(番外編)初めてのおべんとう
今日は、特別な日だ。
ユウが朝、出発前に言っていた。
「今日の依頼、少し遠くてな。戻るのは夕方になるかも」
そう言って、笑ったあと。
「……あ、でも昼は食べる時間あると思うから。弁当とか、あると助かるな。あったら、だけど」
あったらって言ったけど、私は聞き逃さなかった。
ユウが――私が作った弁当を、食べたいって思ってくれたんだ。
それだけで、胸の奥がふわっとあったかくなった。
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「よし……!」
私は小さなエプロンを身に着けると、キッチンに立つ。
リスの姿じゃなく、今の私はちゃんと手がある。動けるからだがある。
それだけで、料理は――楽しい。
「おにぎりって、こうやって……えい、ぎゅっ……あ、つぶれちゃった……」
失敗しても、平気。だって、ユウは「次は頑張ろう」って、きっと笑ってくれるから。
パンも焼いてみる。昨日、リンが教えてくれた「焦がさない方法」を思い出して、魔力炎の温度を調整する。
「焼けた……! ちゃんと、パンのにおいがする……!」
リンに頼んでおいたベーコンも、小さく切って炒めて、サンドイッチに挟んでみる。
デザートは、冷たいジュレと、庭で採れた赤い実。
……うん、これなら――きっと喜んでくれる。
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弁当箱に詰めてリボンで包んだ。
魔力保温の術式もちゃんとかけた。昼まであったかいはず。
「よし、できたっ!」
私は玄関に走っていって、ちょうど出発しようとしていたユウに手渡した。
「これっ!」
「ん? ああ……これ、弁当? お前が?」
ユウが驚いたように目を見開く。
「う、うん……朝から頑張ったの。食べてくれる?」
自信は、まだなかった。でも、ユウは言ってくれた。
「もちろん……楽しみにしてるな」
そして、笑ってくれた。
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夕方。
「ただいまー……!」
ユウが帰ってきた。私は玄関まで走っていく。
「ユウっ! お弁当、どうだった?」
ユウは、少し頬を赤くしながら、照れたように言った。
「……うまかった。特にサンドイッチ。あと、おにぎりも。あんなにうまいの、食べたの初めてだったかもしれない」
「ほんと……?」
「ああ。明日も頼みたいくらいだ」
その言葉が、何よりもうれしかった。
私は精霊だ。
だけど、ユウの家で――暮らすことが、ちゃんとできてる。
そして、ユウの「帰る場所」を、私がつくれてる。
だから、また明日もがんばろう。
だって、私のだいすきな人のために――




