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(番外編)初めてのおべんとう

 今日は、特別な日だ。


 ユウが朝、出発前に言っていた。


「今日の依頼、少し遠くてな。戻るのは夕方になるかも」


 そう言って、笑ったあと。


「……あ、でも昼は食べる時間あると思うから。弁当とか、あると助かるな。あったら、だけど」


 あったらって言ったけど、私は聞き逃さなかった。


 ユウが――私が作った弁当を、食べたいって思ってくれたんだ。


 それだけで、胸の奥がふわっとあったかくなった。


====


「よし……!」


 私は小さなエプロンを身に着けると、キッチンに立つ。


 リスの姿じゃなく、今の私はちゃんと手がある。動けるからだがある。


 それだけで、料理は――楽しい。


「おにぎりって、こうやって……えい、ぎゅっ……あ、つぶれちゃった……」


 失敗しても、平気。だって、ユウは「次は頑張ろう」って、きっと笑ってくれるから。


 パンも焼いてみる。昨日、リンが教えてくれた「焦がさない方法」を思い出して、魔力炎の温度を調整する。


「焼けた……! ちゃんと、パンのにおいがする……!」


 リンに頼んでおいたベーコンも、小さく切って炒めて、サンドイッチに挟んでみる。


 デザートは、冷たいジュレと、庭で採れた赤い実。


 ……うん、これなら――きっと喜んでくれる。


====


 弁当箱に詰めてリボンで包んだ。


 魔力保温の術式もちゃんとかけた。昼まであったかいはず。


「よし、できたっ!」


 私は玄関に走っていって、ちょうど出発しようとしていたユウに手渡した。


「これっ!」


「ん? ああ……これ、弁当? お前が?」


 ユウが驚いたように目を見開く。


「う、うん……朝から頑張ったの。食べてくれる?」


 自信は、まだなかった。でも、ユウは言ってくれた。


「もちろん……楽しみにしてるな」


 そして、笑ってくれた。


====


 夕方。


「ただいまー……!」


 ユウが帰ってきた。私は玄関まで走っていく。


「ユウっ! お弁当、どうだった?」


 ユウは、少し頬を赤くしながら、照れたように言った。


「……うまかった。特にサンドイッチ。あと、おにぎりも。あんなにうまいの、食べたの初めてだったかもしれない」


「ほんと……?」


「ああ。明日も頼みたいくらいだ」


 その言葉が、何よりもうれしかった。


 私は精霊だ。


 だけど、ユウの家で――暮らすことが、ちゃんとできてる。


 そして、ユウの「帰る場所」を、私がつくれてる。


 だから、また明日もがんばろう。


 だって、私のだいすきな人のために――


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