パーティー
戦いの翌日。
朝になり外に出るが、村は見張り以外の人がいつもより人が少ない為寂しく感じた。
戦いの準備と2回に渡る生死をかけた戦いで皆眠っている。
ミーアときゅうも家に帰ってすぐに深い眠りについた。
俺は拘束したブラックギャングの脱走防止の為拘束をチェックし、見回りに声をかけつつ村の外の魔物を狩る。
昼を過ぎ、村を出ると勇者と賢者が村人と川の近くにテーブルを並べ、村人と話し込む。
勇者が俺に気づくと声をかけてくる。
「今日と明日は村で集まってパーティーを開くぜ」
俺は渋い顔をした。
村の外には魔物が多い。
捕まえたブラックギャングを王都に早く引き渡したい。
更に柵の外の家が焼かれまだ家を失った者の為の家を建てていない。
「ノーマ、外の魔物、捕まえたブラックギャング、燃えた家、問題は残ってる。でも村人の気を晴らす、大事」
「そうだぜ、皆には楽しんで休んでもらって、次何かあった時に全力で立ち向かうぜ」
俺は勇者と賢者が楽しむためではなく、皆に勝利を確信してもらい休んでもらうために動いているのが気になった。
もちろん楽しんでいる部分もあるんだろう。
だが勇者と賢者の肩書を道具のように考え、自身すら道具の1部のように考え村に休息を与える狙いがある。
その考えは立派だし、この村なら皆協力的で食べ物も豊富で問題無いのだが、他の場所では勇者や賢者を都合よく使い、自身は兵士にも冒険者にもならず、何も与えたくないという者が居る。
俺はそれが嫌だ。
「ノーマ、黙ってパーティー、開く。気が抜けて過労で寝込む者、出てくる。寝込める内に寝込んでもらう」
生死をかけた極限状態から抜け出すと、気が抜けて熱を出して寝込む者が出てくる。
寝込んでもらって心と体を回復させるという賢者の考えには同意だが、自らを部品のようにして働く勇者と賢者には納得できない部分もある。
賢者がにやにやと笑う。
「ノーマ将軍の指示、過酷、休ませるべき」
「おい!馬鹿にすんなよ!」
周りのみんなが俺と賢者のやり取りを見て笑う。
賢者に俺の情報がどんどん漏れている。
厄介だな。
賢者は何をやってくるか分からない。
勇者は焚火で肉をあぶって食べていた。
ちょっとずつテーブルの上に料理が集まってくる。
俺はテーブルと、勇者が焼いていた肉を貰って食べる。
「しかし、ミーアときゅうはまだ起きないか」
「ミーア、きっとしばらく寝てる」
「眠り姫は遅く起きるのが定番だぜ」
勇者の発言にみんなが笑顔になる。
ミーアは眠り姫キャラが定着しているのだ。
「ノーマ、コーヒーを飲んだら村の周りの魔物狩りに行こうぜ」
「そうだな。安全第一だ」
◇
俺と勇者はその日魔物狩りを続けた。
大量の魔物を倒し、すべてストレージに収納する。
「ノーマ、ミーアと付き合ってるんだってな」
「そうだな」
「俺は、ミントとノーマが結婚すると思ってたぜ」
「そうなのか?」
「ああ、お前もミントの事は意識していただろ?ミントの気持ちにも薄々気づいていたはずだぜ」
「そうかもしれないな」
「ミントよりミーアの方が好きか?」
勇者の真剣なまなざし、俺は真面目に答える事にした。
「そうだな。昔はミントの事が気になっていた。今もミントは気になっている。でも俺はそれより、ミーアが好きだ」
「そうか」
俺の本心を聞き頷いた後、勇者は何も話さなくなった。
怒るでもなく、悲しむでもなく、勇者は見た事が無い様ないくつもの感情が入り混じった表情をしていた。
迷う事のない勇者の珍しい微妙な表情は俺の印象に残った。
◇
2日に渡るパーティーは、見張りの者も出来るだけパーティーに参加してもらい終了した。
パーティーが終わる頃には賢者が子供にお菓子を配り、村の問題をいくつか解決し、俺の情報を吸い上げていた。
賢者は子供の頭を撫でる。
「子供は素直、みんないい子、ノーマの情報も集まってきた」
「最後のセリフは余計だろ!」
「ノーマ、情報をまとめた結果ノーマがミーアを村に残して100人の自警団と一緒に犯罪者を王都に運ぶ事にしたぜ」
「お前!ミーアを人質に取るのか!」
「そうだぜ?」
なんで『え?そうだけど何か?』みたいな顔してるんだ?
勇者の顔にイラっとする。
「大丈夫、ノーマの枷はしっかり守る」
「今枷って言ったな!そういう人を物扱いするのはよくない」
ミーアが楽しそうに笑う。
「大丈夫だよ。シャインもマギもいい人だよ」
「俺以外に対しては優しいぞ。ミントにも優しいのに俺への対応だけがきつくないか?」
悪魔め!俺にやさしくして休ませろ!
「お前はミントと違って腹黒嘘つきだぜ。お前の『出来ない詐欺』には正直うんざりしてる」
「今俺は出来ないって言ってないだろ。なんで『出来ない詐欺』を持ち出した!」
「ミントはいい子、ノーマ悪い子」
「おまえら~~!」
ミーアはツボにはまったように笑いが止まらなくなる。
「ふ、ふふふふふ、ノーマ、はあ!たまに企んでる顔、してる、ふふふふはあ!ああ、悪い顔、ふふふふ」
「そんなに笑うか?ひどいぞ」
俺以外の全員が笑い、きゅうは楽しそうにみんなの周りをぴょんぴょんと飛び回る。
◇
「手はず通り、お願い」
「行ってくる」
パーティーが終わった翌日、ノーマは村の自警団100人と犯罪者を連れて王都に向かい出発した。
「ノーマは凄く一杯働いてるよね?口ではのんびりしたいって言ってるのに」
ミーアがきゅうを撫でながらシャインとマギに不思議そうに聞いた。
「ノーマは、安全第一」
「後で楽をする為に今働いて、何も問題が無いようにしたいんだぜ。あいつ、ここが気に入ってるな。ここを拠点にして生きていきたいんだろうぜ」
「そっかー。何となく分かったよ」
ノーマ、私もこの村が好きだよ。
ノーマとずっと一緒に居られたらうれしいよ。
賢者はノーマを見送るミーアの横顔を見て、少し切ない顔をした。
賢者はミントの事を考える。
この頃、ブラックギャングの残党が街に戻って暴れ回っていた。
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