第41話「ミコちゃんの給食当番」
朝、熟女の村長さんが来ました。
また店長さんに用事かと思ったら、今回はミコちゃんに用事なんだって。
なんでも学校給食の当番のお願いとか。
ミコちゃん、給食を作りに学校に行っちゃいます。
の、残されたわたし達のお昼ごはんはどーなっちゃうのかな?
朝ごはんも終りました。
「任務に行くであります」
「私も神社に……」
シロちゃんたまおちゃん出勤です。
「はい、ポンちゃんの配達とレッドのお弁当よ」
朝イチの配達は神社です。
ついでにレッドを学校近くまで連れて行くの。
わたしの配達は大きな手提げで、レッドのお弁当は幼稚園カバン。
「ねぇ、ミコちゃん」
「なに、ポンちゃん?」
「わたし、昼に学校に配達に行くけど、学校、給食あるよね」
「そうね、私も配達に行った事あるわよ」
「レッドのカバンの中はお弁当」
「そうよ」
「給食あるのでは?」
「村長さんから言われたの、レッド、お昼までもたないんだって」
「帰ってきたら、おやつパクパク食べてるもんね」
「子供だから」
「レッドのお弁当ってどんなのです?」
「おにぎりよ、カツブシとシャケ、梅干はダメみたい」
「おいしそう……わたしのお弁当は?」
って、ミコちゃんチョップが炸裂です。
ちょっとした冗談だったのに。
わたしとレッドが出発しようとしたら村長さんが来ました。
熟女です、上品な感じである意味脅威。
「あの……ミコ……ちゃんはいますか?」
「ミコちゃ~ん、村長さんが来てるよ~」
店長さんじゃなくてミコちゃんの用事でよかった。
村長さんとミコちゃんの話が気になるところですが、レッドの学校もあるので出発です。
「ねぇねぇ、レッド」
「なに、ポン姉~」
「おにぎり、おいしい?」
「うん、おいしいよ」
わたし、レッドのカバン取り上げちゃいます。
「ふふふ、お弁当いただき~」
「あー!」
「おにぎり、いただきま~す」
「ふえ……うえ……うわーん!」
ああ、レッド大泣きです、冗談なのに。
「はいはい、ごめんゴメン」
「ポン姉のいじわる」
「ごめんってば」
「ミコ姉にいうもん」
そ、それはやめて~
でもでも、おにぎりすごく美味しそう。
ミコちゃんわたしにも作ってくれないかなぁ。
配達から戻ってみたら、なんだかミコちゃん忙しそうにしています。
「どうしたの、ミコちゃん?」
「あ、ポンちゃんおかえりなさい……私、すぐに出かけるから」
「お買い物?」
「ううん、村長さんに言われて、給食当番に行くから」
「さっきのは、その事だったの?」
「うん、村長さん、なんだか急用なんだって」
「ミコちゃん、なんだか楽しそう……面倒くさくないの?」
「なんで? 楽しくない?」
「お料理が好きなの?」
「お料理が好き……それもあるけど……子供が好きかな?」
「ふーん……店長さんはわたしのものなんだから!」
「ふふ……レッドがいるから……そうね……」
「なになに?」
「山の頂上に社があったでしょ」
「うん、ミコちゃんの社」
「ずーっと昔、私が人柱になったのは話したわよね?」
「うん、知ってるよ」
「人柱になって、こう、ずっと退屈だったの」
「なんかそんな事、言ってたね、わたし帰るの阻止してたし」
「ふふ……あそこ、昔は道もなかったのよ」
「ずっと神さまになって、あそこにいたんだよね」
「うん……でも、神さまになって毎日誰か来てくれたりしたわけじゃないの」
「……」
「ポンちゃん歩いて来たからわかると思うけど、大変でしょ」
「うん、あそこ、近くに見えるけど結構しんどいよ」
「昔は道も今みたいじゃなかったから、もっと大変だったのよ」
「それじゃ……人も来ないかも」
「すごく退屈で……」
「だろうね」
「でも、あんな社にお客さんが来てくれるようになったの」
「え……今、大変だったって言ってなかった?」
「うん……人は年に一度くらいにね……人じゃなくてタヌキさん」
