表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

第45話「お豆腐屋さんのぎっくり腰」

 お豆腐屋さんに行ってみると、おじいちゃんがぎっくり腰なんだって。

 ふむ…配達された大豆の袋が置きっぱなし。

 ここはいつもご馳走になっているので、お手伝いするしかないですね。

 大豆の袋は大きくて重くて、つかみにくいの。

 でもでも、ここはタヌキの意地ってもんですよ、ガンバがんば!


 今日のお仕事も終りました。

 わたしとコンちゃんでお風呂です。

「ほれ、わらわの背中を流すのを許す」

「なにが許すですか、わたしの背中も洗ってもらいます」

「ふむ……ポンが先輩ゆえ、しかたないかのう」

「しかたがない……言いますね、コンちゃん」

「いいから洗うのじゃ」

「はいはい」

 って、わたしがコンちゃんの背中を洗っている間、コンちゃんは前の方を洗う訳ですよ。

 むー、後ろから洗っているというのに、胸がチラチラ見え隠れ。

「ねー、コンちゃん」

「なんじゃ」

「なんでそんなに胸、大きいの?」

「ポン、またその話かの」

「だって……大きい」

「どうでもよい事ではないかの」

「むー、どうでもよいと!」

「うむ、どうでもよかろう」

 さて、ここで選手交代。

 わたしの背中をコンちゃんが洗ってくれます。

「どうでもよくない、なんで大きいの、大メロンパン級」

「まぁ、確かにおぬしよりは大きいかのう」

「でしょ」

「だからどうしたのじゃ、どら焼き級」

「どら焼き級……その通りだけど……」

「わらわの知識ではそーゆーのは貧乳というのじゃ」

「む、そんなのわたしだって知ってます」

 体、洗い終わっちゃいました。

 わたしとコンちゃん、一緒に湯船。

 むー、コンちゃんの胸、大きいですね。

 ちょっと触っちゃいましょう。

 むむ、フカフカなの。

「これ、触るでない」

「どうしたら、こうなるの」

「牛乳でも飲めばいいのじゃ」

「コンちゃん全然飲んでないよね」

「大人ゆえのう」

 今度は自分のを触ります。

 コンちゃんと比べると……小さい……クッ!


 今日の夕飯に冷奴が出ました。

 コンちゃんが約束して「おあげ」を貰うはずだったんだけど、ない時はお豆腐。

 こう、プルルンとして、ツルっと食べれて、わたし好き。

 そんなお豆腐を食べながら、

「ね、コンちゃん」

「なんじゃ、ポン」

 見ればコンちゃん、頬をポッと赤らめておとうふ食べてます。

 お酒はちょっとなら、いい匂いなんだけどね。

「コンちゃん、お豆腐食べたら、胸大きくならないかな?」

「わらわ、そんな伝承を知らんぞ」

「だってこんなにプルルンとしてるし」

 わたし、お豆腐を一口。

 それからじっとコンちゃん見ます。

「コンちゃんの胸の感じに似てます!」

「おぬしもしつこいのう~」

「コンちゃんは大きいからそんな事が言えるんです」

「そんなもんかのう~」

 あ、コンちゃん、わたしの二の腕をつかまえました。

 何度かモミモミして、

「ポンの腕、プニプニしておる、豆腐と同じじゃ」

「!!」

「胸でなく、腕がプニプニじゃ」

「!!」

 あ、みんながわたしを見て、クスクス笑ってます。

 もう、本当に気にしてるんだから!

 むー、こう、みんなを見回すと、やっぱりわたしの胸が一番小さいような気がします。

 このままじゃ、店長さん争奪戦脱落必至!

 こーゆー事を相談するのは誰がいいかな……

 コンちゃんは……不真面目なのでダメ。

 どうせまともに請け合いませんよ。

 ミコちゃんも笑ってスルーされそう。

 シロちゃんは……無頓着そうでやっぱりダメっぽい。

 たまおちゃん……そうです、普通に女の子です。

 きっとこの山の神社に来るまでに、いろいろ知識豊富なはず!

