーーッ!!??  おかぁーさーんー…!!」




□ □ □




…みたいな目に遭っちゃうかも…。


ううっ。

ボクが美人かどうかは置いておいて、このビキニは早急に改善しなくちゃ。




ふと鏡越しというか肩越しにチラリと後ろを見ると、いつの間にかフレイヤ達4人の女神とトールさんがボクの様子を見ていた。



「…転生エイワズ術式では対象の想いが多少影響されるとはいっても…ここまでの容姿は偶然かしら…? …あっ。もしかして「顔も身体もゲルズを凌ぐ美女」だって私が言い切ったから…? ど、どうしよう…」



ううっ。

するとボクの“理想”とフレイヤの術の相乗効果で…?



「…でも、こうして改めて見ると…すごいわね。正式な戦乙女ヴァルキュリーの鎧姿が映えそう…。今後こんなにも綺麗なヴァルキュリーは現れないかもしれない…。いっそ男に戻さないで、私の副官ヴァルキュリーとして侍らすのも…。……いやいや、ナニ考えてるの私! しっかりしなさい! 気の迷いよ! 子供バルドルには父親が必要なのよっ!」



フレイヤっ!? その気の迷いはカンベンしてっ!



「いつまで紐だか布だかなんだか分からない格好しているのかしら…。そんなに張りと艶のある瑞々しい肌を晒して…。私への当てつけのつもり…? 羨ましい…妬ましい…ブツブツ。…はっ!? これでまたイイい男が後発の若い連中オンナのモノに…! どうしてっ!? 私、こんなにも頑張っているに! どうしてこうなるのっ!?」」



ううっ。フッラさん、ボク、オトコですから男漁りなんかしませんよ…。



「それにしても、さすが奥様の魔術セイズです。転生前でも女性にしか見えませんでしたけど、今では……物凄いですね。私、女神ですけど女として自信なくしちゃいそうです」



女神が即席女ボクで自信なくさないでよっ。



「…いま『子宝のリンゴ』を食べたら…どっちが赤ちゃん産むの?」



…グナーさん、怖いこと言わないでよぅ…。



女神様たちはめいめい好き勝手なこと言っている。


だけど、脳天気に笑っているオカマトールさんが無責任すぎてイラッとする。

こうなったのもトールさんのせいなのに、自分の行動を忘れてしまっているのかもしれない。



「ぼほほっ。気に入っていただけたかしらぁ? この『黄金の腕輪ドラウプニル』から産みだす鎧の防御力は見た目とは裏腹に並みの鎧よりも相当に強力よ。最強たる『スヴェルの盾』にも見劣りしない防御力を誇ってるわ。うぶぶふっ。お義母様のヴァルキュリーなんだから、これくらいの装備は必要よね♡ …他にまだ必要なものはあるかしらぁ~?」



何言ってるんだこの怪物オカマは?

そもそもこの鎧(?)はおっぱいの一部と股間の小さな部分しか防御してないじゃないか!

おっぱいや股間を防御する鎧って何の意味があるんだよっ!?

露出も含めて問題だらけじゃないかっ!



悪態をつきたくなるけれど、辛うじて気を取り直す。

せっかくプレゼントをくれるっていうんだから、怒鳴ったりして機嫌を損ねちゃダメだ。



「あ、あの…トール…様?」


「お義母様のイイ人なのに他人行儀ねぇん。トールお姉さまってよんで♡」


「…トールさん。この水着…じゃなくって鎧って、色々なデザインがあるんですよね? なら違うデザインも出せますか?」


「もうっ。お姉さまでイイって言っているのに照れちゃってるのね? …まあいいわ。デザインについてはもちろんよ。無限にあるもの。きっとお気に入りのデザインに出会えるわよ」



よかった。

こんなハレンチな恰好じゃ異世界で戦争どころじゃないよ。




あと必要なモノ…必要なモノ…?


そうだ。



「これから異世界に行くんですが、髪の色や肌の色で周囲から浮いちゃうと拙いです。髪や肌の色を変えるアイテムは無いですか?」


現在のボクの髪は生前とは異なり、白金髪プラチナブロンドをしている。

肌の色も今までより白い。

戦乙女になっちゃったせいかもしれない。

戦乙女って西洋人っぽいしね。


……そう言えばお母さんもこんな色の髪をしていたっけ。

なんだか嬉しくなった。


つまり髪の色と瞳の色もフレイヤとお揃いの白金髪ブラチナブロンド海碧コバルトブルー色。

生前とは丸っきり違うけど、転生したからかな。不思議と違和感がない。



異世界での普通な髪の色は金髪や、銀髪、黒髪、白髪…可能性は色々あるけれど、まさかアニメみたいに赤や青、黄色、ピンク色の髪が一般的だったらどうしよう。

肌は…せいぜい白色系、黄色系、褐色系くらいだろうな。


だけどこの金髪碧眼や肌の色が目立っちゃったりしたら困るし。


ボクの提案を受けて、トールさんが思案している。



「…ふぅん…。そうねえ…。髪なら以前私の妻がしていたカツラがあるけど、あれは金髪限定だから…。お肌に関しては聞いたことないわ…。なら小人ドヴェルク達に新しいアイテムを相談してみましょう。彼らの工房なら大抵のアイテムは自在に創れるわ。髪や肌の色を何とかするアイテムくらい大丈夫よ」



