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「足るを知る」とは何か~イギリス的な冷徹でシニカルなジョーク~

掲載日:2026/06/19

 「足るを知る」とは、すでに満ち足りている事を自覚すれば何を達成するまでもなく幸福であるということ。

 今回は、これを噛み砕いてみようと思う。


 幸福の「資本」論 あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」


 こういうタイトルの本が実在する。

 作家の橘玲たちばな あきら氏による著作で、2017年にダイヤモンド社から出版された。

 「足るを知る」を噛み砕くためのツールとして、最初にこの著書の力を借りようと思う。


 この著書で「3つの資本」とされているのは、以下の通りだ。

 1:すでに持っている財産。

 2:これから稼ぐ能力。

 3:友人。

 このうち2つ以上が必要十分であれば、その人は幸福である。


 すると次にあなたは何を思うだろう?

 「3つの資本」をどうやって手に入れるか?

 違う。

 この著書の肝は、そこにはない。


 必要十分とは何か?


 肝はそこだ。

 イギリスとアイルランド出身のコメディアン、ジミー・カー(ジェームズ・アンソニー・パトリック・カー)が述べた言葉がある。


 「お金持ち」とは、それ以上お金があっても行動が変わらないことである。


 年収600万円の人が、年収1億円に増えたとしよう。

 しかし特に欲しいものもなく、行動が変化しなかったなら、9400万円は特に使い道がなくて余ることになる。

 つまりこの人の場合、年収600万円で、すでに「お金持ち」なのだ。


 必要十分とは何か?

 それを「想定しうる全ての事態に対応できるだけの十分な量」と考えると、もっと増やせ、際限なく増やせ、そうでなければ不安は尽きない、という事になってしまう。

 だが「自分の行動がそれ以上変わらない量」と考えると、それは意外と少ないかもしれない。


 今より年収が増えれば、生活は楽になるかもしれない。でも「楽になった」と思うだけで、消費が増えないのであれば、すでに必要十分だ。増やす必要はない。

 宝くじや投資に成功して大金を手に入れたら、財産は増える。でも「増えたら何をしようか」と考えたとき、仕事を休めないとか辞めたら退屈だからまた働くというのなら、すでに必要十分だ。増やす必要はない。

 友達が100人できても、気疲れしてしまうから独りで過ごしたい。そんな人は、友達が1人もいなくてもすでに必要十分だ。増やす必要はない。


 つまり、これが「足るを知る」ということだ。

 今の状態から、もっと貯金を増やしても行動が変わらない。

 今の状態から、もっと収入を増やしても行動が変わらない。

 今の状態から、もっと友人を増やしても行動が変わらない。

 ならば、あなたはすでに「必要十分」だ。増やす必要はない。


 自分にとっての「必要」というハードルを下げること。

 そして、すでにハードルを飛び越えていることを理解すること。

 これが「足るを知る」ということだ。

 悟りを開くとかの難しい話ではない。

 極論すれば、引きこもりのニートはすでに「必要十分」で「幸福」なのである。


 今は行動が変わらないけれど、親が倒れたら? 10年後は?


 もう1度言おう。

 必要十分――それを「想定しうる全ての事態に対応できるだけの十分な量」と考えると、際限なく増え、不安は尽きない。


 未来の不安のために今を犠牲にする生き方こそが不幸の源泉である。

 引きこもりニートは、ロックからクラシックを経て「その先」へ至った刹那主義の極致といえる。

 幸福とは、将来を憂うことではない。

 太く短く。

 ロックの精神は今、引きこもりニートに受け継がれている。


 理解できないだろう。

 細く長くを選ぶのが普通だ。

 それでいい。

 ただ否定しないでくれれば、それでいいのだ。

 それが「多様性」というものではないか?


 大丈夫だ。

 あなたは独りではない。

 筆者にも理解できないのだから。

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