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妖精たちの性癖

よろしくお願いします。

◇◇◇◇◇




翌朝…早朝。



「…ううん」


朝の光に天幕ツェルト内が明るく照らし出されると、自然に目が覚める。


だけど、瞼を開かない。


最初は中々寝付けなかったけど、今は物凄く寝心地が良いんだ。


顔や体が柔らかくて暖かいモノに包み込まれている。


何時までもこうしていたい…幸せな気分。



身を揺するように、頭をぐりぐりする。




「…起きたか?」


「…ッ!?」



慌てて目を開けると、そこには濃い銀髪の美女…スレイプニル。



「ご、ゴメンなさいっ」



慌ててスレイプニルから跳ね起きる。



「…ふん。謝ることはない。お主の重みは心地よかったからな。…馬の身でも人の身でもお主に乗られるのは心地いいらしい」



美女スレイプニルは二ヤリと笑いながらむくりと上半身を起こすと、「うう~~ん」と伸びをした。

すると、スリングショット…『力の帯メギンギョルズ』ごしにおっぱいがユサリと揺れる。



す、すごい…なぁ。

人型のスレイプニルはボクより身長が高いから、おっぱいもそれ相応に大きいみたいだ。

ボクのおっぱいもかなり大きいけど、スレイプニルのとは迫力が違う気がする。


そしてスレイプニルは四つん這いになって、天幕の入り口から顔を出す。



「…おお。今日も良い天気だ。…朝の空気が心地よさそうだぞ」


「待って! そんな恰好で外をうろついたりしたら!」



あわわっ。

パトロンでもあるエルくんの情操教育上よろしくないよ!


だけど再びの変身の光が彼女(スレイプニル)を包み込んだ。

するとスレイプニルが外に出ると同時に、そこには元の巨馬…スレイプニルの姿があった。

何故か紐水着スリングショットだった『力の帯メギンギョルズ』も元通りに首に巻かれている。



(ふん。やはり我はこの姿の方が落ち着く。…そう言えばなにか言いかけたか?)



巨馬(スレイプニル)は灰銀の尻尾をブルンブルン振るっている。



「…ううん。大丈夫。あんまり驚かせないでね」





スレイプニルの言う通り今日も良い天気だ。




するとサギニも目覚めたようだ。

天幕から彼女が現れた。



「ジエラ様、おはようございます」


「おはよう」



ふと思い出す。

サギニの格好は覆面&マイクロなビキニ。そして全身鎖帷子(網タイツ)なお色気クノイチだ。

彼女たち妖精(アールヴ)は裸族だし、ボクも何故か(・・・)気にならない。ヘルマンも紳士だから気にならないみたい。

だけどエルくんは赤面してたし、山賊なんか「ドスケベ」「痴女」など言いたい放題だったらしい。


そして問題はサギニの反応だ。

彼女によると、彼女に卑猥な反応を見せる男を殺したくなっちゃうらしい。

そうなると…今から行くナキアとかいう港町で大量殺戮が始まっちゃうかもしれないんだ。



「ね、ねぇ。サギニ。これから港町に行くんだけどさ、君の格好は目立ちすぎるんだ。だから…着替えない?」



サギニはキョトンとしている。



「この衣装は黒妖精(デックアール)の精神を体現したかのような戦闘服ですが?」


「だ、だから…。その…。ちょっと露出の問題が…ね。人間には刺激的っていうか…」



するとサギニはちょっと考えた後、ボクに反論してきた。



「ジエラ様こそ、私とあまり変わりないかと。ジエラ様も着替えられるのですか?」


「え? ぼ、ボク?」



ボクの鎧姿はパツパツの肩出し(オフショルダー)なタンクトップとデニムなホットパンツスタイル。

ホットパンツは結構際どくて、お尻のはみ出し具合が結構すごいことになっている。

しかも裾が短くておへそが見えている。

それと麦わら帽子()

こんなの地球世界の夏の西洋の港町なら…よく見かけると思うんだけど。


確かに開放的だなぁとは思うけど、これも試練の一環なんだ。

それは『女性っぽい格好をして、男気を逆境において鍛える』っていう師匠の鍛錬方法。

こんな格好をしていても「なんて凛々しいんだ」「色気など微塵も感じないぞ」って思われるくらい男気を溢れさせれば問題ないんだ。

だけどサギニはボクの男気に気づいてくれないみたい。



「私は全身に鎖帷子ですが、ジエラ様は乳房と腰回りだけを隠して素肌ですよね。どちらかというとジエラ様の方が露出過多なのでは?」


「え、えーっと?」



そうかなぁ。

ボクの格好は普段着だけど、サギニはお色気過ぎると思うんだけど。

でもコスプレ感っていうか、そういう日常では見られない衣装を着ているっていう視覚効果もあって露出っぽく見えるだけかも知れない。



「…考えすぎかなぁ。でもね、街ではキミのことを色々変な目で見る人もいるかも知れないけど、傷つけたり殺しちゃダメだよ。ニンジャなんだから、『刃の下に心あり』ってね」


「な、なんですかそれは。格好いい言葉ですね?」


「うんとね。生命の危機にあっても冷静にっていう意味なんだ。だから男共にヘンな目で見られたりしても冷静でいられることが真のニンジャなんだよ」


「…分かりました。刃の下に心あり。また一つニンジャに近づきました」



分かってくれたみたいだ。




そんな事をしていると天幕から人影が出てきた。

ベルフィも起きたのかな。



「お、おはよう…べる…ふぃぃぃッッ!?」



天幕から出てきたベルフィは鼻血塗れ!

