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破滅予定の悪役令嬢ですが、なぜか執事が溺愛してきます  作者: 時岡継美


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(4)

「とにかく、キスしたことを絶対にパパには言わないでちょうだい」

 オスカーにそれだけは強く言った。

 

 もしもミヒャエルにバレてしまえば、間違いなく婚約一直線だ。

 それはマズい!


 そう思う一方で、どうマズいんだろうと訝る自分もいる。

 ずっとバグが続いているのかなんなのかは知らないけれど、ハルアカでは決してドリスに目を向けることのなかったオスカーが「好きだ」と言ってくれている。

 そして、いくら否定しようともわたしだって心のどこかでそれを嬉しいと思っているのに……?


 オスカーの婚約者になれば、シナリオの正規ルートに戻るのかもしれない。

 だとすれば、シナリオが予測不可能な方向に進んでいくよりは、元に戻るほうがマシな気もする。

 今のわたしであれば、オスカーに叩きだされても自力で孤児院まで辿り着いて保護してもらえるだろう。


 とりあえず屋敷の外にスケート靴を隠してある。


「わかってる、言わない。当分ふたりだけの秘密だ」

 甘く微笑むオスカーは何もわかっちゃいない。「ふたりだけの秘密」を喜んでいる節さえ垣間見える。


 ひとまず流れに身を任せて様子見することにした。



 2年前、最初にわたしが投資したシャミト山をはじめ、エーレンベルク伯爵家の投資事業は大きな利益を出し続けている。

 そしてミヒャエルは、わたしの提案通りフェイル山の開発事業に乗り出してくれた。

 あと半年もすれば金鉱脈が発見されるはずだ。


 ハルアカでのミヒャエルは、こういった優良投資先がなくどんどん損失が膨らんでいった。

 しかしローレンに偽の帳簿を見せられて利益が出ていると思い込んでいたのだ。

 最後はローレンにすべての財産を奪われて破産の一途をたどる。


 エーレンベルク伯爵家を破産に追いやるローレン・ビギナーが、今最も気を付けなければならない人物だ。

 わたしの目を盗んで、まだしつこくミヒャエルとコンタクトを取ろうとしているらしい。

「大丈夫。ドリィとオスカー以外は信用していないし、投資の話は独断で決めないよ」

 ミヒャエルはそう言うけれど、どこでどう足元を掬われるかわからない。


 さらにはリリカの親戚のように、我々が騙されないことで被害を被る羽目になっている貴族がほかにいるかもしれない。

 しかしそんなことは知ったこっちゃない。

 わたしは自分の命を脅かすものを徹底的に排除したいだけだ。


 バカンスシーズンが終わり冬が近づいてくると、もうルーン岬リゾートの業績不振が噂されるようになった。

 観光客が来ないとなると、どうしようもない。

 ハルアカではこのまま業績悪化の一途をただり、出資者の優待を自慢げにひけらかしていたドリスが恥をかくことになるのだ。

 ドリスはそれをミヒャエルに涙ながらに訴える。

 しかし馬鹿にされたところで、誰かに報復することはできない。学校ではよくある話だとミヒャエルはドリスをなだめる。

 そしてもう愛娘を泣かすようなことはすまいと決心し、損を取り戻そうとますます投資にのめり込むようになる。

 ローレンの搾取により、やればやるほど損失が膨らんでいくとも知らず。


 今回、わたしは破綻したルーン岬リゾートを丸ごと格安で買い叩くつもりでいる。

 いつその日が来てもいいように、投資で儲けたお金を貯めてきた。

 フェイル山の金鉱脈が見つかるのが先か、ルーン岬リゾートが破綻するのが先か。

 それによって反対される度合いが変わってくるだろう。


 それでもわたしは絶対に手に入れると決めているのだ。

 わたしと、ミヒャエルと、オジール王国を守るために。

 

 

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