表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/13

初めての家改装、図書室を作ろう!

 翌朝、目が覚めると――枕元に淡い光が浮かんでいた。


「……おはよう、ノア」


『うん、おはよう。ユウ』


 昨日の出来事が夢じゃなかったことに、改めて驚かされる。まさか自分の家に精霊が宿っていて、その精霊が目覚め、名前までつけたなんて。


 けれど、ノアの光は確かにそこにあって、静かに俺の目覚めを待っていた。


「なあ、ノア。昨日言ってた、家を育てるって、具体的にどうすればいいんだ?」


『部屋の構造を変えたり、魔力を通したり、家具や本を集めたり……うん。いろんなことができるよ』


「魔力って、そんな簡単に通せるもんじゃないだろ。俺、魔法適性ないし……」


『ユウの想いがあれば、十分。特に、本や知識は、この家にとってすごく大事なの』


「本……か」


 俺は、立ち上がってボロ家の中を見回した。


 埃まみれの棚、空っぽの壁。見るからに寂しい。


 でも、少しずつなら――変えられる気がした。


「よし。まずは図書室だな。知識を得られる部屋があれば、俺も少しは強くなれるかもしれない」


『いいね、図書室!』


「……いや、テンション高くない?」


『うれしいんだもん。ユウがこの家を、育てたいって言ってくれたから』


 そう言われると、なんだか背筋が伸びる。


 というわけで、その日俺は、さっそくギルドへ向かった。


 目的は、「古本回収クエスト」。街の倉庫や個人宅からいらなくなった本を引き取ってくるという、実に地味な内容だ。だが、報酬はそこそこ。そして、俺にとっては必要な資材でもある。


「よう、またお前か。……今度は何だ?」


 いつも不機嫌そうなギルドマスターが眉をしかめる。が、俺の説明を聞くと、意外そうな顔をした。


「図書室だぁ? ……お前、家に魔導設備でも仕込んでるのか?」


「そういうの……に近いかもしれません」


 言葉を濁したが、実際に家が、魔力を持っているのは事実だ。


 マスターは小さく鼻を鳴らすと、いくつかの回収依頼をまとめて俺に渡してくれた。


「物好きな金持ちが捨てる魔導書が混じってる。燃やすよりゃマシだ。持ってけ」


「ありがとうございます!」


 いざ、回収開始。俺は手押し車を借りて、街中を駆け回った。


 古びた日記帳、使い込まれた魔術指南書、黄ばんだ絵本――内容は玉石混交だが、どれも「知識」という意味では立派な資材だ。


 帰宅して、ノアに報告すると、彼女の光がわずかに明るくなった気がした。


『これだけ集まれば、図書室Lv1を起動できる』


「起動?」


『うん。私の魔力を使って、家の空間を変換する。ここに、本を収めて……こう!』


 ノアが光を発すると、家の奥にあった物置部屋の扉が、ふっと音を立てて変化した。鈍い木材が、深い色合いの扉へと変わる。


 おそるおそる開けると、そこには――


 本棚が並び、魔導ランプの灯る静かな空間が広がっていた。


「これが……俺の、図書室……!」


 椅子と机も備えつけられていて、まるで図書館の一角のようだ。


 部屋の空気が変わった。魔力が流れている。家の一部が、本当に生きていると実感できる。


『これで、ユウは本から知識を得られるようになる。スキルや戦術、過去の冒険者たちの記録……いろんな情報が、君の中に入る』


「すげぇ……これが、家を育てるってことなのか」


『うん。そして、私も一緒に育っていく。もっと話せるようになって、もっと……形を持てるようになる』


 ノアの声が、少しだけ嬉しそうに聞こえた。


 そうだ。この家には、ただ住むだけじゃない、もっと大きな価値がある。


 帰る場所ってだけじゃない。ここは、俺を強くしてくれる拠点になる。


「ノア、俺……やってみるよ。この家を、お前を……全力で育ててみせる」


『うん。私も、ユウを強くする。だから、また一緒に頑張ろう』


 淡く揺れる光球が、俺の胸元に寄り添ってくる。


 静かな図書室の空気の中――新しい日常が、確かに始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