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お前どう見ても聖女だよな?

 俺は王都から脱出した後きゅうを肩に乗せて北に向かう。


「きゅう♪」


 きゅうの機嫌はいい。


 俺の機嫌もいい。


 無事逃げ切った。


 達成感に満ちている。


 村人職の俺に勇者パーティーはきつすぎた。


 ストレスもないし最高だ。


「・・・・・気配がする。誰かが追われている!」


 盗賊か?


 俺は走った。


 1人の女性が5人の外套を着た怪しげな集団に追われている。


 女性は白いローブを着て、髪と瞳の色は薄紫。


 髪は肩まで伸びている。


 頭に猫耳と後ろに尻尾が見えた。


「助けてください!」


そう言って俺の陰に隠れる。


 その顔は、他国の聖女か。


 厄介ごと確定。


 5人が短剣構える。


 ほんと、俺の今までの上機嫌を返して欲しい。


 きゅうが肩から降り、大きくなり威嚇する。


「装備からして全員斥候ジョブか」


「なめるなよ!俺達は殺しの訓練を受けたプロだ!」


 斥候ジョブの戦闘力は剣士に比べて低い。


 馬鹿にされたと思ったのだろう。


「そういうもめごとは止めてくれ」


「後ろの女を引き渡したら助けてやる」


 リーダー格と思われる男が発言するが、嘘だな。


 俺もろとも殺す気だろ。


 目から殺気がダダ洩れだ。


「殺れ!」


 ほらな。しかし手のひら返しが早すぎないか?


 男の号令で4人の斥候が短剣を構えて突撃してくる。


 きゅうの狐火が1体を焼く。


 俺の攻撃魔術で1体を倒し、残りは腰の脇差で斬り倒した。


「ほお!すこしはやるようだな。だが俺はAランクのアサシンだ!他と一緒にするなよ」


 斥候からランクアップする事でアサシンになれるが、アサシンにランクアップすると戦闘力が大幅に上昇する。


 相手がナイフを二刀で構える。


「俺はノービス職だ」


「ははは!努力は認める!だがノービスはどんなに頑張ってもBランク止まりの雑魚!俺に勝てるわけがない!呪うなら才能の無い自分自身を呪え!Aランクの戦闘スキルに低ランクが勝てるわけがない!貴様に絶望を与えてやろう」


 アサシンが俺に斬りかかる。


 アサシンの剣戟を俺は脇差で防いだ。


「貴様!何故防げる!まさか!嘘をついたのか!」


 俺は全ステータスアップのスキルを持つことで能力を底上げしている。


 だが、こいつに言う必要は無い。


 それより致命的なのは、「お前疲れているな。諦めて帰れ!!」


 なんせ奴らは同じ斥候系のジョブで聖女を追って走って来たのだ。


 アサシンをよく見ると目の下にクマが出来、やつれている。


 睡眠不足で栄養不足か。


「帰ってよく食べてたっぷり眠れ」


 面倒ごとを持ち込むな!


「それは出来んな!それにお前を殺してすぐレッドムーンに帰らせてもらう!」


 レッドムーン、この国の東にある王国だな。


 他国から追って来たのならそりゃ疲れるだろう。


 俺はナイフを脇差で払う。


「バカな!貴様何者だ!?」


 ノービスって言ってるのに聞こえなかったのか?


 いや、言い方を変えよう。


「俺の剣術はBランクだ!」


「おかしい!Bランクの分際でAランクと打ち合えるはずがない!」


 そこに死角からきゅうの狐火が放たれる。


 アサシンはバックステップで後ろに下がった。


「貴様ああ!、2対1とは卑怯だぞ」


「後ろの聖女を5人がかりで殺そうとしてただろ!いまさら何を言っている!サンダー!ファイア!ブリザード!」


「きゅう!」

 きゅうが狐火を飛ばし、俺が攻撃魔術を叩きこむ。


 アサシンは最後のブリザードだけは避けきれず攻撃を食らう。


「貴様!近づいて正々堂々勝負しろ!」


「お前が言うな!スピードブースト!パワーブースト!ガードブースト!」


 俺が自身に補助魔術を使った隙を狙ってアサシンは突撃を仕掛ける。


 俺はアサシンを斬り倒した。


「俺が補助魔法を使う前から攻めきれなかったのに、なぜ突っ込んできた!?」


 え?バカなの?


 ふつう逃げるよな?


