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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

負けっぱなしのライオン

作者: カズ

 初めて負けた時の記憶は今でも鮮明に蘇る


 兄弟以外の子ライオンが2匹いて 一緒に遊びたくて近づいたら 牙を剥かれ 引っ掻かれそうになった 2匹は嘲笑うように去っていった


 初めて触れた悪意に固まって何も出来なくなった


 あれで僕の運命が決まったような気がする


 小さく産まれた僕


 授乳争いに負けて 満足にお乳が飲めず 体は小さいまま育った


 でもお母さんも他の兄弟も優しく あんな悪意をぶつけられたのは 初めてだった


 やがて子別れ一人立ち 


 他の群れに入ったが 体が小さい為 いつもヒエラルキーは1番下 残り物の骨ばかり噛じる生活


 その群れを出てサバンナを一人彷徨った


 「やぁ 君も一人なのかい?」声をかけられた


 五匹の若いライオンの集まり


 みんなそれぞれの群れで一番下 弱い者同士集まったそうだ


 そこで初めて僕は安らかな気持ちになれた


 みんな平等 餌も皆で分け合った 最初のうちは…


 やがて弱い者同士でも順位はでき 一番小さい僕がこき使われるようになる


 不満な態度をとる僕に 五匹は一斉に口撃してくる


「そういうとこだよ君は!」


 出た 「そういうとこだよ!」


 何処が悪いかハッキリ言わないくせに 分かれよ!とこちらに分かる事を強要する言葉


 何回目かなの「そういうとこだよ」を聞き 僕はその群れを後にした


 何日か放浪して ライオンの国にたどり着いた


 その国はこれから戦争が始まる所で 僕は無理やり徴兵され 小隊に放り込まれる


 小隊長に「また小さい新兵だな」とからかわれたが その後優しく歓迎すると言われた

 

 冗談じゃない!戦いなんてゴメンだ


 皆が寝しづまった頃逃げようとしたら「何処へ行く?」と穏やかな声がした


 その小隊長の目は真っ直ぐで 穏やかな声と相まって 僕は醜態をさらさずにすんだ


 「僕は…」「敵襲だ!」


 一気に戦場とかしあたり一面に唸り声と血臭が漂う


 固まって何も出来ない僕に敵の牙が喉に届く寸前…


 僕は白い世界にいた


 光溢れる世界 


 「おやおや小さいライオンが紛れ込んで来た」また小さい言われた


 光が集約すると、白いライオンが現れた 


 瞳も白く見えて無いように見えるが、視線はこちらにちゃんとあっている


 「あなたは神様ですか?」


「わしはライオンじゃよ」


 「ここは何処ですか?天国?」


 「天国ではないな わしはまだ死んどらんし」


 「僕はどうなったのでしょう」


 「知らん たまにお前みたいなのが突然現れ直ぐに消える」


 「わしは五百年ここで暮らしてる」


 「世の中の動きもここから感じとる事が出来る」


 「お前からは不満が感じとれる 何が不満なんじゃ」


 「僕は産まれてから負けてばかり 勝った事も無いし体も小さいから大きいライオンが怖い 臆病な自分が嫌なんです」


 「小さい蟻にも負けた事があります」


 「ほう、蟻に負けるとは珍しい どうやって負けたんじゃ?」


 「お腹が減って蟻を食べていたら 舌に激痛が走り 一匹の蟻が噛み付いていたんです 蟻を吐き出し僕は逃げました それ以来蟻は食べません 蟻にすら臆病になってしまったんです」


 「ほうほう ではお前は大きい病気になった事は?」


 「ありません」 


 「では大きい怪我をした事は?」


 「ありません」


 「それは臆病では無くお前が色々経験を積んで得た知識で危険に近付かず用心深くなったと言う事ではないか? 思慮深さであって臆病ではないのでは?」


 僕は首をふり「言葉を変えても、僕の怖がりは事実で変わりません」そういうとこだよと言ったライオンの事を思い出しました 


 口先で沢山の言葉を操っていたライオン


 「言葉遊びですり替えるのは、カッコ悪いと思います」


 「ホホホ、五百年のわしの叡智をカッコ悪いの一言でスルーするか わしもまだまだじゃな どれそろそろ時間かな」


 また光が溢れ目を瞑ったら誰かに呼ばれてる 


 目を開けると副隊長が僕を呼びながら体を揺すっていた


 「ああ目を覚まして良かった 死んだかと思ったぞ」


 「僕はどうなったんですか」


 「覚えてないのか?お前は五匹の敵を一人で倒したんだぞ いや~凄かった」




 「隊長はどうしたんですか?」


 「隊長は…お前を庇って敵の牙に…その後だお前が狂ったように敵を殺し始めたのは 隊長は戦いに向いてる人ではなかった」


 「まあ今はゆっくり休めよ英雄」そう言うと副隊長は他の

隊員の所に行った


 頭の中はグチャグチャだった


 あの白い世界


 僕を庇って死んだ隊長


 英雄


 冗談じゃない、英雄に祭り上げられるなんてゴメンだ 僕のせいで隊長が死んだ もうこの場所には居られない


 混乱してる戦場では誰にも咎められずに国を出る事が出来た 


 隊長は戦いに向いてる人ではなかった


 では隊長はどうやって生きれば良かったのだろう


 戦わず生きている生物などいない


 皆何かしらと戦って生きている


 では僕は これから 隊長を犠牲にした僕は これから あの真っ直ぐな瞳が今も僕を見続けている




  

 

 


 


 

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