トールさんは「善は急げ」とばかりに、ボクを自前の荷馬車…二頭のヤギが牽いているから山羊車(?)にのせて小人ドヴェルクさんたちの許へ連れて行ってくれるという。



「ならば私たちも武器を中心に出立の準備をしています」



ボクが小人さんの所に行っている間に、フッラさんたちはボクの武具を用意してくれるらしい。

そっちは彼女たちにお任せしていいかな。





トールさんの山羊車に揺られながら肝心な事を相談してみた。


「あのー…。この三角ビキニ…。違う仕様デザインに変更できますか? 流石に人前は恥ずかしいって言うか…。は、外れちゃいそうだし…」



ガタゴト揺れるので、振動でおっぱいが水着から零れ落ちちゃいそうで不安でしょうがない。



「大丈夫よぉ。小さくてもれっきとした鎧だから、貴女ジエラ自分の意志・・・・・で外そうとしない限りその位置は固定されていわ。それに違うデザインを選びたかったら、さっき私がやったように『守護アルジス』と唱えてみるといいわよ」



ちなみに転生したことで新たな名が決まったのだ。

転生術を行ったフレイヤが名付け親となって、ヴァルキュリーとしてのボクは『ジエラ』と名乗ることになった。どうやら『成功する』とか『努力が実を結ぶ』という意味らしい。


ちなみにトールさんは「貴女は、おとなしい性格が災いをもたらしてきたようね…。『激情オーズ』を名乗りなさいな」と言ってくれた。

でもオーズって名前は響き的に男性っぽいんで、女性でいるうちは『ジエラ』名乗ることにした。『オーズ』は男に戻った時の為にありがたく保留させてもらうことにする。




それと腕輪ドラウプニルと水着鎧について教えてもらった。

トールさんの説明によると、この腕輪ドラウプニルが産みだした水着(?)鎧は腕輪ドラウプニルの効果で鎧となっているようだ。

腕輪の着装者が身に付けている時は鎧だけど、脱いでしまうと相応の材質…この場合は単なる布になってしまうらしい。

そういう意味で元の持ち主・・・・・がもう一度身に付ければ再び鎧となるけれど、他人がボクに無断で奪ってしまった場合は完全に布地になってしまうのだとか。


あと、ボクが自分で着用する場合は当然として、加えてボクの意志で・・・・・・他人に鎧を譲渡したら、その場合はちゃんと鎧として機能するという。


でも、プレゼント可能とはいっても、こんなエロい鎧なんか誰も着たがらないよね。

露出狂じゃあるまいし。



「この腕輪ドラウプニルは、それこそたくさんのデザインの鎧を産みだせるんですよね? 自分で選択とかは出来ないんですか?」


「そうねぇ。ある程度は可能かしら。「こんな感じの鎧が欲しい」って願いつつ守護アルジスと唱えるといいわ。でも基本的に私の為の鎧だからどれも筋肉が映えるようにしてもらっているし、それに創ったのは悪戯イタズラ好きのロキっていう神だから、イメージ通りの鎧が出るかは保証できないわよぉ?」


実は他にも色々機能があるみたいだけど、製作者ロキの話を聞いていなかったみたい。



つまり…どれもこれも露出が高くて、悪ふざけ的な鎧が出てきちゃう仕様か…。


それでも今のマイクロな三角ビキニ鎧よりはマシになるだろう。



「うーんと…、じゃあ全身鎧型フルアーマータイプのをお願いします。守護アルジス





現れた鎧は…黒を基調としたワンピースタイプの水着…いや、競泳水着(鎧)だった。



また水着なの!?

しかもボクのお尻がおっきいせいなのか、布地が薄いせいなのか、あるいは水着がワンサイズ小さいのか、布地がお尻の割れ目に結構食い込んじゃってるから…お尻がムズムズする。

しかも前面に縦方向にスリットが入っているから胸の谷間が丸見え…。

で、でもさすが全身鎧だ。マイクロ三角ビキニに比べると随分マシになったぞ。



「…あの…トールさん。こんなデザインの鎧しか無いんですか?」



運転中のトールさんは、ボクの事をチラリと横目で見ながら「見たことないデザインだけど、なかなか素敵じゃない」と呟いた。



「…さっきの紐みたいな衣装もそうだけど、やっぱりこの腕輪ドラウプニルは肉体の美をアピールする仕様になっているようね。ぼほっ♡」



うう。

やっぱり元はトールさん用だから…。

女性(?)ボディビルダーの大会仕様で、さらに悪戯好きなロキとかいう神さまの作品だから…。


やっぱり異世界でも苦労しそうだ。



だけど、こんなエッチな競泳水着(鎧)でも、さっきまでのビキニよりはマシかと思うんで、このまま小人ドヴェルクさんの処に訪問する事にする。




「…あら、そろそろ到着するわよ。小人たちがどんな代価を要求してくるか分からないけど、アイテムの価値に比べると大したことないから安心なさいな」



もうすぐ目的地らしい。

そうだ。今の問題は小人さんとの対応だ。


これから逢う人は小人っていうくらいだからかなり身長は低いだろう。下からお尻を見上げられたら堪ったモンじゃないと、お尻の肉に埋まった布地を元に戻そうと無駄なあがきをしながら考える。


代価か…。

ボク、この世界のおカネとか持ってないし…。

ナニを要求されるんだろう…?


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