第50話「七福戦隊」
洞窟に現れた七福戦隊!
わたし一人で敵と戦わないといけません。
得物は打ち出の小槌だけ。
相手はおじいちゃんばっかりなんだけど…
多勢に無勢で大ピンチ!
赤い光をバックにする人影。
「助けてっ!」
一人走ってきました。
でもでも、女の人の声です。
「助けてっ!」
「はわわ、あなたは?」
「わ、私は弁天!」
「弁天さま?」
「私はここに囚われていて……」
見ればなにか楽器持ってる綺麗な人です。
コンちゃん厳しい目で、
「おぬし、弁財天じゃな、神であろうが」
「お稲荷さま……お稲荷さまが何で人の姿?」
「ポンを見るのじゃ、こやつはタヌキ娘じゃ」
「うわ、びっくり!」
弁天さま、わたしのしっぽ見て戸惑ってます。
でも、わたしやコンちゃんを見ながら、
「お二人は……どんなところに住んでいるんですか」
「パン屋さんです」
「その……パン屋さんには……どんな人が住んでいますか?」
「コンちゃん、ミコちゃん、たまおちゃん、シロちゃん、レッドに店長さん」
「お年よりはいますか?」
「うーん、お年より……」
わたしがコンちゃん見たら、ゲンコツ来ました。
コンちゃん見た目は若いけど、本当は平家の落ち武者時代なのに。
わたしが痛くて頭を押さえて小さくなっていると、
「これ、弁財天、爺婆がどう関係あるのじゃ」
「お稲荷さま……七福神をご存知?」
「もちろんじゃ」
「私、おじいちゃんにばっかり囲まれて、つまんない」
「……」
わたしとコンちゃん、絶句です。
おじいちゃんとおばあちゃん、そんなにつまらないかなぁ。
お豆腐屋のおじいちゃんとおばあちゃん、結構お話するもん。
「もう、こんな洞窟でおじいちゃんの相手は嫌っ!」
コンちゃんにすがりつく弁天さま。
足音が近付いて来るのがわかります。
ここは弁天さまを助けるために、戦うしかないみたい。
「コンちゃん、行くよ!」
「うっ!」
「こ、コンちゃん、どうしたの!」
「な、何か知らんが体が……うう……」
ああ、コンちゃん戦う前からダウン。
「こ、こんな時に役立たずっ!」
「あ、あの、タヌキさん」
「なに、弁天さま、わたしのことはポンちゃんでいいよ」
「ポンちゃん……このお稲荷さまはきっと七福神のパワーでやられたんです」
「え……なにそれ?」
「おじいちゃん達の神通力で、お稲荷さまの能力を封じたのです」
「そ、そうなんだ……なんでわたしは大丈夫なの?」
「それはポンちゃんが獣だからです、タヌキなので」
「それってどーゆー事?」
「神を信じるかどうかで……」
まぁ、わたし、神さまどうでもいいですね。
コンちゃん見てると信じられません。
ミコちゃんだってわたしを兵糧攻めにします。
たまおちゃんに至ってはダメダメなの。
「ともかく、わたしには神さまの術が効かないから、戦えるわけ?」
「はい」
「む~、じゃ、やるしか!」
わたしが両手で打ち出の小槌を持つと、弁天さまびっくりして、
「その打ち出の小槌は?」
「あ、神社の押し入れからゲットしたの、わたしの得物」
「そ、それは大黒の持ち物です!」
「え……そうなんだ」
って、話している間にも、影が近付いて来ました。
もう、戦うしかありません。
あっ、影が飛び掛ってきましたよ。
「きゃーっ!」
わたし、夢中になって打ち出の小槌、振りまくり。
でもでも、手応えありました。
見たらわたしの足元に、二人ダウンしてます。
頭が微妙に長いおじいちゃんと、亀を持ったおじいちゃん。
ふふ、敵はおじいちゃんばっかりなら、弱いよわ~い!
次なる二人は釣竿とメタボのおじいちゃん達。
「うむ、タヌキ娘、なかなかやりおる!」
「パン屋じゃ一番先輩で偉いんですから!」
「では、我々の攻撃、受けてみるのじゃっ!」
わたしも打ち出の小槌を構えます。
「おお、それは大黒の!」
「うむ、確かに大黒の打ち出の小槌じゃ!」
二人、わたしを前後に挟むような立ち位置。
前に立ってる釣り人の神さま、竿を振るいます。
わたしの制服の裾にひっかかって、スカートまくり状態!
