表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロと追放された私、なぜか王国の魔法を全部書き換えてしまいました  作者: 和三盆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/10

第3話「王国は、気づき始めている」

王都・王立魔法学院。


白い大理石の会議室で、三人の教官が眉を寄せていた。


「……おかしい」


そう口火を切ったのは、初老の魔法理論教師だった。


「辺境のリーネ村から上がってきた報告だ。

“魔力を使わない水供給装置が稼働している”とある」


「冗談でしょう」


若い教官が鼻で笑う。


「魔力なしで魔道具が動くなど、理論上ありえません」


「だが、報告は三件。しかも別々の経路からだ」


部屋の空気が、わずかに張りつめた。


「……その村に送った追放者が一人いたはずだ」


沈黙。


全員が同じ名前を思い出していた。


「レイナ・アル=サン。魔力測定、ゼロ」


「まさか――」


「“まさか”だ」


老教師は、机の上の書類を指で叩いた。


「魔力がない者が、魔法を否定するような成果を出している。

もし事実なら――」


その先は、誰も口にしなかった。


王国の魔法体系そのものが、揺らぐ。


同じ頃。


リーネ村では、ちょっとした騒ぎになっていた。


「レイナちゃん! あの道具、もう一つ作れないか!?」

「畑の方にも水が欲しくてな!」


レイナは、両手を振っていた。


「ま、待ってください! 一度に全部は無理です!」


倉庫の前には、村人たちが集まっている。

昨日まで“魔法も使えない厄介者”を見る目だったのが、

今日は完全に違っていた。


期待。

信頼。

そして、遠慮のない要求。


(……これはこれで大変だな)


レイナは苦笑しつつ、頭を切り替える。


「順番にやりましょう。

まずは“壊れにくくする”ところからです」


「おお! さすがだ!」


何が“さすが”なのか、誰も分かっていない。

でも、それでいい。


レイナは道具を手に取りながら考えていた。


(私がやってることは、別に特別じゃない)


(仕組みを見て、無駄を省いて、再現できる形にするだけ)


前世では、それを“改善”と呼んでいた。


「……あ」


ふと、嫌な予感がよぎる。


(これ、広まるの早すぎない?)


便利なものは、必ず拡散する。

そして、必ず誰かの利権に触れる。


その日の夕方。


村長が、珍しく硬い顔でレイナを呼んだ。


「王都から、視察官が来るそうじゃ」


「……え?」


「名目は“辺境支援”だがのう……」


村長は言葉を濁した。


「お前さんの噂が、届いたんじゃろ」


レイナは、静かに息を吐いた。


(やっぱり)


(来るよね。そりゃ)


逃げることもできる。

村人に黙って、別の土地へ行くことも。


でも。


レイナは、村の外に広がる畑を見た。

昨日よりも、少しだけ青々としている。


「……逃げません」


「レイナ?」


「説明すればいいだけです」


にこり、と微笑む。


「私、悪いことは何もしてないので」


その夜。


レイナは机に向かい、紙に図を書いていた。


魔法陣。

構造。

誰が見ても分かるように。


(もし取り上げられるなら)


(せめて、“誰でも再現できる形”で残す)


独占されるくらいなら、

最初から“共有”する。


それが、一番効率がいい。


――そして数日後。


王都から来た視察官の馬車が、

リーネ村の門をくぐった。


その馬車には、王国の紋章。


レイナは、それを見つめながら小さく呟く。


「……さて」


「次は、“説明フェーズ”か」


魔力ゼロの少女は、

ついに“王国そのもの”と向き合うことになる。


それが、

取り返しのつかない分岐点だとも知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