 いや、極限状態で疲れてたからか。


 睡眠と食事は大切だよな。


 後ろに隠れていた聖女が俺の前に立つ。


「ありがとう。助かったよ」


「・・・・・お前聖女だよな?新聞で顔を見たことがある。たしか東のレッドムーン王国の猫耳聖女」

 

 新聞で写真を見た時に、可愛かったから聖女の顔は覚えている。


「え?気のせいじゃない?」


 絶対聖女だろ。


 だが俺は大人、あまりしつこくは聞かないのだ。


「何故追われてたんだ?」


「えーと、山賊、かな?」


「・・・・・もし聖女なら王都に行けば匿ってもらえるぞ」


 いかんいかん。聖女の話をぶり返してしまった。


 失敗した。


「連れてってほしいよ」


 それは聖女だって認めるって事だよな?


「この国は聖女だからと権力闘争に巻き込まれる可能性は低い」


「ほんとに?でも、私ひとりじゃ怖いよ」


 聖女から腹の音が『ぐ~~~』と鳴る。


「何か食うか?」


「食べたいです」

 

 聖女の顔が赤くなり恥ずかしそうに俯いた。


 聖女、可愛いな。





 俺は薪を集め、きゅうも楽しそうに枝を咥えてくる。


 魔術で火をおこしストレージから食材などを取り出し、リンゴを聖女に渡す。


 聖女はしゃくしゃくとリンゴを食べた。


 頬が膨らんでリス可愛い。


「3日位あまり食べられなかったから助かるよ」


 食べられなくて思考が弱ってたんだな。


 スキレットで肉を焼きながら自己紹介をする。


「俺の名前はノーマ」


「ノーマ、いい名前だね」


 聖女の目は肉を焼くスキレットから離れない。


 俺は苦笑しつつコップに水魔術で水を入れてパンと一緒に渡す。


 聖女はもぐもぐと食べだした。






 聖女が食べ終わるまで会話は無かった。


「もうおなか一杯。もう食べられないよ」


 食事が終わると聖女はきゅうを抱っこして撫でる。


 きゅうはよく懐き、ミーアの膝でうっとりと目を閉じる。


 俺はきゅうを撫でる聖女の姿にドキッとする。


 その姿があまりにもきれいで目を奪われたのだ。


「これから王都に行くのか?俺は王命で北に行く」


 ・・・・・寝たか。


 いつもはテントを設置しないが、今日は設置しよう。





 聖女をテントに入れて毛布に包む。


 きゅうも一緒にテントに入れた。


 俺はテントの外で野宿だな。




 ◇





【次の日の昼前】


 聖女はまだ起きない。


 よっぽど疲れてたんだな。


 俺はスキレットにベーコンと卵とバケットを入れて焼いていく。


 バケットは焼くというより温める感じで調理した。


 きゅうがテントから出て食べ物をおねだりする。


 俺はきゅうの真上に熱していないベーコンを投げるときゅうが口でキャッチして食べる。


 聖女が起きてくる。


「いい匂いがするね」


 聖女の名前は確かミーア。


 試しに名前で呼んでカマをかけてみるか。


「ミーア、あと5分で出来るぞ」


「えへへ、楽しみだな」


 やっぱりミーアか。


 聖女じゃないか。


 たしか俺と同じ15才だったな。


 スキレットで食事をするミーアを見つめる。


 よく見ると座る時の姿勢は綺麗だし、食べ方にも品がある。


 しかもAランクのスキル持ちはかなり貴重だ。


 そんな人間に追われるって・・・・・。


 どう考えても聖女だ。


「聖女って事は言わない方が良いのか?」


 ミーアの顔が暗くなる。


「うん。あまり知られたくない」


レッドムーン王国にはミーアの他にも聖女が居る。色々ややこしい事情があったんだろう。


「だが、王都に行くなら王に助けを求めた方が安全だぞ」


「ノーマはどこに行くの?」


「俺は北に行く」


「私も連れてってほしいな」


「だが、この国の王都の方が狙われにくくて安全だと思うぞ」


「う~~~ん・・・・・もう政治には関わりたくないよ」


 ついてくるか王都に行くか迷ってるようだな。


 念を押しておこう。


「だが、死ぬかもしれない危険な旅だ。一緒に来るのは止めておいた方がいい」


「一緒に行くよ。私がついて行ったら迷惑かな?」


「こんな美人と一緒に旅が出来るなら楽しいだろうけど、俺はノービス職で強くは無いんだ。守り切る力は無いからそこが心配だ」


 ミーアの顔が少し赤くなる。


 俺も恥ずかしくなってきた。


 まずい!美人って言ってしまった!


 口説いてるみたいに思われたんじゃないか!?


 俺はミーアと一緒に居ると調子が崩れてしまう。


 ミーアが聖女だと思ってもあまり深く聞かないようにしようと思った。


 だがどうしてもミーアが聖女か気になってすぐ聞いてしまった。


 なんで俺はこんな行動を取ったんだ?


 俺の行動は矛盾している。


「連れてって」

 ミーアが手を差し出し俺はドキッとする。


 お互い顔を見つめられないまま俺はミーアの手を握った。

 


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