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真夜中の創作、常夜灯  作者: ほんだきく
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犬は保育園に入っても怖かった。


怒りと悲しみを最初に覚えたのはおそらく、5歳の頃。

近所のA子ちゃんのお家に寄ったときだ。よく吠える柴犬がいて私はA子ちゃんのお家に入る事が出来なかった。が、この日は母親の横にぴったりついて門の中に入った。


母親がA子ちゃんのお母さんと何か話しているときに、柴犬が跳ね上がり私の肩に手を置いた。私は体が硬直して震えた声を出した。こらっ!と家の方から声が聞こえた時、目の前が真っ暗になった。瞼の向こうに血潮が見える。

母は慌てて私の手を引いていた。


家に帰ると小学校から帰っていた姉が迎えてくれた。私の顔を見るなり泣いてしまった。意味がわからなかった、私の目から私は見えない。


母は切迫した声で病院に電話を掛けていた。急いで病院に行き直ぐに診察台に乗せられて色んな人に体を押さえられた。

細い針が明かりの中で光っていた。


家に帰ると姉が泣いたまま布団の中から出てこなかった。私の顔には大袈裟に大きなガーゼが当てられていた。

頬の、目の下と口の横を噛まれたのだ。

幸い甘噛みで済んだため肉の欠損は無かった。

夕食時になって、父も母も「小さな傷でよかった」「大きくなったら気にならないから心配しなくていいからね」「あの柴犬は保健所に連れていくと言ってたよ」「女の子の顔を噛んだのだから仕方ないよね」といった。


うるさかった。

私は泣かないまま、いつも周りがうるさくて、私の感情が言葉になることは無い。


その頃保育園でキャンプファイアがあり、ガーゼを張ったままじっと座っていた。

読んで頂き、ありがとうございました。


Twitter、noteにも掲載しています。


作家名と常夜灯で検索+フォローして頂けたら幸いです。

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