俺は絶対に逃げ切る
この話で1章は終わりです。
起きるとミーアが俺に抱き着いていた。
俺もミーアも全裸だ。
「これは夢か?」
「心配したよ!回復魔術をかけても良くならないから」
「どういう事?」
俺の体は大丈夫だけどミーアの体の方が気になるわけで。
服を来てないし、目が行ってしまう。
「体が冷たかったから心配したよ」
そういう事か。
部屋は暖められ、ミーアも体で俺を温めてくれた。
「食事を取らずに戦って終わったらそのまま食べずに寝たからな」
痩せたかもしれないが、それだけで苦しくはない。
「食事を持ってくるよ」
ミーアが1階に下りて行こうとする。
「服!服を着てくれ!」
「そ、そうだね」
俺が居る前で大事な部分を隠しながら着替えるが、着替える姿を見てしまう。
ミーアが食事を作りに降りていく。
「柔らかかった」
『青春だね』
「びっくりした!お前の紋章を消し忘れていた」
『ま、待ってよ!ごめん!怒らないで消さないで!』
「なんだよ」
『紋章を消されたら話が出来なくなるよ。もうさみしいのは嫌なんだ!僕は役に立つよ』
「本当か?」
『疑ってるね。いろいろ情報があるんだ。君が寝ている間にサンライトと話をしたけど、君が王都に行くのは避けられないよ』
「行きたくない。犯罪者を王都に送った時はなんとか手紙だけで用事を済ませてすぐ帰ったけど、王か勇者パーティーがらみの話になるだろ?」
『ミーアの聖女の事もあるよ。だからミーアを連れて行くしかないよ。でもね、行くしかないなら状況を変える方向で努力すべきだよ』
「聖剣ムーンライトの他の持ち主を探すとかか?」
『僕は君がいいよ』
聖剣に選ばれれば英雄扱いになる。
誰かに押し付け、いや、託すことで俺は英雄じゃなくなる。
そうやってはしごを1つ1つ外してうまくいくよう努力するか。
聖剣ムーンライト、良い事言うな。
『よからぬことを考えてないかい?』
「気のせいだ。それにもし俺以外に相性がいい人間が居たらどうだ?」
『中々いないから考えても無駄さ』
「でも探すだけ探してみるぞ。ノービスの俺には荷が重い」
『僕が嫌かい?』
悲しそうな声で言うなよ。
「聖剣に選ばれれば英雄扱いになるのが嫌なんだ。お前が嫌とかではないぞ」
『良かったよ。スーパーノービスを低く見るのはよくないよ。君はもっと強くなれるよ』
「強くなるのはいいが、強くなるなら周りにばれないように強くなりたい」
『案を考えておくよ』
「そろそろ紋章を消すぞ」
『ま、待って待って!ミーアが君に抱き着いて寝ていた時の事を教えるよ。君が起きた時より寝ている時の方がもっときわどい事になっていたんだ』
気になる。
『知りたいよね?』
「そうだな」
『だったら紋章を消さないって約束して欲しいんだ』
「それは、厳しいぞ」
『簡単じゃないか!絶対僕は役に立つよ!僕が真の力を手に入れたらもっと役に立つかもしれないよ』
必死だな。
だが、聖剣が強くなれば俺の自由が無くなる。
今の勇者みたいにこき使われるのは嫌だ。
やる気が下がった。
俺はそっと聖剣ムーンライトの紋章を消して、ベッドに横になった。
「ふー。落ち着く」
だが、ミーアと俺のきわどい事が気になる。
く!反応したらムーンライトの思う壺!
忘れるんだ!俺!
きゅうは毛布の下で丸まっていた。
「きゅう」
「きゅう、頑張ったな」
俺はきゅうを撫でる。
アラネとの戦いで最後はきゅうの力が大きかった。
「きゅうには何度も助けられてるぞ」
「きゅう♪」
「よしよし」
3日間俺はみんなに感謝され、きゅうも皆になでなでをされ感謝された。
アラネを倒した後、静かだった分、の反動で、皆のテンションは高かった。
「ノーマのおかげだべ!」
「流石勇者パーティーで聖剣持ちで万能で厄災殺しだわ」
色々くっつければいいってもんじゃないぞ。
「ノーマ祭を開くだよ!」
こうして俺の抵抗もむなしく、俺はしばらくだらだらと寝て食事してきゅうと散歩という名のダッシュをするのんびりライフとなった。
◇
勇者・賢者・ミーア・俺で王都に戻った。
ミーアはすぐに王と面会する事になり別行動を取る。
俺はミントと再会した。
ミントは俺に抱き着いて来た。
「きゅうもお帰りなさい。元気でしたか?」
ミントはきゅうを撫でる。
ミントの横顔はきゅうを撫でる時のミーアを思い出させた。
「もう少しで揃って謁見間に行きますが、終わったらたくさん話をしましょう」
そう言ってミントは兵士に呼ばれて仕事をしに戻っていった。
勇者と賢者の顔が曇っていた。
「どうした?」
「何でもないぜ」
「気に、しないで」
なんだ?
何があったんだろ?
勇者と賢者はミントの『たくさん話をしましょう』という言葉で、ミントがまだノーマとミーアの恋仲を知らない事実を思い出していた。
【謁見の間】
儀式のような表彰式が始まった。
俺がナイツ領に貢献したとかブルーカントリーを救ったとかそういう事で何回も表彰を受けた。
しかも何度も魔道カメラで撮られる。
前写真NGの圧力をかけたはずだが、賢者の仕業か!
王はいつもより真剣な顔をした。
「続いてノーマが聖剣に選ばれた英雄になった件だ。ノーマ、聖剣を出してくれ」
ふつう王の前で武器を出したりはしない。
そのまま王が斬りつけられたらまずいから礼儀として武器を持たないのが普通。
「ノーマ、王の前で、武器を出して、大丈夫」
横で賢者が促す。
俺は渋々聖剣を出現させた。
周りから歓声が沸く。
「見ての通りノーマは聖剣に選ばれた英雄だ!」
『ノーマ!酷いじゃないか!ずっと話が出来なくてさみしかったよ』
王の側近が聖剣をしまうよう促す。
俺は速やかに聖剣をしまった。
ムーンライトを出したままだと騒がしいな。
「続いて厄災の魔物『アラネ』をノーマが倒したと報告を受けている。厄災の魔物に止めを刺したのはノーマで間違いないな?」
「そうですが、手柄は」
「分かった!ノーマのお手柄だな!!」
王は大きな声で俺の発言をかき消した。
王はにやにやしていた。
絶対わざとやって楽しんでいる。
これが終わったら魔道カメラから俺の写真を取り上げて俺の写真は撮らないように圧力をかけ直してやる。
見ていろよ!今から巻き返す!
俺は儀式が終わっても王に残るように言われ、新聞関係者への脅しや高圧的な態度の禁止を言い渡された。
後日新聞には『聖剣に選ばれし英雄ノーマ』の記事が1面をを飾り、俺の顔写真付きで全国に配られた。
その後新聞で俺の連載記事が新聞に載り、当然俺の顔写真も載った。
連載するなよ!
俺は諦めない!
絶対に逃げ切って見せる!
ノーマは心に誓った。
そしてノーマは次の策を練る。
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