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助けた美少年

よろしくお願いします。


まだ辺りは明るいけれど、弱ってる美少年くんが居るので今日の移動はここまでにしよう。



ボクは幕営としてアースガルズから持ってきた簡易天幕ツェルトを張る。


場所は森の境。


用意してくれたフッラさんによると、この天幕は防水、撥水、断熱性、透湿性に優れていて、どんな天候でも快適な居住性を約束してくれるんだって。

やっぱり神さまの用意してくれた道具はすごいなぁ。

あそこは戦士達が多いから、こういった野営の道具も発達しているんだね。



それと野営の準備をするのと同時に、横倒しになった馬車を戻したり、山賊に殺されちゃった人たちを見晴らしの良いところに運んで埋葬しておいた。

死体だけど、いちおう遺品になるかと思って剣と鎧は脱がせてから埋葬している。剣とかは墓標変わりに立ててあるけど、後で回収されるかもしれない。





助けた美少年くんだけど、最初ボクが膝枕してあげようと思ったら、ベルフィが「そこは私の特等席です!」と大人気(おとなげ)なく滑り込んできたんで、ヘルマンが自前で持ってきた毛布の上に寝かされている。



昼間のことを思い返しているのか、ヘンマンが若干落ち込んでいるようだった。



「…俺たちがもう少し早く山賊を斃していれば……。ジエラ様、様子見などしなければ…良かったのではないでしょうか?」



…ヘルマンは偶々山賊がステレオタイプに凶悪な連中だっかたらそう思ってしまうんだろう。

だけど、そうじゃなかった場合は…?



「じゃあ聞くけど、馬車を襲っている連中を倒そうとした時、連中が「俺の子はコイツらのせいで飢えて死んだ! 可愛い盛りの男の子だったのに!」とか叫んだとしらどうするの?」


「ぐッ!? そ、その場合は…止めるよう説得します」


「彼らの家には事情を知らない子供がお腹をすかせて待っているのかもしれないよ? そしてもし馬車の一行が悪人だった場合、また何処かで泣く子供が増えるかもしれないよ? …ホラ、結果的にキミは悪人の手助けをしてしまった」


「………ううっ」



ヘルマンは俯き、押し黙ってしまう。

話を引き継いだのはサギニだ。



「ヘルマン。人助けについてですが、私はお嬢様とジエラ様にお仕えする戦士です。主人と我が矜持(プライド)のために戦います。仲間でもない者を助けるなど、主人に命ぜられでもしない限り考慮すらしません」


「サギニ殿…」


「関係ない他人を助けている間に主人に危機が迫ったらと思うとゾッとしますね。私たちにとって仲間の安全が第一なのですから、ジエラ様が状況を把握しようとするのは当然ではないですか?」



サギニは妖精アールヴの戦士だけあってクールだ。

そしてボクの膝枕で寝ているベルフィは、興味がないのか会話に参加していない。



「す、すごいですお姉さま♡ ここからだとお姉さまのお乳だけしか見えません♡ 絶景ですぅ♡」



参加しないのは良いとしても、ボクの下乳をツンツン突いて遊ぶのはやめて欲しい。



「……ジエラ様、サギニ殿のお話は分かります。…だが…俺は…」


「ヘルマン、人助けは確かに尊い行為さ。ボクはそれを否定しない。今回は助けるのが遅れて…この子しか助けられなかったのは残念だったけど、次はそれが裏目に出てしまうことがあるかもしれない」


「…はい」


「じゃあどうするか? …これは師匠の受け売りだけど、人助けに限らず、自分に出来る事は自分の信念に従って行動すべきなんだ。一番大切なのは自分の信念。それを見誤らないことだよ?」


「………自分の、信念……」


「うん。例えば…そうだね、キミは子供好きでしょ。子供が襲われていたら例え子供が自分の敵方だとしても先ずは子供を助ける。それはキミに向かって子供が剣を持って襲いかかってきたとしてもだ。それから子供を諭す…とかさ」



ボクがそういうとヘルマンはガバッとボクを見つめてきた。



「こう考えてみれば良いんじゃないかな。…戦うときは状況を良く確認してから行動する。でも子供は別。子供は理屈抜きで助ける。そして子供を助けるという信念に基づいて戦った結果、例え自分の命が危うくなっても悔いなく死を受け入れる…ってね。それはとてもカッコいいことなんじゃないかな?」


「…子供を。何があっても子供は助ける…!」



ヘルマンはボクに力強く頷きかけて、思い出したように慌てた。



「し、しかし、俺が子供を助けたいと勝手に行動してしまっては…。ジエラ様方にご迷惑がかかる可能性もあります…!」



ボクとサギニは笑う。



「それくらい大丈夫だよ。ヘルマンは子供好きなんだから、そういうふうに行動するだろうなーって考えてれば。…ボクたちは主従かもしれないけれど、それ以前に仲間じゃないか。仲間の大切な信念くらい理解できないでナニが仲間なの?」