しかも目が潤みまくって、まさに虹彩がハート型っていうか、ゾンビみたいにフラフラしている!



「お姉さま…♡ お姉さま…♡」



ベルフィはおぼつかない足取りでボクの方に近づいてくる。



「…うふふ♡お姉さま♡ さ、()の続きと参りましょう?」


「ちょっ!?…まって! 落ち着いて!」



ベルフィはエッチな夢を見ていたみたいだ!?



「はぁはぁ♡ 既にこの身はお姉さましか愛せないカラダにされてしまいました。そう、ベルフィはお姉さま以外にお嫁にいけないカラダにされてしまったのです♡」


「ナニ言ってんのっ!?」


「はぁはぁ♡ お姉さま、私のカラダをお姉さまなしには生きられなくしてしまった責任を…♡ 今度はお姉さまのカラダでェェッ♡♡」


「それは夢の中の話でしょっ!?」



なんなんだよ朝っぱらからっ!?

エロニンジャのサギニといい、エロいスキンシップなベルフィといい、この妖精たちはボクを堕落させるための悪魔の使いかナニかなのっ!?



「さ、サギニっ。ベルフィを止めるんだ!」


「は、はいっ」



さすがのサギニもベルフィの痴態に驚いている。

でも。



「し、しかし、力づくとなるとか弱き身であらせられる白妖精リョースアールヴの御身を傷つけてしまいますっ。それに魔法戦では全く歯が立ちませんっ」



ううっ。

役に立たないっ!?



「…さあ、お姉さま、大人しくなさって? ベルフィのお姉さまへの想いを受け入れて下さいませぇぇッ♡」



しゅりゅんっ



「ッッ!!?」



どこからともなく伸びてきた蔓草に手足が搦め捕られちゃった!?

両手両足を大の字にされたまま完全に拘束されて、べルフィの魔の手からこれ以上逃れられないっ!?



「ふひゅっ♡ ふひ♡ さ、子作りと参りますよ…♡ ぐひひ♡」



べルフィは身動きできないボクに近づいてくる。

手をワキワキさせて、あちこち揉みまくる気満々だ。



「…だ、ダメっ!? こういうことはフレイヤ様がお怒りに……あ…いやあぁぁぁッッ!? …おかぁーーさぁーーん…ッッ!!?」



すると、ボクの貞操の危機に、色恋とは無縁の頼れる相棒が現れた!



(…このすがすがしい朝からナニを騒々しい…? むっ!? 妖精よ。お主、魔物に憑りつかれでもしたか! ならば是非も無し。蹴り殺してくれる!)


「スレイプニル! 蹴り殺さなくていいからベルフィを止めるんだ! 組み伏せるでもなんでもして!」


(うむ、そうか。…ならば!)



そしてスレイプニルは再びヒト型…紐水着スリングショット美女に変化する。



「大人しくしろ。今すぐジエラから離れんとこうしてくれるぞ!」



バギャッ!

バキバキバキッッ!


美女スレイプニルの何気ない一蹴りで巨木がなぎ倒された!

紐水着スリングショットになっている『力の帯メギンギョルズ』の効果かもしれない。

ヒト型になっても蹴り殺す気満々みたいだ。


でもベルフィは目の前で行われた自然破壊に驚いた風でもなく、今度はスレイプニルの方を向いたまま硬直してしている。



「…………」


「な、なんだ? 妖精よ?」



するとボクに近づいてこようとしていたベルフィが、今度はスレイプニルの方にふらふらと歩み寄っていく。



「はぁはぁ♡ なんて素敵な衣装♡ それになんて立派な豊満で美しい乳房にお尻なの♡ 森の豊穣を司る妖精(わたし)の琴線を震わせまくるなんて…♡!」



ッ!!?

ベルフィは「ジエラお姉さま好き好き♡ 子作りはぁはぁ♡」とか言っておきながら、突如現れた紐水着なダイナマイトボディ美女スレイプニルに吸い寄せられていく。


自分の貞操の危機が去って喜ばしいんだけど、ボクよりスレイプニルに見惚れたベルフィに信じられない思いだった。



「べ、ベルフィッ! き、キミはボン、キュッ、ボンなら誰でもいいのっ!?」


「はぁはぁ♡ おっぱい…♡ お姉さまのおムネ…♡ お尻…♡ ヒモだけ…♡ ああ、お姉さま、ベルフィの想いを受け入れて…そんな素晴らしい恰好でベルフィと…♡」


「な、なんだこの妖精は! 気色悪い…!!」



ベルフィがスレイプニルにまとわりついていると、今度はサギニが身動きできないボクに近づいてくる。



「じ、実は…、昨夜、ジエラ様への愛に気づいてしまったのです♡ ジエラ様は美しく、お強く、そして黒妖精へご理解も素晴らしい御方。今までベルフィお嬢さまに遠慮しておりましたが、ベルフィ様があちらの女性に夢中であるならば、どうか私にもお情けを…♡」


「ちょっ!? 落ち着いてサギニ! ベルフィもじきに正気に戻るからぁッ!」



ううっ。

ボクたちは朝っぱらから、いったいナニをやってるんだ?



それにこんなところをヘルマンやエルくんに見られでもしたら…!




◇◇◇◇◇



その頃。

早朝の鍛錬を終えたヘルマンは、エルと共にあった。



「エル…」


「ヘルマンさぁんっ♡♡」



ヘルマンたちはジエラたちの騒動には全く気づかず、再び馬車の中で仲良くなっていた。



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