「きゃー、エッチ!」
「ふふふ、これで動きもとれまい」
「どエッチっ!」
「今だ、布袋っ!」
「応っ!」
後ろのメタボの神さまの声。
スカートめくりはきっと目くらまし。
ここでスカートに気をとられていたら負けです。
振り向いたら、メタボの神さまが大きな袋をわたしにかぶせようとしてますよ。
腕をガシッとつかまえて、
「なにすんですかっ!」
「袋に入れて拉致するまでっ!」
「な、なんて事を!」
「ほれほれ、タヌキ娘、パンツ丸見えじゃぞ」
うわ、それ、言われると急に恥ずかしくなります。
でも、袋に詰められて、拉致されて、どうなっちゃうのかな?
わたし、弁天さまを思い出しました。
そしてエロポン知識もリンク。
結論として、おじいちゃん達に「おもちゃ」にされるとか!
「絶対嫌っ!」
もう、つかまえた神さまを振り回して、釣りの神さまに投げちゃいます。
見事に命中して、またしても二人を退治。
スカート破れちゃったけど、かえって動きやすくなっていいかも。
「ポンちゃんっ!」
「なに、弁天さま!」
「毘沙門がっ!」
って、槍みたいなので突いてきます。
今までのおじいちゃんとは、ちょっと違うキャラクターみたい。
「タヌキ娘、神域を侵すとは、覚悟するがよい」
「むむ……なかなかやりますね」
「ほれほれほれっ!」
うわ、槍の連続攻撃。
わたしの打ち出の小槌よりリーチがあります。
打ち出の小槌シュート……でも、今回はなんだか通用しなさそう。
今、正面にいる毘沙門さんは、見ただけで武芸達者そうなんだもん。
それに打ち出の小槌シュート、コンちゃんに破られたばっかりだもんね。
なにか得物、ないでしょうか?
やっつけてのびているおじいちゃん達。
「袋」はイマイチ使えなさそう。
「釣竿」でスカートめくりは女の子用の攻撃です。
「杖」はリーチありそうだけど、毘沙門さんに通用しないと思う。
ふふ、わたしが目をつけたのは「うちわ」。
袋を持ってのびている神さまから、うちわを頂いてダッシュ。
「勝負っ!」
「狸汁にしてくれるっ!」
毘沙門さんの槍。
受けるわたしのうちわ。
「ぬっ!」
槍をうちわで防御成功!
まるで川中島の信玄公ですよ。
こうなったらわたしの距離です。
「もらったーっ!」
打ち出の小槌アッパー、一発で仕留めました。
「わたしの勝ちっ!」
「ポンちゃんすごーい!」
「えへへ、いつもコンちゃんなんかと小競り合いしてるから、実戦はばっちり」
「ポンちゃん、捕まえた~」
「え!」
弁天さま、わたしを羽交い絞め。
「ちょ、ちょっと、弁天さまなにをっ!」
「今です、大黒、やっちゃってくださいっ!」
「ま、まさか裏切り!」
「その通り」
って、わたしの前に、また新しい神さま登場です。
「きゃー、また別の神さまっ!」
「うぬ……それは儂の打ち出の小槌!」
「え……そうなの?」
「神の物を盗むとは、狸汁になるのじゃっ!」
わーん、羽交い絞めで打ち出の小槌振れません。
ああ、大黒さまの魔手が迫ります。
思い出しました、さっきスカート破れちゃいました。
「キーックっ!」
「うぐっ!」
大黒さまの股間にクリティカルヒット。
ああ、なんだか嫌な感触です。
でも、手応え……足応え充分。
大黒さま、内股&股間を押さえて沈黙なの。
「ああ、大黒まで!」
「ふう……弁天さま、裏切りましたね」
「むむ……でも、まだこっちが有利っ!」
それはそうです、わたし、羽交い絞めされたままだもん。
もがいてみても、思ったように脱出できない。
って、弁天さま、わたしの首になにか細い糸を掛けます。
「ふふ、琵琶の弦で首絞め、ザ・仕事人です」
「ちょ、シリアスな殺し方やめて」
「死ねば一緒です」
「それはそうだけど」
「死んだら狸汁にしてあげます」
くく……本当に殺すつもりです。