「た、タヌキさん!」
「うん、山の動物でタヌキさんがよく来てくれたの」
「そ、そうなんだ……それは初めて聞いたよ」
「ふふ……タヌキさん達やって来て、私とよく、お話してくれたわ」
なんだかミコちゃん、すごい楽しそうに話してくれます。、
「だからポンちゃんが来たときは、すごく嬉しかったの」
ミコちゃんニコニコして、行っちゃいました。
わたしがあの日社に行ったの、運命だったのかもしれませんね。
さて、お客さんもはけちゃいました。
観光バスさまさまってもんです。
「これ、ポン、昼ではないかの」
「そうだね、そろそろ昼ごはん……」
わたし、コンちゃんに返事をしてから固まっちゃいます。
ごはん作るのはミコちゃん。
そのミコちゃんは給食作るのに学校に行ってますよ。
「これ、ポン、昼は!」
「コンちゃん、ミコちゃん学校に行ってていないんだけど」
「なんじゃと!」
時計を見たら給食の時間は終っていそうです。
でもでも、後片付けとかいろいろあるのかもしれません。
「ポン、お昼!」
「わ、わたしに言われても!」
って、店長さんも奥から出てきました。
「ミコちゃんがメモと一緒に置いてったよ」
「店長さんそれは?」
「キツネうどん」
「??」
「お湯を入れて五分待つの」
「おもしろそう!」
って、わたしそれは初めてです。
でも、コンちゃんご機嫌斜め。
「ミコめ、神のわらわに即席かの」
テーブルに並べられたキツネうどん。
上の紙をはぐったらもうできているみたい。
「きゃーん、お・あ・げ!」
コンちゃん、文句言いながら一番最初に手が出ちゃってます。
わたしもいい匂いにつられて一口。
「ナニコレー、すごくおいしいよ!」
店長さんも笑いながら、
「インスタント、たまに食べるとおいしいよね~」
翌日もミコちゃん行っちゃいました。
お昼を前に、お客さんもいないので、
「ねぇ、コンちゃん、今日もミコちゃん給食当番だよ」
「なに……食事はどうなっておるのじゃ」
「さ、さぁ……あ、店長さん!」
「なに、ポンちゃん?」
「今日もお昼は……ミコちゃんいないから」
「あ、聞いてるよ、残り物のパンだから」
店長さん、持ってたパンをテーブルに置きます。
「えー!」
もう、わたしもコンちゃんもブーイングです。
「なに、二人とも、俺のパンに文句あるの?」
「パンはおやつに食べるから……」
「そうじゃそうじゃ」
「店長さんはパンでもいいんですか?」
「う……パン屋やってるだけに、ちょっとキツイかも」
「わたし、配達って言って学校行っちゃおうかな~」
「やめなよ……」
「わたし、ごはんがいいーっ!」
「わらわもじゃ」
「きっと今頃レッドはおいしい給食食べてるんですよ」
わたし、思い出して冷蔵庫に貼ってある献立表持ってきます。
「これによると、昨日は肉じゃがです……じゅるる」
みんなも頷きます。
「今日はカレーになってます……じゅるる」
みんなの頭上で「カレー食べているレッドの図」が浮かんでいます。
「ミコちゃんレッドにお弁当作っているのに!」
「ミコのヤツめ、わらわ達の事など考えておらんのじゃ!」
「ああ、そう言えばおにぎり、たまおちゃんやシロちゃんに作ってたなぁ」
「わーん、わたしもおにぎり、食べたーい!」
「これ、店長、何か作れぬのか、ミコが来るまでは店長が……」
「そりゃ、作れない事はないけど、食材もミコちゃんまかせで俺が勝手すると夕飯がどうなるか……」
「はわわ……夕飯がしぼむの嫌ですね」
「今はこのパンでしのぐしかないんじゃないかな」
店長さんの頭に裸電球。
あるパンをわたし達にくれました。
「なに、店長さん?」
「ふふ、ちょっとでも雰囲気味わえるよ」
「??」
店長さんのくれたの、揚げたパンです。
わたしとコンちゃん、早速食べます。
「あ、これ、カレーパンですね」
みんなで食べるカレーパン。
