勇者パーティーに仕事を押し付ける
王との会談はうまくいった。
だが、このまま俺が旅に出ても勇者パーティーは追ってくるだろう。
王には離脱の意思を伝えたが、勇者権限とか色々使ってくる気がする。
勇者パーティーを依頼漬けにする必要がある。
そうしないと勇者に捕まるか。
捕まってから逃げ出せば脱走扱いにされる可能性がある。
それに勇者パーティーには賢者マギが居るのだ。
賢者の策は特に要注意だ。
やられる前にやっちまえ精神が大事だ。
「きゅう、明日やる事が決まったぞ」
俺がずっと攻勢をかけ続ける。
そして遭難するふりをしてバカンスを楽しむのだ。
次の日の早朝、早速俺は王都を回る。
まずは兵士だ。
兵士は王都周辺の魔物や盗賊の動きに詳しいし門番は早朝でも真夜中でもいつでも居る。
俺は防壁の門番に声をかける。
「やあ、いつもお疲れ様」
「ノーマ殿!お疲れ様です!」
門番は敬礼した。
「最近魔物や盗賊の動きはどうなってるんだ?」
「王都の南に魔物が多く出没するようです」
「そっか。他にあるかな?」
「それくらいですかね。あ、後は王都の東の方に盗賊が出没するという情報もあります。ただ、これは情報が未確定です」
「うん、ありがとう」
次は商人を捕まえて話を聞く。
「東に盗賊が出るって聞いたんだけど、詳しく分かる人は居るか?」
「へい、その話なら最近聞きますね」
商人が俺を値踏みする。
俺は商人の手に金を握らせた。
「へっへっへ!ありがとうございあす!これは噂ですが、東の街道の近くで3回商人の馬車が襲われてるようです。目撃情報はありませんが、出かけた商人が帰ってこねーんでさあ。しかもここ2週間の間に立て続けにです。私が知ってるのはこのくれーです」
商人は金さえ握らせておけばよくしゃべる。
現金なやつが多くて楽だ。
「うん、ありがとう」
俺はきゅうを連れて王都を出て南へと向かう。
「ブラックウルフが100体居る。ここは帰ろうか。後で勇者に倒してもらおう」
俺はブラックウルフを放置してその場を後にする。
勇者パーティーなら余裕で倒す。
勇者パーティーに任せればいいのだ。
王都の近くまでたどり着くが、まだ時間がある。
「まだ昼になる前か、食事を取ったら王都の東にも行ってみよう」
「きゅう」
きゅうははらぺこだ。
俺はストレージの魔法でパンと水を出す。
パンにはソーセージと野菜が挟まっている。
きゅうにパンをちぎって渡す。
「きゅう!」
きゅうはあっという間に全部食べつくして「もっとないの?」と俺をじっと見つめる。
可愛いな。
「今日は何も食べてなかったからな。ほら、全部食べるか?」
「きゅう」
あっという間に食事は無くなった。
俺は追加でパンを出して食べる。
「きゅう、肩に乗れ」
俺はきゅうを肩に乗せると走って東の街道へと向かう。
こうして、街道の盗賊の住処を特定して何もせず立ち去る。
更に王都周辺の村を見回り、魔物の情報を集めては巣穴の場所だけ特定して帰宅する生活を7日間続けた。
◇
王城に手紙が届く。
側近が王に手紙を渡す。
「ノーマ殿から手紙ですが、その」
「手紙がパンパンに膨れ上がっているな」
「はい、量は多いですが、王への手紙ですので私が中身を確認するわけにもいきませんでした」
王は多忙だ。
通常王への手紙は簡潔にまとめ、詳細は他の者に渡すのが礼儀だが、ノーマはすべての情報を王に渡した。
王は手紙を確認すると、笑いながら「読んでみろ」と側近に手紙を渡す。
「こ、これは!盗賊のアジトと魔物の巣の場所、更に敵の予想戦力まで調べてありますな。この短期間に12か所も調べるとは!」
「はっはっは!早速成果を出して来たぞ」
「やはりノーマ殿は優秀ですな。一人でここまで斥候が出来るのはノーマ殿だけでしょう」
「Bランクの斥候スキル持ちはただでさえ貴重だ。その上でただのBランクの斥候ならこなせない仕事をこなしてくる。ノーマは敵に囲まれれば魔術と剣術で戦い、傷を負えば回復魔術を使う。武具が壊れれば錬金術で直し、最近は使い魔も使役していると言うではないか」
Bランクの高ランクスキル持ちは貴重だ。
そして情報を持ち帰り確実に生還できるノーマはさらに貴重な人材なのだ。
「まさにオールラウンダーですな」
「それと、ノーマの呪いは恐らく完治している」
「厄災の呪いですぞ!普通は完治まで1年はかかります。それをわずか半月で完治させたのですか!?」
「だが、ここまでの成果を出してきた。呪いを完治させたとしか考えられん」
「そう言われれば、思い当たる節があります。ノーマ殿は今まで普通では考えられない速度で数多くのスキルを取得してきました。もしかしたら状態異常耐性のスキルを取得したのかもしれませんな」
ノービスの能力にスキルの成長率が高い事があげられる。
限界ランクは低いが成長率が高い。
さらにスキルは取得すれば取得するほどコツを掴んで取得効率は上がっていく。
「王と勇者を相手に物怖じせず仕事を押し付けてくる人材は貴重だ。今後も自由にさせる」
多くの者が勇者と賢者には気を使う。
だがノーマは気にせず王であっても仕事を投げてくる。
「は!かしこまりました」
勇者を足止めする為、国の問題を解決していくノーマであった。
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