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学園総管理局臨時代表就任

22歳の春、1枚の手紙を持って、目隠しをされて船に乗った。


「もう、とってもいいですよ。雨宮志音(あまみやしおん)さん」


目隠しを外すと軍服と学ランの中間のような恰好をした少女がいた。彼女は私の肩くらいの身長で、幼げな顔に艶やかな金髪をボブくらいの長さにしている。最も目を引くのは肩からぶら下げている物騒な小銃だろう。


「初めまして、学園総管理局外務省の京極(きょうごく)もも17歳です。雨宮花音(あまみやかのん)さんのかねてからの指示でお迎えに参りました。花音さんのお兄さんなだけあってかっこいいですね」


家族以外の口から久しぶりに妹の名前を聞いた。これには妹が6年前に失踪した経緯がある。そんな妹から突然届いた手紙には指定された場所までの地図とお守りが封入されていた。


「花音は元気にしているかな?」

「花音さんは半年前に失踪しました」


ようやく会えると思っていた妹はまだ会えないみたいだ。それは悲しいことだけど、6年前に亡くなったと思っていた妹が半年前までは生きていたという事実がわかっただけで希望が持てる。


「そっか、でもありがとう。学園総管理局ってことは花音とも仲良くしてくれていたんだよね」

「いえいえ、仲良くだなんて、私はお世話になりっぱなしでしたよ。花音さんはみんなから慕われてましたから」

「兄として嬉しいよ」

「ところで、志音さんは学園都市クトルフや学園総管理局のことをどこまで知っていますか?」

「実は全然知らないんだ。手紙にも学園総管理局臨時代表をお願いしますくらいしか書いてなくて」


ももは困り顔をして頭を悩ませた。


「そうですね、では1度、甲板に行きましょう。そろそろ見えてくることだと思うので」


ももの後ろについて甲板に出ると、大きな島が見えた。島と言っても自然だらけというよりかは現代的な建物が並んでいる。


「あれが学園都市クトルフです。数十年前に落ちたフレイヤ隕石の影響によって女学生のみが進化を遂げた世界から秘匿された島です。詳しい歴史は後で資料を渡すので省きますが、その結果各学園がそれぞれの地域を治めています。そのトップに存在するのが学園総管理局です。ここは急速な発展もあって企業や他国が悪さを企んでいたこともあるので、女学生は銃火器の所持が一般的です」


フレイヤ隕石によって女学生が進化をして、この都市を治めている。そんなフィクションみたいな世界があるという事実に私は驚いた。

ももの身につける小銃の重さが急に実感を帯びた気がする。


「ところで私は何をすればいいのかな?」

「志音さんにはこれから各学園に訪れてもらいたいです」

「それだけ?」

「花音さんからそう伝えるように頼まれました。具体的なことは着いてからにしましょう」


学園都市クトルフに着いて辺りを見渡すと電車や車が走り、ビルには広告映像が投影されていた。

この辺りでは一番高い建物である学園総管理局に案内された。最上階までエレベーターで上がると学園総管理局代表室と書かれた部屋に着いた。ももがノックをして、部屋に入ると黒髪ロングヘアーの凛々しい顔をした少女が代表席に座っていた。当然それは雨宮花音ではなかった。


「どうして君がここに……」

「あれ、知り合いだったんですか?」

「ええ、少しね。ももこれが契約書、私はこの後の会見の準備をするから」

「はい、任せてください」


東雲奈央(しののめなお)は私たちを横切ってどこかへと行ってしまった。


「奈央さんのことご存じだったんですね」

「うん、以前色々あったんだ。それより、今は契約書を見せてもらえるかな」


契約書の内容は学園総管理局臨時代表として私がこれから各学園に向かいあらゆる生徒を助けるということだけ書いてあった。足りなすぎる情報量だけど、私は迷わずサインをした。


「奈央さんによる会見でこのことが正式発表されるので、スラング学園に向かいましょう」

「ついて来てくれるの?」

「はい、護衛もそうですが、色々と知っておいた方が良いことも多いので、これが先ほど話した学園都市クトルフの歴史資料です」

「ありがとう」


外に出て、スラング学園生きの電車に乗った。


「先ほどの資料を読んでいただくとわかると思うのですが、歴史的背景から学園総管理局は女学生のみ構成され、各学園への宋主権を主張し、各学園を管理・統治してきました。あくまで、あらゆる権利を付与しているという形を取っているだけで、各学園の判断に任されていますけど。そのせいか女学生の一部は大人、特に男性を見下す傾向のある人がいます。なので、志音さんが学園総管理局の臨時代表になることに反対する人がいるかもしれません。花音さんもこの状況を危惧していました。本来大人に頼ることが許される人たちが頼れる大人を知らずに大人になってしまうのはよくないことだと。だから、花音さんは志音さんにその大人になってほしいとのことです」

「教えてくれてありがとう。私はできることをしていくよ」


スラング学園に着くまで、私は出来る限り資料を読んだ。この都市の成り立ちには確かに多くの大人と女学生の対立があった。フレイヤ隕石の影響で進化した女学生は数発の銃弾程度では死なないほど頑丈になり、中には特殊能力を得る者もいるそうだ。


「志音さん連絡先を交換しましょう。知りたいことがあれば連絡してください」

「助かるよ」


それからしばらく電車に乗り続けて、スラング学園駅前についた。5分ほど歩いて、学園の前に行くと白色のセーラー服の女学生が待っていた。


「あなたが花音さんのにいさんですか!私、生徒会高等部1年の天使(てんし)ティアっていいます。これからよろしくお願いします」


彼女は青い目をキラキラと輝かせて、黒髪のポーニーテールを左右に揺らしながら挨拶をしてくれた。明るい見た目からは想像できないほど体は引き締まっている。そして、両太ももにレッグホルダーをつけて拳銃を装備していた。


「こちらこそよろしくね」

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