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破滅予定の悪役令嬢ですが、なぜか執事が溺愛してきます  作者: 時岡継美


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(3)

 青い小瓶。

 色も形状も、デビュタントの舞踏会で飲み物に混入していた媚薬が入っていた瓶と瓜ふたつではないか……!


 どういうこと? ドリスが持っていたのは毒ではなく媚薬だったってことかしら。

 アルトがそこで小瓶の中身を調べるようなシーンはなかったと記憶している。

 

 そしてゲームでは、ドリスの誕生日パーティー当日にミヒャエルが亡くなった。

『ミヒャエル様は本当にご病気だったのかしら?』

 ヒロインがオスカーへ語り掛ける選択肢にこのセリフが表示されたら、そこから一気にドリス追放劇へと向かう。


 ドリスが毒を持ち歩いていた――アルトがそう証言し、ミヒャエルを病死に見せかけて毒殺した線が濃厚となる。

 プレーヤーは何の疑問も抱かずに青い小瓶の中身が毒だったと思わされていただけだ。

 

 もしもあの中身が媚薬だったのなら……ドリスはそれをオスカーに盛るつもりだったのではないだろうか。

 ドリスはオスカーの気持ちがヒロインに向いていることに当然気付いていた。

 だからヒロインを毛嫌いしていじめていたのだから。

 

 オスカーとは形式上の婚約関係にあるだけで、彼からドリスへの愛情表現は一切ない。

「これで決着をつけるつもり」

 そう語ったドリスの狙いは、オスカーに媚薬を飲ませて既成事実を作ってしまうことだったのかもしれない。


 だからこそドリスは、オスカーたちに糾弾された時に、

「知らないわっ!」

と激しく抵抗したのだ。

 しかし日ごろから嘘ばかりついていた悪役令嬢の言い分に耳を傾ける者はいない。


「あなたを……愛してるの。オスカー!」

 ドリスの悲痛な叫びは、紛れもなく本心だったのだ。

 苦しんでいたのはドリスだって一緒だ。

 ヒロインと想い合っているオスカーの様子を何度となく見せつけられたのだから。

 そんな彼を、媚薬を使うような卑怯な真似をしてでも自分のもとにつなぎとめておきたかったのだろう。


 そこまで考えて、ふと気付いた。

 わたしは涙を流して泣いていたのだ。

「ドリス……。あなたって、不器用な人だったのね」

 

 頬を伝う涙を手で拭う。

 わたしの仮説が合っているとしたら、ハルアカのミヒャエルが死んだのはなぜだろうか。

 本当に病気だったのかそれとも別の理由があるのか……?

 


 ミヒャエルの熱が下がらないまま3日が過ぎた。

 わたしは心配で、学校を休んでつきっきりで看病している。

 侍医も毎日往診に来て熱冷ましの薬を出してくれる一方で、首を傾げている。

「なかなか熱が下がりませんね」

 

「本当にただの風邪でしょうか?」

「しばらく様子を見ましょう。徐々に良くなるはずです」


 さっき首傾げてたじゃない!

 そう思いながら帰る侍医を見送る。

 入れ違いに騎士団からの見舞いとしてアルトがやって来た。

 

「こんにちは!」

 人懐っこい笑顔を睨みつけてしまったのは許してほしい。

 だって、ハルアカではこの人が媚薬と毒を勘違いしたんだもの。それとも、勘違いではなくわざと……?

 この裏表の激しい性格なら、ドリスを追い落としてオスカーとヒロインをくっつけるためにそれぐらいのことをしてもおかしくない。


「なにしに来たの?」

「今日のドリスちゃん、なんだか僕に対するあたりが強くない?」


 アルトが戸惑っている。


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