表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロと追放された私、なぜか王国の魔法を全部書き換えてしまいました  作者: 和三盆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/10

第7話「善意は、罪になる」

王都を出て二日目。


レイナは、街道脇の簡易宿で足を止めていた。


(……静かすぎる)


説明書をばらまいたあと。

管理局であれだけ揉めたあと。


何も起きない、というのは不自然だった。


「お姉さん」


背後から、幼い声。


振り返ると、十歳くらいの少女が立っていた。

手には、見覚えのある紙束。


「それ……」


「水の道具の紙でしょ?」


少女は、無邪気に笑った。


「お父さんがね、作ってくれたの。

お水、ずっと出るんだよ!」


胸が、少し温かくなる。


「よかったね」


「うん!」


少女は走り去っていった。


(……広がってる)


間違いなく。


その直後だった。


宿の扉が、乱暴に開いた。


「王国魔導管理局だ!」


鎧姿の男たちが、五人。


宿の空気が、一気に凍る。


「レイナ・アル=サンを拘束する」


「罪状は?」


宿主が恐る恐る聞く。


「無許可魔法技術の流布」

「および――」


一瞬、言葉を切る。


「王国秩序の撹乱」


(来た)


レイナは、立ち上がった。


「私です」


男たちの視線が、突き刺さる。


「抵抗は?」


「しません」


(今は、ね)


連れて行かれたのは、立派な建物ではなかった。


石造りの、薄暗い部屋。


窓は小さく、椅子が一つ。


「待て」


そう言われ、扉が閉まる。


――カチリ。


鍵の音。


(ああ……)


(これだ)


なろう的に言えば、

“理不尽イベント”だ。


しばらくして、扉が開いた。


入ってきたのは、ディートリヒだった。


「……ここまでやる必要がありましたか?」


レイナは、真っ直ぐに言った。


「必要だ」


彼は、疲れた顔をしていた。


「君のやったことは、

王国の“基盤”を揺るがしている」


「水を出しただけです」


「違う」


ディートリヒは、低く言う。


「管理されていない希望を与えた」


レイナは、目を伏せた。


「それが、そんなに悪いことですか?」


「悪い」


即答。


「人は、希望があると動く。

動けば、統制が乱れる」


(本音、出た)


レイナは、静かに息を吸った。


「……あの子も、乱れですか?」


「誰?」


「水を喜んでた女の子です」


ディートリヒは、言葉に詰まった。


「彼女の家、

許可が下りるまで何年かかります?」


沈黙。


「その間、喉が渇いても?」


「……」


「それが、王国の秩序ですか?」


ディートリヒは、目を逸らした。


「君は……」


「善意だけで、世界を回そうとするな」


レイナは、少し笑った。


「善意じゃありません」


「?」


「合理性です」


顔を上げる。


「困ってる人を助けた方が、

結果的に安定します」


「……理想論だ」


「いいえ」


レイナは、はっきり言った。


「王国が“証明してないだけ”です」


その夜。


レイナは、拘束を解かれた。


「条件付きだ」


ディートリヒは言う。


「今後、王都を離れるな」

「説明書の追加配布は禁止」


「従わなければ?」


「次は、正式な罪になる」


(……甘い)


レイナは、内心で思った。


(もう、遅い)


部屋を出るとき、振り返る。


「一つだけ、忠告しておきます」


「何だ」


「人は、便利さを知ると戻れません」


「……」


「禁止すればするほど、

地下に潜るだけです」


返事はなかった。


その頃。


王国の別の場所で。


粗末な工房に、数人の男と女が集まっていた。


机の上には、同じ図面。


「……作れた」


「うちの村でも、水が出た」


「管理局には、黙っておけ」


「当たり前だ」


誰かが、笑った。


「――先生、すげぇな」


その“先生”は、そこにはいない。


だが。


彼女の知識は、

すでに王国の手を離れていた。


魔力ゼロの少女は、

知らぬ間に“止められない存在”になりつつあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