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小説家になろうラジオ大賞投稿作品

1分後、星座になるあいつ

作者: 熱湯ピエロ

『1分後、星座になるあいつ』


 99.99%。

 何の確率か分かるだろうか。

 この数字が発表された時、皆同じ事を思った。


 科学の発展というのは、時に絶望を生むのだ、と。


 これは、最新の科学を駆使してはじき出された、566日後に巨大隕石が地球に直撃する確率。

 つまり、地球が滅ぶ確率だ。



 『あいつ』は空を見上げていた視線を、私に移した。


「まさか自分が映画の主人公と同じ立場になるとはね」


 『あいつ』は少し寂し気に、でも、胸を誇らしげに張った。


「直径2150kmの隕石をぶち壊す爆弾を持って俺は行く。音速の128倍で接近するソイツに確実に当てるための現地操作役だ。地球を救うヒーロー、ガキの頃からの夢が叶ったよ」


 そんなの、ならなくていい。


「あの映画では、主人公達は帰る手段があった。でも、俺には無い。だから、今日でお別れだ」


 嫌だ。嫌だ。嫌だ。


「ただ、映画と違う点はもう一つある。それは……」



 ……次のニュースです。

 地球に衝突予定であった隕石の破壊に成功したことを示す爆発光が、本日午後11時46分40秒から12分20秒間観測されます。

 各国政府はこのプロジェクトの成功をさせた宇宙飛行士チームの栄誉を称え、この光を『メシア座』として永久認定することに決定しました。

 尚、このプロジェクトには日本人である……



 これ、極秘だぜ。

 この作戦成功したら、何と俺達星座になるんだってよ。

 一つだけの光で星でもないのに、星座ってのが不思議な気分だよな。

 丁度、あそこらへんに光が現れるから、絶対見てくれよ。

 たった10分くらいだけどさ。

 俺がお前を助けたんだって、知らせるから。

 そこでずっと見守ってるって、教えるから。

 絶対、見てくれよ。



 もう涙は枯れ果てた。

 現在11時46分30秒。をちょっと過ぎた。


 腕時計から、顔を上げる。目の前には星空が広がっている。

 視界を遮るものは何もない。


 私は、0.01%の『あいつと一緒に生きる未来』に賭けたかった。

 あいつがいない未来など、私にとっては99.99%訪れただろう未来と、さほど変わりはしない。


 でも、今は、あいつがくれた時間だから。

 0.10光年先にいるはずの、あいつがくれた大切な時間。

 あいつの最後の光が、36日遅れで、ようやく今日、私の目に届く。


 1分後、あいつは星座になる。


【1分後、星座になるあいつ おわり】

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