表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロと追放された私、なぜか王国の魔法を全部書き換えてしまいました  作者: 和三盆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/30

第29話「それでも、残る問い」

奪う者はいなくなった。


恐怖を煽る者も、

差を売る者も、

武力で縛ろうとする者も。


少なくとも、

表舞台からは消えた。


世界は、

静かだった。


「……平和だな」


カイが、窓の外を見て言う。


「はい」


レイナは、書類から顔を上げる。


「少なくとも、

表面上は」


一年。


選択制導入から、ちょうど一年が経った。


最終報告が、まとめられている。


【年次報告】

技術継続地域:事故ゼロ

部分導入地域:軽微な障害二件

停止地域:大規模災害なし


死亡事故:ゼロ


数字は、穏やかだった。


「……乗り越えた、のか?」


カイが、ぽつりと言う。


レイナは、すぐには答えなかった。


その夜。


王都中央広場。


一年の報告会。


群衆は、以前より落ち着いている。


怒号も、熱狂もない。


「……では」


レイナは、壇上に立つ。


「一年の結果を、報告します」


数字を、淡々と読み上げる。


成果も。

失敗も。


隠さない。


「そして」


レイナは、言葉を区切った。


「ここで、問います」


「続けますか?」


ざわめき。


「技術を」

「選択制を」

「このやり方を」


「完璧ではありません」

「安全でもありません」


「でも」


「やめることも、できます」


沈黙。


長い、長い沈黙。


やがて。


前列にいた老人が、立ち上がった。


「……わしは」


声は、震えている。


「止めた村の者だ」


「不便だが」


「自分で決めた」


「それは」


少し、間を置く。


「悪くなかった」


別の声。


「うちは、続ける」


「怖いけど」

「守れるものもある」


声が、重なる。


大きくはない。


だが。


確実に。


レイナは、目を閉じた。


(決まった)


誰かの命令ではない。

誰かの理屈でもない。


それぞれの言葉で。


報告会が終わった後。


カイが、隣に立つ。


「……終わったな」


「いいえ」


レイナは、微笑んだ。


「始まったんです」


「何が?」


「“普通”が」


「まだ、怖くないか?」


カイの問い。


レイナは、少し考えた。


「怖いです」


正直に答える。


「また、事故が起きるかもしれない」

「間違えるかもしれない」


「でも」


夜空を見上げる。


「間違えたら」


「また、選び直せます」


魔力ゼロの少女は、

奇跡を起こさなかった。


世界を救いもしなかった。


ただ。


問い続ける仕組みを、残した。


完璧ではない社会。

分かれた未来。

消えない不安。


それでも。


選ぶことを、やめない。


それが、この世界の答えだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