ここまで来ておいて死んじゃうなんて。
殺す……逝く……エロ本なら気持ちよくなるところです。
エロ本なら気持ちよく……ひらめきました。
確認の意味で、ちょっと首を振って弁天さまを見ます。
さすが神さま紅一点、美人も美人。
首を絞められて、声を出すの大変だけど、最後に声、上げちゃいます。
「たたた……」
「ポンちゃん、何が言いたいの?」
「たたた……」
「ふふ、最後に一言、言わせてあげるわ」
あ、ちょっと糸、緩みました。
言わせてもらえるなら、言わせてもらいましょう。
「たまおちゃん、すごい美人な『お姉さま』がいますよっ!」
途端に洞窟内が桃色オーラで満たされます。
でも、たまおちゃんの周囲だけどんより濁ったオーラ。
気を失っているはずのたまおちゃん、ゆっくりと立ち上がります。
うわ、目、赤く光ってるよ。
「お姉さま……お姉さま……」
「たまおちゃん、こっちこっち!」
「お姉さまーっ!」
ああ、なんだかまた、別の「厄介」を呼び覚ましたような気がします。
たまおちゃんが迫って来ると、どんよりオーラも波みたいに来ました。
「きゃーっ!」
あれ、どんよりオーラに当ったら、弁天さまの服が無くなっちゃいました。
わたしの制服は大丈夫なのに、なんでかな?
「お姉さまーっ!」
「きゃーっ!」
ああ、弁天さま、たまおちゃんにつかまっちゃいました。
わたし、関わり合いたくないから、放置しちゃいましょう。
「って……わたしなにしに来てたんだっけ……」
とりあえず、コンちゃんを揺すって起こしましょう。
コンちゃん、倒れている神さまを見ながら、最後に登場した大黒さまを指差して、
「打ち出の小槌の事はこやつに聞くとよいのじゃ」
「ああ、そういえばさっき、そんな事言ってました」
たまおちゃんと弁天さまが「レスリング」してるから、わたし達や大黒さま達は洞窟の外です。
「この打ち出の小槌は大黒さまのなんですね」
「そうじゃ、儂の神器なのじゃ」
「わたしじゃ使えないなら……はい、お返しします」
「!!」
「わたし、武器としてならコレ使えるけど、この数字は願い事をかなえる数字でしょ?」
「うむ……そうじゃが……」
わたしのやっつけた神さま、みんな「×」印のバンソウコウ貼ってます。
そんな神さま達が打ち出の小槌を見つめて、大黒さまがポツリと、
「タヌキ娘はこれを返してくれると……」
「うん……もうたまおちゃんに攻撃される事もないし、得物いらないかも」
そうです、たまおちゃんから身を守るための得物です。
たまに新たな敵が登場したりするけど、大黒さまのだもんね。
「わたしはパン屋さんだから、もういりません」
「……」
「じゃ、さようなら~」
「ちょ、ちょっとちょっと!」
「はい? なんです大黒さま」
「いや、普通はこう見返りを要求されるものなんじゃが……」
「見返り……でも、わたし大黒さま蹴っちゃったし」
あ、言わなきゃよかったかも。
大黒さまモゾモゾして渋い顔してます。
急に怒った顔になる大黒さま。
「タヌキ娘の願い事を三つだけかなえてやろう」
「え!」
「その代わりっ!」
「え……その代わり?」
「儂がおぬしに負けた事、口外せぬと約束せよ」
「え……別に人に言ったりしないけど……どうして?」
「神である儂がタヌキ娘ごときに敗れたとあっては恥」
大黒さま、わたしの手に打ち出の小槌を握らせます。
「願いは三つまで、儂が負けた事、口外せぬように」
ふわわ、願い事三回ゲットです。
打ち出の小槌は本当、紙で出来てるみたいで、軽いし安っぽいの。
本当に願い事をかなえてくれるのか心配。
「ほれ、ポン、使ってみるのじゃ、使えなかったら笑ってやる」
むー、コンちゃん言いたい放題です。
頭に来ましたよ、コンちゃんに使ってるの見せてあげません。