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魔力ゼロと追放された私、なぜか王国の魔法を全部書き換えてしまいました  作者: 和三盆


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第17話「最初の違反」

それは、合意から十七日後だった。


技術評議会の公開議事録に、

一件の報告が上がった。


【事故報告】

西部地方・ガルム村

水装置の改造による過剰出水

家屋一棟、半壊


レイナは、その文面を静かに読んでいた。


(……来たか)


評議会の臨時会合。


円卓を囲む顔ぶれは、

以前よりも多い。


地方代表。

王国官僚。

職人。

研究者。


そして――

軍部の文官もいた。


「これは、明確な違反だ」


軍部の文官が、すぐに口を開く。


「未検証の改造」

「報告義務違反」


「合意文書第七条に基づき、

当該技術の一時停止を――」


「待ってください」


レイナは、即座に言った。


「“一時停止”は、

協議の結果として行うものです」


「今は、協議の最中です」


空気が、ぴんと張る。


「だが、危険が出たのは事実だ!」


官僚の一人が声を荒げる。


「これを放置すれば、

“やはり危険だった”と世論が――」


「世論、ですか」


レイナは、冷静に返した。


「それは、“隠したとき”に暴れます」


「今回は、違います」


指で、報告書を軽く叩く。


「事故は、公開された」

「原因も、公開された」


「被害者は?」


地方代表が答える。


「村人全員で、復旧中です」


「隠していません」


沈黙。


「……では、どうする」


軍部の文官が、低く問う。


レイナは、深く息を吸った。


「三つ、やります」


指を一本立てる。


「第一に」


「改造内容を、完全公開」


「“何が悪かったか”を、

誰でも分かる形にする」


二本目。


「第二に」


「ガルム村の復旧を、

評議会全体で支援」


「王国も、地方も、同じ立場で」


三本目。


「第三に」


一瞬、間を置く。


「……罰を与えます」


ざわめき。


「罰?」


「はい」


レイナは、はっきり言った。


「装置を作った個人ではありません」


「“説明を省いた工程”に対してです」


「どういう意味だ?」


「簡単です」


「改造を行う際、

“説明資料の提出”を義務化します」


「しなければ、

評議会の支援は受けられない」


「……禁止ではない、のか」


「禁止しません」


レイナは、首を振る。


「挑戦は、止めません」


「ただ」


「無視した結果は、

自分たちで背負ってもらいます」


会議室が、静まり返った。


「……それでは」


軍部の文官が、ゆっくり言う。


「抑止にならない」


「いいえ」


レイナは、まっすぐに返す。


「一番、効きます」


「王国が罰するより」


「“仲間から支援されない”方が」


誰も、すぐには反論できなかった。


ディートリヒが、目を閉じる。


(……巧妙だ)


(力で縛らず、関係で縛る)


数日後。


ガルム村。


レイナは、現地に立っていた。


壊れた家屋。

それでも、動いている水装置。


「……怒られに来た?」


村人が、不安そうに聞く。


「いいえ」


レイナは、首を振った。


「一緒に直しに来ました」


「え?」


「失敗は、共有します」


「成功だけ、独り占めしない」


村人たちは、しばらく黙っていた。


やがて。


「……じゃあ、次は聞く」


そう言って、工具を持った。


その夜。


評議会の記録が、更新された。


【対応結果】

技術停止なし

改造指針の追加

地方復旧支援完了


王都の管理局で、その記録を見た官僚が呟く。


「……止まらなかったな」


別の者が、答える。


「止めなかったんだ」


沈黙。


「……これが、ルールか」


馬車の中。


カイが、ぽつりと言った。


「……甘いって、言われるぞ」


「はい」


レイナは、うなずく。


「でも」


窓の外を見る。


「“間違えても終わらない”って分かったら」


「人は、学びます」


「一回で、完璧にはなりません」


「王国も、同じです」


カイは、小さく笑った。


「……一番、面倒なやり方だな」


「ええ」


レイナも、同じように笑った。


「だから」


「長持ちします」


魔力ゼロの少女は、

最初の違反を、罰で終わらせなかった。


それは、弱さではない。


壊れない仕組みを、実際に動かした証明だった。


世界は、少しだけ賢くなった。


その分、

もう後戻りはできない。

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