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港街へむかう道すがら

よろしくお願いします。




街道というか、下草が生えていない程度の道を馬に乗ってひた走る。


村で得た情報、それは『この道を真っ直ぐ行けば海沿いの大きな街がある』ということなんで、取り敢えずそこに向かっている。


ちなみにボクは村での格好のままだ。

つまりタンクトップとホットパンツ。そして麦わら帽子に編み上げサンダルというワケのわからない鎧(?)姿なんだ。

まあ、こんなにもオシャレ重視っぽいカンジのつば広な麦わら帽子でも黄金の腕輪ドラウプニルが創れば兜のようで、風に吹かれて飛んでしまったりしないのは大助かりだけど。


でも、ちょっと気になると言えばこのボクのおっぱいでぱっつんぱっつんな裾の短いタンクトップ。

鎧には見えないけど、タンクトップの素材なのか風通しは抜群でとっても心地いい。


そして得物は日本刀。

当然この日本刀はボクが創造した壊れない(・・・・)武器だ。

一応、直ぐに抜けるように服のベルトに通してある。



そんな感じで夏の日差しを感じつつ風を切って疾るのを楽しんでいると、時々後ろに座ったベルフィがボクのおっぱいをわしづかみにしてくるんだ。



「ひゃうっ♡!? ま、またぁっ!?」


「ああっ♡ お姉さまの大きいお胸がユッサユッサ揺れていらっしゃるので…。つい押さえてさしあげようと♡ 献身な妖精(わたし)の想いをお察しください♡」



余計なコトしなくていいよっ。

このタンクトップは頼りなさそうだけど、ちゃんとした鎧なんだ。

しっかりとボクのおっぱいが暴れないように護ってくれてるんだからっ!


そんなコトを考えているとボクのおっぱいを撫でながらベルフィが真面目くさって話しかけてきた。



「お姉さま、油断していませんか? ヘルマンを無事に下僕(しもべ)に出来ましたけど、まだ安心できませんよ!?」


「へ、ヘルマンは紳士だから大丈夫だと思うよ。せ、誠実に武術を志しているもん」ビクンッ


「お姉さまは甘いですっ。お姉さまを油断させつつ、好意を誘うつもりかも知れません! ですから…『ヘルマンを下僕にする作戦』に続いて次の作戦っていうか、こっちが本命の作戦です。…それは私とお姉さまが一層仲良く・・・するんです! そうすればヘルマンはお呼びではないと気づくでしょう。こんな風に…♡ お姉さまぁ…♡♡」


「…つ、つまり、ボクとベルフィの仲を見せつけるの?」ビクビクッ


「はぁはぁ♡ その通りです! なにせ私たちは婚約者なんですから! これはヘルマンだけではありません。同時に他のお姉さまの貞操を狙う輩にも有効です!」


「……んんッ♡♡」ビクンビクンッ



っとまあ、そんなやり取りがあって、ベルフィのスキンシップが露骨になってきている。






そして問題は他にもあった。


スレイプニルにはボクとベルフィ。

ヘルマンは村で用意してくれた馬に乗っている。



ヘルマンが乗っている馬はかつて彼の父親が騎乗していたという軍馬の血を引いているらしく、なかなかの馬体だけど、神馬たるスレイプニルには遠く及ばない。


素人目にもヘルマンの馬はかなり無理して走っているみたいだ。


でもこれでもスレイプニルとしてはゆっくりペースみたいだし、さっき「もっとのんびり走って」とお願いしたら(これ以上遅くだと? 我に歩けというのか?)と断られちゃったんだ。


うう。

ヘルマンの移動手段、なんとかしなきゃな…。



(…ええい。こうちんたら(・・・・)歩いていては一向に進まんぞ)



案の定、スレイプニルがしびれを切らしてきた。


スレイプニルは神馬のくせに気が短いみたい。

ヘルマンの馬の足に合わせるゆったりとしたペースはストレスが溜まるみたいだ。



「スレイプニル。じゃあ、三人乗りできる? ベルフィの後ろに…」



ボクがそういうと、ベルフィは「トンデモナイ! なぜ男と身体を寄せ合わなくてはならないんですかっ」と大反対だ。



「私たち妖精アールヴは慎み深い種族なんですっ」



ベルフィの価値観では『裸なんていくら見られても減るモンじゃないけれど、(男に)身体を触られるのは我慢ならない』らしい。


ベルフィたち白妖精(リョースアールヴ)は下位豊穣神でもあり、妖精であると同時に精霊でもあるという。


彼女の慎み(・・)に対する考えは独特だ。


特に服装。


『精霊は服を着ないし、それに木や水など自然に在るモノも服なんて着ないから、自身も服を着る必要はない』っていう風に考えているみたいだ。


彼女がボクの創った服を着ているのは、人間界で活動するのに仕方なくTPOを弁えているだけに過ぎないのかもしれない。



「…じゃあ、ベルフィはボクの前に座りなよ。ヘルマンはボクの後ろに…」


「ダメですっ。男が後ろで密着だなんて…。お姉さまが穢されますっ!」



け、穢されるって…。




□ 妄想 □




「ジエラ様…。もう少し前に座っていただけませんか…? 俺の方はこれ以上後ろに下がれませんっ」


「ご、ごめん」



紳士なヘルマンはボクと密着しないよう気をつけてくれている。

彼は捕まるところもないから、仕方なくボクの腰に手を添えている。

だけど、時折バランスを崩して…ボクのおっぱいに捕まっちゃうんだ。



「し、失敬ッ! ジエラ様ッ! これはワザとでは…」


「う、うん。分かってるから…」



ああ。

ヘルマンってばさっきからボクのおっぱいを掴んだり離したり…。


怒った方が良いのかな。

でも不可抗力だし。


すると。

揺れているわけでもないのに、突然後ろからボクに抱きついてきた!