「ね、たまおちゃん、胸、大きくするにはどうしたら!」

 って、たまおちゃんの箸が止まりました。

 わたしをじっと見つめて、

「私……ポンちゃんにはイマイチ興味ないし」

 って、コンちゃんやミコちゃんに熱い視線送ってますよ。

「なんでわたしじゃダメなんですか!」

「若い娘はちょっと……ポンちゃんパッと見中学生クラス、どら焼き級」

「う……その通りです」

「お姉さま達と同じくらいになったら、胸も大きくなるかと……」

「そ、そうかな!」

 わたし、たまおちゃんを捕まえて、

「保証する? 命賭ける?」

「ぽ、ポンちゃん……」

 わたしを押し退けようとして腕をつかむたまおちゃん。

 目をパチクリさせて、真剣な目で今度はわたしの胸を触ります。

「どう、たまおちゃん、保証外?」

「いや……こう……その……」

 たまおちゃんの、いつにないシリアス顔に静まる食卓。

 頷くたまおちゃん、ポツリと、

「胸と腕、同じくらいにプニプニ」

 なんかすごい嫌な気持ちになっちゃいました。


 老人ホームのおやつ配達の帰り。

 レッドと学校で合流して、お店に向かいます。

 途中でお豆腐屋さんに寄って分けてもらうんで、お鍋持参なの。

「モフモ~フ」

「ねぇ、レッド」

「なになに~」

「しっぽ、やめてください」

「えー、きもちいいのに」

「わたしが嫌なんです」

 本当にモウ、この仔キツネはしっぽスキー。

「しっぽだめ?」

「ダメです、手を繋ぐんです」

「えー!」

「コンちゃんとデートだと手を繋いでるでしょ」

「ちぇっ!」

 なにが「ちぇっ!」ですか。

 手と手になったけど、なんだかピョンピョンしてます。

「どうしたんです?」

「ちょっとちょっとー!」

「うん?」

 レッド、わたしの肩に飛び掛りながら……二の腕をしっかとつかみます。

「どうしたの?」

「これがプニプニ」

「!!」

「プニプニ……うふふ……プニプニ」

 もう、チョップですチョップ。

 レッド、わたしの二の腕の感触にすごい嬉しそう。

「しんきょうち、はっけんです」

 もう、今度一緒にお風呂入ったら、頭からお湯掛けて泣かせちゃうんだから。

 じゃれあっていたら、トラックがやってきました。

 わたし達の手前で停まりましたよ。

「おう、パン屋の姉ちゃんじゃねぇか」

「あ、現場監督さん、どうしたんですか?」

「いや、豆腐屋のじっちゃんに配達の帰りなんだ」

「そうなんですか、わたし達は今から行くところです」

「そうか、あそこの豆腐最高だからな、じゃ!」

「うちにも来てください!」

「昼はいつも行ってるんだけどな~」

 トラック行っちゃいました。

 昼はいつも来てるそうです……わたしが配達であけてるだけかも。

 すぐにお豆腐屋さん見えてきます。

「こんにちわ~」

「ああ、いらっしゃい、ちょっと!」

「どうしたんです? 血相変えて?」

 なんだかおばあちゃん、ちょっと焦った感じ。

「うん、じいさんが腰をやっちゃってね」

「腰? やっちゃった?」

「うん……さっき大豆を配達してもらったのはよかったんだけど、運ぼうとしたらね」

 って、おじいちゃん、お布団で横になって苦笑いしてます。

「まだ大分残っててね……中に運ばないと……」

 ああ、本当です、店先にたくさん袋が積んであります。

 おばあちゃん、お鍋にお豆腐入れてくれてから、

「私にはちょっとね……」

「ふうん……これ……こっちに?」

「うん、そう、こっちに」

 わたし、お豆腐の入った鍋をレッドに渡して、

「じゃ、わたしが運びます……レッドはお鍋を持って先に帰ってください、これがないと夕飯がピンチになっちゃうから」

「は~い」

「たくさんありますね、でも、頑張りましょう!」

 わたし、腕まくりして袋を運びます。

 大きい!

 つかみにくい!

 重たい!

 や、やっと一つ運び込みました。

 まだまだ沢山あります。

「あんた……大丈夫かね?」

「ま、まかせてください……うふふ……うふふ~」

「ほ、本当に大丈夫なんだろうね」

「お、終らない仕事はないんですっ!」

 くっ……乗りかかった船ってヤツです。

 さ、最後までやり遂げるんだからモウ!


 は、運びに運びました。

 い、いよいよ最後の一袋。

「おーい、ポン」

「!!」

「ポン、頑張っておるようじゃな」

「コンちゃん、どうして!」

「レッドから話を聞いたのじゃ」

「ふわわ……これで終わりです」

「ふむ、こんなにも運んだのか、なかなかやるのう」

「た、タヌキの意地です」

「うむ……では、最後の一つは助太刀じゃ」

 って、コンちゃんが指を鳴らすと、大豆の袋がフワフワ宙に浮き上がりました。

 そのままフヨフヨと飛んで、中に行っちゃいます。

「ちょ……コンちゃん反則!」

「まぁ、わらわの術をもってすれば、お茶の子じゃ」

 わーん、これなら最初からコンちゃん呼べばよかったです。


 超肉体労働の後のお風呂は最高です。

「今日はすごい疲れたよ、充実感最高だけど」

「うむ、わらわもポンを見直した」

「でしょ、わたしもやる時はやるんです」

 湯船に浸かっているコンちゃん、縁につかまってわたしとレッドを見てます。

 わたし……ふふ、レッドの髪を洗ってるところなの。

 泡まみれのレッドに、ザーっとお湯掛けるんです。

「わーん、やさしくしてー!」

「男の子でしょ、我慢です我慢」

「わーん!」

 ふふ……しっぽのお返しなんです。

 でも、泣かしてばっかじゃかわいそうなので、最後に抱っこしてあげるの。

「ほら~、男の子は泣かないの」

「なきたいときもあるのー!」

「お湯掛かったくらいで泣きますかモウ!」

「ポン姉、わざとしてます」

 ギクッ……レッドの言う通り。

 もしミコちゃんに告げ口されたらお外でお休みかもしれません。

 でも、レッド、なんだかじっとわたしを見つめてます。

 どうしたのかな?

「ねぇ……ポン姉……」

「どうしたの、レッド?」

「うでがすごいことに……プニプニしてない」

「!!」

 レッド、真剣な顔でわたしの二の腕触ってます。

 コンちゃんも手を伸ばして触りながら、

「のう、ポン、おぬし……」

「な、なに……コンちゃん……」

「なかなか良い体をしておるのう」

「!!」

 コンちゃん、今度はわたしの胸を触ります。

「胸、薄くなっておらぬか?」

「!!」

「胸の分が、腕に行っておらぬか……それもカッチカチじゃ」

「う……」

「まるで男のようじゃ」

 それを聞いてレッドが、

「じゃ、ポン兄とよびますか?」

 ダメージ大きすぎです。

 わたし、このまま男になっちゃうんでしょうか!

 わーん!


「モフモーフ!」

「きゃっ!」

「モフモ~フ!」

「ちょっ! レッド、なにするんですか!」

 うわ、レッド、超嬉しそうにわたしのしっぽ触ってます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