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破滅予定の悪役令嬢ですが、なぜか執事が溺愛してきます  作者: 時岡継美


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(3)

 ◇◇◇


『結婚してください』

 オスカーからそのセリフを引き出したことに達成感を覚えながら

『はい。末永くよろしくおねがいします』

を選択する。

 夕日に染まるルーン岬をバックに、アデルとオスカーが口づけをかわした。

 

「オスカー! カッコよすぎぃ!」

 エンドロールが流れる画面を見つめながら、最後の場面を思い出してニマニマする。


 ドはまりしている乙女ゲーム、ハルアカの3周目が終わった。

 ヒロインのアデルは噂通り……いや、噂以上のハードモードで大変だった。


 学生時代のエピソードでは騎士を目指すがゆえにゲーム内での日々の訓練に時間を費やした。

 それなのにステータスパラメーターは少しずつしか上がらない。

 上がらないどころか、病気や怪我で逆に下がっていく始末。おまけに悪役令嬢ドリスの邪魔は入るし、さんざんだった。

 

 イージーモードのリリカとは大違いだ。

 でも後半の戦争の場面では、常にオスカーを支えている感じがすごくよかったと思う。

 戦場で互いのことが気になりつつも、そんな場合ではないと気持ちを押し殺す。

 なんとももどかしくなるやり取りが続き、戦争終結直後にオスカーからプロポーズされるのだ。


 ゲームを知り尽くしているはずのわたしでも、うんと時間と手間がかかった。

「感無量!」

 スマホを膝の上に置き、天井を仰ぎ見る。

 よく頑張った、わたし!


「でもなぁ……」

 心残りもある。

 絵の得意なわたしが今好んで描いているファンアートは、実は悪役令嬢ドリス・エーレンベルクだ。

 ドリスは愚かでわがままで利己的な悪役キャラだけれど、それがなんとも人間らしく感じたからだ。


 2周目でさいはめルートを選択して呪いアイテムを使ってみたら、ドリスの登場シーンがダイジェストで終わってしまった。

 ラクだったのは確かだが、なんだか味気なかった。

 3周目、アデルルートに苦戦しつついろんなことを試してみた。

 ドリスが死なずにオスカーと結ばれる「ドリスルート」がないものかと模索を繰り返し、ドリス×オスカーの甘々ファンアートをたくさんSNSに上げた。

 

 でも残念なことに、ドリスルートの手がかりは見つけられなかった。

「悪役令嬢は悪役のままかぁ……」

 立ち上がって部屋を出ようとした時、背後から声がした。


「ドリスちゃん! わたしたち、ずっ友だって約束したよね。だから早く……!」


 驚いて振り返る。

 今の声は、ハルアカのリリカの声だ。


 まさかエンドロールの後に続きが!?

 慌ててスマホの画面を覗いたわたしは、突然まばゆい白い光に包まれて――。



 ん? ここはどこだっけ?

 どうやらわたしはベッドに寝かされているらしい。

 首を横に向けると、オスカーがうたた寝をしていた。

 そんな姿も綺麗なのだから、わたしの愛しい人は反則がすぎる。


 あれ? どっちが夢?

 頭が混乱している。今のわたしはどっち……?


 起き上がろうとしたけど、力が入らない。

「……ぁ」

 オスカーを呼ぼうとしても、喉がカラカラで声もうまく出せない。


 それでも、オスカがハッと目を覚ました。

「ドリィ?」

 立ち上がったオスカーと目が合った。

「オ……」

 もう一度オスカーの名前を呼ぼうとして咳き込んでしまう。体のあちこちが痛い。


「ドリィ、無理しなくていい」

 オスカーが青灰の目に涙をためている。

「ありがとう。戻ってきてくれてありがとう、ドリィ」

 ぎゅうっと抱きしめられると、首筋にオスカーの涙の熱さを感じた。


 今は夕方だろうか。部屋から見える空は、茜色に染まっていた。

 


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