「ジエラ様…。俺は…もう、我慢できません!」


「ッ!? だ、ダメぇッ!?」



□ □ □




…うう。

考え過ぎかな…。


でもヘルマンと密着しての相乗りは止めた方がいいよね。

だけど、ヘルマンのペースに合わせていると、時間はともかくスレイプニルのストレスがなぁ。



「お姉さま、楽しいですね!」



ボクの悩みなんてお構いなしのベルフィは満面の笑みだ。



「う、うん」



ううっ。

彼女の笑顔がボクを苛んでくる…。


ベルフィはボクの一応の婚約者(?)としてスキンシップを大切にしているんだろう。


でもゴメンナサイ…。


ボクにはアース神国アースガルズに奥さんと子供がいるんだ。

その好意に応えられない。


だけど、旅をしている以上、ベルフィが居ないんじゃあ水や食料、快適な旅なんて到底見込めない。

いや、そんな理由は二の次だ。

ボクはベルフィとの旅を楽しいと思っている。



…どうしたらいいんだろう。




そんなコトを考えていると、イイ感じに休憩できそうな広場と小川を発見した。



「そろそろ休憩しよう。スレイプニル、体力が有り余ってるなら適当に走ってきていいよ」


(…ふんっ。おい若僧。少しは精進するがいい)



スレイプニルはヘルマンの馬にそう捨てセリフを残すと嵐のように走り去ってしまった。





昼食を兼ねた休憩時。

ベルフィが森に入って食料を調達してくれた。

彼女は獲物や肉、山菜、果物を採ってきてくれている。


彼女はエルフの最上位種族だっていうからベジタリアンっていうイメージがあったけど、実際はそうではなかった。



「動物は植物の糧になるじゃないですか? 植物だって動物の糧ですよ? そもそも山菜と肉って何の違いがあるんです?」



…だって。

だけど、生きるのに関係ない行為…つまり手前勝手な都合で自然を破壊する行為は我慢ならないらしい。


ボクはヘルマンが元・木こりだというコトでベルフィとの間に確執が生まれちゃうかもとヒヤヒヤしたけれど、彼ら木こりさんはむやみやたらに伐採せずに、ちゃんと森の風通しというか、若い草木に栄養と日光がいきわたる様に工夫しているという。

その点に関してベルフィはヘルマンの出自に何の文句もつけなかったので一安心だ。



休憩中、ヘルマンがボクに質問をしてきた。



「ジエラ様、ジエラ様は剣術をどなたから学ばれたのですか?」


「えっとね…武術の学び舎があったんだ。そこでだよ」



…ボクの師匠。

生前、小学生から中学生までの間の約10年間師事した師匠。

彼は色んな武術に対応できそうな基礎訓練と、様々な剣術の知識と技術を教えてくれたんだ。



「それは素晴らしいです! さぞかし武術の盛んなお国だったのでしょう。うらやましい限りです」


「…そうだね。古くから様々な流派があったんだ」



だけど今にして思えば…師匠はあらゆる武術の達人かどうかと言えばよくわからない人だったな。



ボクに女装させて、「女装に負けないよう男気を鍛えろ」とか…。

「女性の方が男性より強いから女子力を上げろ」とかいって、家事をやらされたり…。



そして武器を使った攻防、徒手の立ち技、寝技の訓練はもちろんあったけど、師匠がいなくなるころにはボクの方が勝ち越していたっけ。





師匠…。



……。



どうしてボクを置いて…。



ううん。

いつまでも師匠の背中を追いかけちゃダメだ。

師匠がボクを独り立ちさせてくれたんだもの。


その結果、ボクはフレイヤに逢えたんだ。


大恩ある師匠の為にもボクは英雄になって大手を振ってアースガルズに帰還するんだ。



頑張るぞ!




それからヘルマンは「最強の剣術は何でしょう? それを俺に授けてくれませんか」とボクに聞いてきた。



最強…か。


そんなの答えは決まってる。

「剣術…流派の強さはどれでも同じようなモノだ。ただ、極めつくしたか否かだ」

っていうのが師匠の口癖だった。


当たり前と言えば当たり前で、例えば強力な剣士を数多く輩出している超一流流派の見習い剣士と、マイナーな流派の免許皆伝剣士はどっちが強いかって言えば、後者にきまっているじゃないか。



ま、それはともかく…


最強の剣…ねぇ。





異論反論多いとは思うけど、最強かどうかはともかくとして一番漢らしい・・・・のは薩摩示現流に他ならないと思う。


師匠に習った剣術の中で、ひと際異彩を放っていたあの構え。


ボクはそれに興味を覚え、師匠の指導とは別に図書館とかで色々調べたんだ。


そして、示現流の強さだけじゃなく、薩摩隼人たちの男らしさに感動したものだ。



「それはね、示現流だよ」



ボクは力強く断言する。

そしてボクは師匠に習ったコト、そして図書館で調べたナンチャッテ示現流をヘルマンに教授する事になったんだ。



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