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明朝のスノードーム

思い出に酔っている。取り戻すことのできないものにばかり縋ってしまうのは何故なのでしょうか。

ごほうびシールがあっても心躍らない今日を生きていかないといけない。

 「ゆ」とか「ふ」とか「て」とか、書き方に癖の出るひらがなを君に似せて書くのは愛だと思います。

 訳のわからないまま羅列された英単語も君の声で再生すれば覚えられそうな気がした。覚えられない公式も手が進まない問題もアイスクリームのように本当はやさしく溶かしたいのに。どうしようもなさを連れ添って今日も今日とて劣等生。誰も知らないような解法を私が考え出したら見てくれるかな。

まだ今日を終わらせることができない。

「ボールペンの芯を替えるの、医療行為みたいで好きだよ」

って君が放課後に言うから。

どうしたって終わりがある青春に、どうしたって私たちだけの青春に、誰も踏み入れさせないわ。チュッパチャップスを咥えたまま現代文をするような夜に私は君をぼろぼろとなくしていくのかもしれない。

 黒板に「大好きです」って書いてきてしまったけど、それも届ける前に誰かに消されちゃった。想いなんて伝わらないまんまだねいつまで経ってもさあ?「好き」を確かに感じていたのにあの高鳴りだと思っていた心臓は恐怖でゆれていただけだったのかもしれない。好きが迷子だ。この感情が嘘だったなんてことはないのかもしれないけれど「好き」が「こわい」になったらそれはどんな公式になるの。憧れと、好きの違いが分からなくなっちゃったから君が責任持って教えてよ。

 チョーク雨音合奏会。先生が板書する音を聞いて雨だなあと思った。大雨と板書の音ってナイスコンビネーションだね。じめじめした教室と気怠げなクラスメイトのあの感じ、最高に青春じゃん。板書って愛なんだね。制服ってだけで見極められる世の中も体操服が香らす良い匂いも全部全部みんなが知ってる青春なんかじゃないから。と地獄を見ても今日を笑い合ってる。ほんとうはそんなやさしさがあれば良いの。良いのに。たとえば、嫉妬相手と想う相手の名前が同じ小説でとなり同士の章で存在してるという皮肉。たとえば、あの子は気に入られて、私はやさしさをもらえないという嫉妬。これも全部全部「青春」なんてきれいな言葉で片付けられればいいのに。マスクを外した顔でさえ非日常になるようなこんな世界なら内側ぐらい綺麗であればいいのに。

(隣に座ってるあの子は精神薬も通院費もいらず体が動かない日も文字が読めない日もなくて消えたいと願う夜もないなんてどう考えても不公平だよ。あの時あいつに殺されてればよかったな、あの日ちゃんと完遂できていたらよかったなと思う時は私にだってあります。君に分かりますか?と問うのは残酷ですね。ごめんね、これはヤケクソです。)

こんな夜はやさしくないね。

かといってやさしい夜はこわいです。すぐに壊れることを知っているから。

「いなくならないよね?」

そんな儚い声にずっと、ずっとずっと。

君が言いかけた言葉ですら、私は奥歯で殺してしまうのですね。

苦しまなくていいよ、の世界を私は知らない。微ゴスロリ風ワンピースで鉄棒前回り5回連続して内臓を痛めつけるような気持ち。何もかもが抗不安薬になってくれない。

 スクランブル交差点をみんなで全速力で走った速度を忘れられない。あの時、東京中の全ての風を切ったと思った。数十分後に訪れる地獄に向かって全速力に一直線なんて忘れちゃいたいのに。いつか、思い出を悪い思い出を上書きしてきれいきれいしようね。

 聴く音楽、動画、Twitter、どの周波数も合わずチグハグで苦しさが襲ってくる。溺れてるみたい。予備校に厚底ヒール履いて行くなどという青春。プリクラをしおり代わりにするって所謂あおいはるだよね。

バニラ味を食べる時だけちょっと息を止めるような、そんな拒絶反応も外から見たら分っかんないじゃん。

壊れる世界は今日も笑う。

 絶対に私宛じゃない曲が私宛にしか聞こえない夜が君にもありますか?

 「写真じゃなくて写真を撮る空間が好き、詩じゃなくて詩を書くほど相手を想ってる時間が好き」って夢の中の私が言ってた。たまには良いこと言うじゃんね。

 つらさも悲しみもはんぶんずっこしようよ。

 あの子に追いつきたくて、初めてレピピアルマリオを身に纏った日を今も覚えてる。足掻いてみたってあの子にはなれないのにね。

ほどけたリボンは私には戻せない。

また結んでくれる、なんてことはきっとないの。記憶だけのリボン結び

さよならじゃないよきっと。だから。

 金魚鉢の砂を眺められる人になりたい。夢うつつな、意識の朦朧とした中でそんなことを思った。

 「皆既月食いっしょに見ようね」ってあの子は誰かと約束したのかな。

 不可能こそ根を張って咲きはしないつぼみが月に縋っている。幻想つぼみ。咲くなんて嘘、春なんて嘘。

 愚痴すら聞いてもらえないコールドボタン。ドライヤーブロウで乾かす涙。夜が涙に変わる階調に君はなにを想う?いつかひそかに、思い出して笑い合いたい。いい言葉でしょ。ちゃんと「合い」ってしてるとこ、紛れもなくちゃんと「愛」だな。妄想ばかり上手くなってしまう今日に頭の中で君を創り出す。去る日染めるも黒花火。夏がここに居たよってアリバイに線香花火を使って。

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