「そうです! 妖精アールヴと人間種、種は違えど子が大切なのは同じこと。私は貴方が紳士的のみならず、子孫を大切にする人間と知り嬉しく思います」


「ジエラ様…。サギニ殿…」


「それに昼間死んじゃった人たちなら大丈夫。勇敢に山賊と戦ったのなら、ちゃんと天国に逝けたさ。だからヘルマン、ボクたちもどんな過酷な戦場でも勇敢に戦って逝こうね!」


「…はい!」



そして相変わらずベルフィは我関せずだ。



「お姉さまぁ、ほら、ほらぁッ♡ あはっ、重ーい♡♡」



ボクのおっぱいをゆっさゆっさとトス(・・)して遊んでいる。



もうっ! 真面目な話をしてるんだから大人しくしててよっ。






ボクはぐったりと眠る美少年くんを見た。

年は10代前半くらいかな。


打撲の他には目立った外傷はないけれど、何度か殴られたのと環境の変化、ストレス等が重なったせいか、体調を崩したのかもしれない。若干の熱がある。ちなみに打撲の跡にはヘルマン謹製の薬草による治療済みで、少なくとも後遺症が残るようなケガはないようなのは不幸中の幸いだね。


ちなみに彼は先程のセダ村の子供たちとは比較にならないくらい整った顔立ちをしていた。

身なりも裕福そうだから、どこかのおカネもちの御曹司っぽく見える。


この子は身代金目当てっていうくらいだから親御さんはまだ街に残ってるだろう。

息子さんが襲われたって知ったら心配するだろうな…。


それにしても今日だけで山賊に遭うのは二回目だ。


ボクはこの世界の治安はさっぱりだけど、こういう裕福そうな家庭のお子様が頼りないお供を連れて出歩いているもんなのかな。


そんな事を考えていると、ヘルマンが声をかけてきた。



「ジエラ様、これからどうなさるのですか?」


「…この子がある程度回復するまでは、ここを拠点に動かない方が良いみたいだね。その間にヘルマンの鍛錬も行いたいところだけど」


「は。ご指南よろしくお願いします。…それにしても、この子が心配です」



彼の瞳はとても優しそうに見えた。





すると美少年が身じろぎした。

あ、そろそろ目を覚ますのかな?




「…ん? ここは?」



目覚めの彼は意識が朦朧としているのかボーっとしているようだった。

だけど次の瞬間ビクッと震える。

山賊の事を思い出したんだろう。


するとヘルマンが美少年くんの肩を抱きかかえながら「山賊を斃したらキミが捕まっていたんだ。大きな怪我がなくて幸いだった」と、若さに似合わない渋い声で話しかけると、「…そうだったんですか? ありがとうございます。こんな…治療までしていただいて」と、覚束なくてもすごく礼儀正しい言葉遣いで返事してくれた。


産まれの良さを感じさせるね。

じゃあボクたちも未来のパトロン(?)にご挨拶しなきゃね。



「ボクはジエラっていう旅の騎士。こっちはボクの…


「婚約者のディードベルフィです。皆はベルフィと呼んでいます。あ、言っておきますが、ジエラお姉さまに不埒なマネをしたら殺しますから」


「は、はぁ、よろしくお願いします?」


………。


美少年くんはキョトンとしている。

ベルフィの言っていることが理解できていないみたい。

うう。

ベルフィには悪いけど、大っぴらに『女同士で結婚』『ボク(ジエラ)にちょっかい出したら殺す』とか言わないよう注意しとこ。ボクが英雄になるまで変な噂が立ったらマズイからね。



「私はサギニです。ジエラさまとベルフィお嬢さまにお仕えするニンジャです」


「…ッッ」



美少年くんはサギニから慌てて目を逸らす。

彼はサギニの格好に赤面しているっぽい。

そりゃそうだよ。あんな『大事なトコロだけ隠したような網タイツ忍者』なんて、ゲームや漫画の世界だけだよね。



「俺はヘルマン。ジエラさまの従者であり、剣をご指南いただいている」


「あ…」



ヘルマンと美少年くんが見つめ合っている。

美少年くんはヘルマンの優しい瞳にウットリしているみたい。

あの年の頃の男の子って『強くて優しい年上の男性』に憧れるのかな。


それとも…。

変に露出過多気味な女性陣に照れてるのかな。

ボクはともかく、ベルフィは素足ですっごいミニスカ。サギニは…どうしようもないし。

そのせいか、どう見てもヘルマンとの距離が近い気がする。


でも美少年くんは自己紹介してくれない。

まだボクたちを警戒しているのかも知れない。



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