表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロと追放された私、なぜか王国の魔法を全部書き換えてしまいました  作者: 和三盆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/30

第18話「正しい顔をした敵」

それは、あまりにも“模範的”な報告だった。


【改善報告】

東部交易都市・リュネ

通信装置の導入により商取引効率が向上

税収増加率:前月比一二%

事故・トラブル:なし


「……優等生すぎる」


レイナは、資料を閉じた。


「ですよね」


カイが、同じページを見ながら言う。


「ここ、ここ」


指を指す。


「“事故なし”が、三か月連続」


「普通、ありえません」


(人が使ってる限り、ゼロは出ない)


「しかも」


レイナは、別の紙を重ねた。


「通信内容の公開範囲が、

“要約のみ”になってる」


「……公開はしてる、って顔か」


「はい」


レイナは、静かにうなずいた。


「ルールは守ってる」


「だから、厄介です」


臨時評議会。


今回の議題は、リュネの成功事例。


「見ての通りだ」


商業派の代表が、胸を張る。


「技術は、経済を活性化させる」

「我々は、正しく使っている」


「反論は?」


ディートリヒが、レイナを見る。


レイナは、すぐには答えなかった。


(ここで感情的になると、負ける)


「……質問があります」


「どうぞ」


「通信装置」


レイナは、穏やかに言った。


「誰が、管理していますか?」


商業派の代表は、即答した。


「我々の組合だ」


「市民は?」


「要約を、掲示板で見られる」


「原文は?」


「……必要ない」


(出た)


「必要かどうかは」


レイナは、声のトーンを変えずに続ける。


「誰が、決めていますか?」


一瞬、沈黙。


「……我々だ」


「なぜ?」


「混乱を防ぐためだ」


「“混乱”とは?」


「誤解だ」

「不安だ」

「根拠のない噂だ」


レイナは、深く息を吸った。


「なるほど」


「つまり」


レイナは、円卓を見回した。


「事故も、違反も、

“起きていない”のではなく」


「外に出ていないだけですね」


ざわめき。


商業派の代表が、顔をしかめる。


「言いがかりだ」


「証拠は?」


「あります」


レイナは、紙を一枚出した。


「地方からの匿名報告です」


・取引条件の一方的変更

・通信記録へのアクセス拒否

・“非協力的”な商人への排除圧力


「……これは」


「通信技術を使った、

新しい形の独占です」


「王国でも、地方でもない」


「正しさの顔をした支配」


「馬鹿な!」


商業派が声を荒げる。


「我々は、合法だ!」


「合意も、守っている!」


「はい」


レイナは、うなずいた。


「だから、ここにいます」


「壊しに来たわけじゃない」


「“ルールの穴”を、

一緒に塞ぎに来ました」


「……どうやって?」


レイナは、少しだけ間を置いた。


「通信装置の原文アクセス権」


「“閲覧のみ”を、

全利用者に付与します」


「編集・削除は、不可」


「……商機密が――」


「隠したいなら」


レイナは、静かに言った。


「通信を使わないでください」


凍りつく空気。


ディートリヒが、低く唸る。


「……強いな」


「ええ」


レイナは、頷く。


「でも」


「これは、懲罰じゃありません」


「選択です」


「透明で続けるか」

「独占を捨てるか」


「どちらも、合法です」


商業派の代表は、唇を噛みしめた。


(……ここまで見られていたか)


数日後。


リュネの通信掲示板が、更新された。


――原文閲覧、解禁。


最初は、混乱した。


だが。


「……あれ?」

「条件、書いてあるのと違わない?」


「じゃあ、交渉しよう」


噂が、話し合いに変わる。


排除は、成立しなくなった。


夜。


レイナは、灯りの落ちた部屋で一人、考えていた。


(善意だけじゃ、足りない)


(悪意だけでも、説明できない)


「……賢い敵だったな」


背後で、カイが言う。


「はい」


レイナは、うなずく。


「だから」


「こちらも、

“賢くなり続ける”しかありません」


窓の外。


王都の灯りは、以前よりも多い。


魔力ゼロの少女は、

“正しい顔をした敵”を、排除しなかった。


仕組みの中で、力を失わせた。


戦いは、もう派手ではない。


だが、確実に。


世界は、

「説明できない支配」を拒み始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