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賢者の策略

 勇者がサーベルベアに斬りかかる。


 後に続くように賢者とミントが魔物を倒して全滅させた。


 賢者が魔物をストレージに収納する。


「これで依頼終了ですね」


「そろそろノーマの顔でも見に行こうぜ」


 ミントの顔が笑顔に変わる。


「早く王都に帰りましょう!」


 そこに兵士がやってくる。


「勇者殿!王から新たな依頼が出されました」


 ミントの元気が無くなる。


「依頼内容を教えてください」


「1つは王都の東街道の盗賊討伐!2つ目は王都南部のブラックウルフ100体の討伐!3つ目は同じく王都南部のサーベルベア130体の討伐です!」


 賢者マギはジト目で兵士を見る。


「3件だけ?」


 依頼内容が多すぎる場合は、兵士側が配慮して依頼を小出しにする事があるのだ。


「本当は全部で9件あります!」


 危険な依頼はすべて勇者パーティーに依頼される。


 この事で兵の死亡率を下げる狙いもある。


「遠慮は、不要。次からは正直に言って」


 ミントの元気がさらに無くなった。





 ◇





 勇者パーティーは素早く依頼をこなしつつ、村で休む。


「おかしい。情報が正確すぎる」


「何がおかしいんだ?良い事じゃねーか」


「王都、優秀な斥候は少ない」


「あ!ノーマが斥候をしたんじゃないですか?」


「その通り、ノーマが斥候したなら、ノーマの呪いは完全に治ってる。ノーマは逃げる」


「おいおい、いくらノーマでもそこまではしねーだろ」


 マギはフルフルと首を横に振った。


「ノーマはパーティーを抜けたがってた。教会でのんびり生活して味を占めた」


「ノーマならうまく逃げそうですよ!すぐに戻りましょう」


「策を、打つ」


 賢者は素早く手紙を書いて王都に届けさせた。


「何を書いたんだ?」


「勇者パーティー権限で、Cランク以上の冒険者すべてを招集した。当然ノーマも含まれる」


「それならノーマも逃げられませんね」


「ノーマは優秀。抜けられたら、支障が出る」


「今でも依頼の達成が遅れています!私たちもすぐ王都に戻りましょう!」


「だが、王の依頼がたくさんあるぜ」


「大丈夫、物資補充の名目で一旦戻る。依頼が多いから、いくらでも言い訳できる」


「その間に私がノーマを探します」


 勇者パーティーは急いで支度をし、王都を目指す。





「今日はあの村に泊めさせてもらいましょう」


 王都に向かう途中の村に着くや否や村人が懇願してくる。


「勇者様!お願いだ!助けて欲しいだよ!このあたりに魔物がうろついてて、今月だけで3人殺されただよ!」


「分かった。明日この周りの魔物を討伐するぜ」


 勇者パーティーとしては良くある事ではあったが、ノーマを捕まえる為にすぐ王都に向かうことが出来なくなった。


「このままでは逃げられちゃいますよ」


「皆の命がかかっている。倒さないわけにはいかねーぜ」


「ここに居る皆、このままじゃ危険」


「そうですけど!このままじゃ逃げられちゃいますよ!」


「これが終わったらすぐ王都に向かう」


 勇者と賢者はみんなの命を優先する。


 たとえ自身が不幸になっても魔物を狩り続けるのだ。





 ◇





 勇者パーティーは3日間魔物狩りを続け王都を目指すが、徒歩の為、移動に時間がかかる。


「まずいです!このままじゃノーマに逃げられますよ!走りましょう」


「そうだが、走って疲れている時に魔物と遭遇するかもしれない。良くねーぜ。それにマギはもう疲れている」


 賢者は息切れを起こしている。


「ごめん、もう動けない」


 度重なる依頼に加え、魔術要員がマギだけになった為疲弊しているのだ。


 賢者マギの魔力は高いが体力は無い。


 勇者は賢者を抱き上げて移動を続けた。




 ◇





「やっと着きましたよ!私はノーマを見てきます」


 ミントは走って教会へと向かう。


「シスター!ノーマは居ますか?」


「さっき出かけましたよ」


「どこに行ったか分かりますか?」


「いえ、いつもどこに行くか言わない方ですから」


 ミントは急いでノーマの部屋に向かう。


「居ません!」


 クローゼットの中もすべて探すが見つからない。


 ミントは慌てて勇者の元に戻る。


「ノーマが出かけてて教会に居ません!」


「逃げられた。かも」


「そんな!王都を探してきます」


 ミントは1日走り回るが、ノーマを見つける事は出来なかった。

 

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