でも、余計に「カレー」が食べたくなっちゃいました。
「ただいま~」
レッドご帰還、ミコちゃんも一緒だよ。
「ミコちゃんひどい、わたし達のお昼なかった!」
「昨日のパンが結構残っていたから……ダメだった?」
「おにぎりとか、作っててくれればいいのに!」
「ふふ……夕飯今から作るわね」
「む!」
わたしとコンちゃん、クンクンします。
カレーの匂いなの。
わたしとコンちゃん、おやつのメロンパン食べてるレッドを捕まえます。
「わわわ、なになにー!」
「レッド、じっとしてて!」
「ころさないでー!」
「いいから、じっとしてて!」
レッド、メロンパン持ったまま固まっちゃいました。
わたしとコンちゃん、レッドの髪をクンクンしまくりです。
「くっ……レッド、給食はなんでしたか!」
「カレーライス」
「レッド……おぬしカレーは好きか、何杯食べたか!」
「すきすきー、おかわりした」
わたし達、レッドを置いて台所に直行です。
二人でミコちゃん囲んで、
「ミコちゃん、夕飯はカレーにして!」
「そうじゃ、わらわも食べたいのじゃ!」
「でも……レッドちゃんが昼も食べてるし……」
二人してミコちゃん揺すりまくりです。
「今夜はカレー!」
「はいはい」
今日もお客さん、しっかりきてくれますように。
でもでも、朝のパン屋さんはお客さんいません。
まぁ、朝一番はしかたないですね。
「これ、ポン、ちょっとよいか」
コンちゃんが呼んでいます。
なにかな?
「ポン、ミコはおるのかの?」
「?」
「ミコはおるのか?」
「うん、ミコちゃん台所じゃない?」
「そうか、それはよかった」
「どうしたの?」
「ポン、おぬし、昨日の事を忘れたかの?」
「昨日……カレーおいしかったね」
「おぬしは……何故カレーがおいしかったと思うのじゃ」
「それは……お腹空いてたから……」
「そうじゃ、今日もミコが給食当番にとられてはたまらんのじゃ」
「そ、そうだね……ミコちゃんがいないとたまりません」
「じゃろ……しかし……」
わたしとコンちゃん、一緒になってパン工房を覗き込みます。
店長さんがパン生地こねているのが見えますね。
「こう、昔は店長の食事でも満足じゃったのに……」
「わたしも……ミコちゃんが来るまでは、店長さんのごはんでよかったのに……」
「わらわ、ミコの呪縛にとらわれてしまったのかのう」
「呪縛……兵糧攻めとか言わない?」
「むう……確かに兵糧攻めかもしれん」
って、パン屋さんのドアが開いて、カウベルがカラカラ鳴りました。
今日一番のお客さん……って、熟女な村長さん。
わたしとコンちゃんに衝撃が走ります。
「あの、ミコ……ちゃんはいますか?」
「ミコちゃんはいません!」
「え……」
「ミコちゃんはいないんです!」
わたし、必死に否定しまくり。
コンちゃんも髪がうねって呪いのオーラを背負っています。
「村長、ミコはおらぬ、帰るのじゃ」
「……」
そうです、またミコちゃんを給食当番にとられたら、たまったものじゃありません。
わたしとコンちゃんで熟女村長にらみまくり。
「コラ!」
って、現れたミコちゃんからチョップ食らっちゃいました、イテテ。
「まったく、お客さんに何してるの!」
「だ、だって~」
「なに、ポンちゃん」
「だって、またミコちゃんとられたら、わたし達のお昼が!」
わたしの言葉にコンちゃんもブンブン頷きます。
って、ミコちゃんと村長さん、クスクス笑ってますよ。
「な、なんで笑ってるんですかっ!」
「そうじゃそうじゃ!」
「あ、あら、ごめんなさい……今日はお礼に来たのよ」
ああ、ミコちゃんとられなくてよかった~!
「たまおちゃん、変な音がしてるよ」
「え……変な音?」
「ブーンって感じの音……蜂の羽音……たまおちゃんから」
「ああ!」
たまおちゃんが出したのは携帯電話です、メールなんだって、誰からでしょ?