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スラング学園生徒会

ティアに生徒会室まで案内してもらった。スラング学園は銃火器製造のための工場や戦闘訓練場がある。


「会長、連れてきましたよ」

「ありがとうティア」


会長と呼ばれた少女は本来白色のセーラー服をカラースプレーでカラフルにしたものを着て、漆器のような黒髪で右目を隠している。露出した左目は鋭く、瞳は赤い。


「君が花音のにいさんか。私はスラング学園生徒会長高等部3年の西園寺(さいおんじ)バクだ。これからよろしく頼む」

「こちらこそ、よろしく」

「他の生徒会メンバーも紹介しよう。私の隣で本を読んでいるのが生徒会副会長高等部2年の森本(もりもと)レイカで、そこで銃を磨いているのが高等部2年の天月真白(あまつきましろ)だ」


森本レイカと紹介された少女はまるっぽい銀色の眼鏡をして、本の虫になっていた。ややピンクががった髪は顔の輪郭を隠すような髪型で、体が華奢なせいかセーラー服が大きく見える。

天月真白の方はショートヘアーに茶髪で、肌は日に焼けた褐色を覗かせて、懸命にスナイパーライフルをいじっている。彼女はスカートの下にスパッツを履いていつでも動けるようにしていた。


「2人とも挨拶したまえ」

「よろしく、にいさん……」


レイカかがか細い声でそう言った。


「よろしくな!にいさん」


真白は先ほどまでの真剣な表情から明るい少女の顔に戻して、元気よくそう言った。


「あの、3人とも志音さんは花音さんのにいさんですし、年上なので敬語を使いませんか?」


遠慮がちにティアは言ったが、他の3人はぽかんとした様子だった。


「私のことは好きに呼んで構わないよ。それに敬語じゃなくても気にしないから」

「さすが、にいさんだ。心が広いな。」

「ところで、なんだけど私に頼みたいことはあるかな?」


私は女学生を助けるために派遣されたわけだけど、実際の所あまりスラング学園には詳しくないので、何をすればいいのかわかっていない。


「ふむ、そうだな……特にはない。自由に過ごしてくれ」

「え、何にもないの。じゃあどうして私を受け入れたの?」

「学園総管理局から半年ほど前に受け入れ願いが来ていたのでな。花音からのお願いであれば私たちに断る理由はない。彼女はこの学校の英雄だからな」


花音が英雄だと言われているのはかつて妹はスラング学園に転向して、当時幅を利かせていた民間軍事会社トゥルップを牽制し、スラング学園内で銃火器の加工や製造をできるようにして、各学園とのコネクションを作り、この地域を豊かにしたからだ。


「しかし、自由にと言われても困るだろう。レイカどうするのがいい」

「この学園での立場を作るために生徒会顧問にするのがいいと思う」


レイカはバクに対してははっきりとした声で答えた。信頼関係ができているのだろう。


「なるほど、では真白は急ぎ、学園内チャットにてにいさんの生徒会顧問任命を発表してくれ、ティアはこれからの学園生活でにいさんが困らないように護衛兼世話係を頼んだ」

「わかった」「わかりました」

「では、にいさんまずは寝泊りする部屋へ案内しますね」

「ティアもにいさん呼びに変えるのだな」


バクが揶揄うような口調で言うと、ティアは顔を真っ赤にした。


「だめ……ですか?」

「もちろん、いいよ」

「えへへ、ありがとうございます」


生徒会室を出て、校舎から少し離れた建物に入り、そこの一室を使わせてもらうことになった。元々教室だったのか、隅の方に机椅子が積み重ねられている。

部屋にはベッドと冷蔵庫それから水道と大方必要なものは揃っていた。


「そういえば、生徒会の人達は授業は受けなくて平気なの?」

「はい、この学園のトップである生徒会は特別な組織なので、必要な場合は授業への欠席が認められています。先輩達はよくサボっていますけど」


困ったものですと腕を組むティアであるが、先輩達のことを悪く思ってほしくないのかすぐに色々とフォローの言葉を尽くしていた。


「みんなのことが好きなんだね」

「はい、クラスで浮いていた私を拾ってくれた人たちですから」


ティアは明るいし、クラスで浮くような人物には思えないけど。


「行きましょうか」

「うん」


それから体育館や職員室、工場を回って、色々と教えてもらった。教職員は大人であるが、ほとんどはここの卒業生だけど、中には男性教諭もいるらしい。


「知っていますか、私達女学生の特別な力は20歳になると全てではないですが、力を失ってしまいます」

「うん、もらった資料に書いてあったよ。運動能力は優れた人程度まで落ちてしまうって」

「はい、加えて特殊能力を持った人はその能力を失います」

「だから一番力を持った女学生が統治をしているんだよね」


ティアは頷いた。校舎を離れて部屋に戻るとティアは言葉を選びながら話しだした。


「花音さんがスラング学園を変えてくれたので、今は落ち着いていますが、男性のことが苦手な生徒もいます。なので、22時を超えてからの外出は控えた方がいいと思います。特に女性寮には近づかない方がいいです。もしも、外出したくなったら私に連絡してください。だからえっと、、、これが連絡先です」

「ありがとう、気をつけるね」


ティアの頬が少し赤くなっていた気がする。

確かにしばらくは夜間にはあんまり外出しない方がいいかもしれないな。


「ティアは明日授業に出るよね」

「えっと、それだとにいさんが困りますよね」

「そんなことないよ。どんな授業を受けているのか見てみたいな」

「私のを見るんですか?」

「あれ、だめだった?」

「そんなことはないですけど、ちょっと恥ずかしいです」

「じゃあ、生徒会室にでも行こうかな」


私が行くと授業参観みたくなって恥ずかしいのかな。ティアは断りずらそうだし、生徒会なら誰かいるかもしれない。


「やっぱり、来てください」

「でも……」

「いえ、にいさんの護衛兼世話役ですから」

「無理しないでね」

「全然、大丈夫です。明日の朝迎えに行きます」

「ありがとう」


ティアが帰ってから、花音からの手紙と一緒に入れられていたお守りを取り出した。

安全祈願と書かれたそれをスーツの胸ポケットに入れた。それからシャワーを浴びて、着替えてから資料を再び読んだ。これは学園総管理局を中心に書かれたものなので、スラング学園に関する記述は多くはなかった。花音の実績とトゥルップとのこと以外に気になったのは黒く塗りつぶされている箇所があることだ。今度、ももにでも聞いてみよう。

今日は明日に備えて、早めに眠りについた。





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