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ブルーカントリー村の野菜を買い占めるけど、代金は村の強化でいいよな?

 俺は自警団の武器を作った後、防具を作った。


 その後はクロスボウを作り始めた。


 強い敵にはあまり効果が無いが、雑魚なら1人を村人数人で囲んで一斉にクロスボウを打てば勝てる。


 それに訓練を積まず使えるのも利点が大きい。


 相手に勝つ必要は無い。


 要はこいつらと闘うのは面倒だなと思わせて戦闘が起こらないようにするのが大事だ。


「助かるだ。所で、ここまでしてもらった支払いを少しずつでもしていきてーだよ」


「それなら、余った野菜と卵、魚に牛乳を貰いたい。大量に欲しいんだ」


「それで済むなら助かるだよ。早速村のみんなに伝えるだ」


「問題があって、俺は何をどの程度の価値で売ったかもう覚えていないんだ」


「それは問題ねーだよ。余分に出来たもんは全部収めるだよ」


「こっちは助かるけど、村のみんなが損をすると思うぞ」


「何言ってるだよ!ノーマは皆の命を救っただ!このくれーできねーと神様から罰が当たっちまうだ!」


 ゴンは急に熱く語りだした。


「分かった。こっちも出来る事はやるぞ」


 やる気が出て来た。


 勇者パーティーにいた頃は、ただただ助けろ助けろしか言わない者も居た。


 助けてもらうのは当然だが、人の為に動くのを嫌がる人間を何度も見てきた。


 だがこの村の村人は寛容で人を助けようとする。


 本気でこの村を強くしてみよう。


 その日から俺は、朝はきゅうと散歩兼魔物狩りをし、帰ってきたら錬金術を使う日々を続けた。


 最近村の周りにポイズンスパイダーが多く出てくる。


 クモ糸と毒を回収しておこう。





 ◇




「木の柵を作ろう」


 時間が無いので王都並みの防壁を作るのは厳しい。


 なので木を切って地面に垂直に突き刺して、斜めに刺した木で強度を上げ、ツタを撒いて固定していく。


 村人総出で協力して作業を進めた。


 更に木の柵の間からクロスボウや槍で攻撃する訓練も進めた。


 ミーアが俺に近づいてくる。


「ノーマ将軍、食事が出来たよ」


「うむ、ご苦労。メニューは何かね?」


「シチューとパンだよ」 


「それは楽しみであるな」


 俺は無いひげを整える動作をする。


「みんなー食事が出来たよー!」


「そろそろ昼休憩だべ」


 ゴンとミーアも揃って村人の大勢が集まり食事をする。


 子供も手伝い食事を配り、戦えない者すべてが何かの仕事をこなす。


 村人みんなが協力する光景に俺は感動していた。


「この村はすごいぞ!みんなで協力している!」


「皆で協力するのは当たり前だべ」


「それがすごい事なんだ」


「普通だと思うけんど、それにすごいのはノーマだべ」


「俺は普通だ」


「それはもう通用しねーだよ。魔術も錬金術も使えて、戦術も出来て狩りも出来るだ。あなた様は何者だべか?」


「俺は普通の人間だ!」


「ノーマはスーパーノービスだよ」

 ミーアが言った。


「スーパーノービス!万能のスーパーノービスだべか?」


「そうだよ」


「す、凄い事だべ!」


 周りがざわつきだす。


「ミーア、あまりぺらぺら話をするのはよくないよな」


「もう隠すのは無理だよ。それに隠した方が底が知れない感じがして逆にすごいと思われちゃうよ」

 

 確かにどうやってごまかそうか考えていたが、いい方法は思いつかなかった。


 俺は今本気で村を強化している。


 本気を出すという事はスキルを隠さず見せる事でもある。


 どう考えてもごまかす方法にたどり着けなかった。


 がだ俺は最後まであきらめない。


「お、俺はノービスで皆と同じだぞ」


「おらもノービスだけんど、ただのノービスだーよ。スーパーノービスとは天と地ほどの差があるだよ」


 周りの村人もゴンに続く。


「スーパーノービスならどこに居てもやって行けるだろうな」


「やっぱりただ者じゃなかったのね」


「そんな力を持ちながら、この村を救ってくださり感謝しています」


 まずい!この流れはまずい!


 ずっと俺が褒められる動きが完成してしまう!


 ノーマは馬鹿にされるのは嫌だが褒められるとそれはそれでやりにくかった。


 俺は切り抜ける方法を探す。


 隣を見るとゴンが落ち込んだ顔をしていた。


「ゴン、どうしたんだ?落ち込んでいるように見えるぞ!」


「おら昔に王都で兵士になって頑張って剣術を鍛えただ。頑張って剣術のランクをDまで上げただよ。でもそれが成長限界だと思って兵士を辞めただよ。でもノーマは同じノービスでもあきらめず努力し続けてスーパーノービスに上り詰めただ」


 ノービスのジョブはDランクが成長限界だ。


 次のハイノービスになれば成長限界が上がるが、ランクアップの為には3つのジョブランクをDランクに上げる必要がある。


 訓練は最初の1つ目のジョブランクをDに上げるまでが1番苦しい。


 もし1つのジョブをDランクまで上げても「後2つDランクまで上げないとランクアップ出来ないのか」というストレスは相当大きい。


 更にノービスは他の剣士や魔術師などの当たりのジョブになれた者だけでなく戦えない者にすら馬鹿にされる。


「村人職の癖に何で兵士になってるんだ?」


「頑張っても先が無いだろ?」


 と言う意見はまだ優しい方で、人によってはかなりバカにしてくる。


 ここにノービスが育ちにくい壁がある。


「ゴン、斥候のスキルを取得してみないか?」


 いきなり3つのジョブをDランクに上げろなどと言うつもりはない。


 まず最初のランクである『Fランク』から取得してみるよう軽く話をしてみたのだ。


 ゴンが俺の顔を見た。


「剣術をDまで上げて基礎体力がついていれば他の者より早く斥候のランクを取得できるはずだ。スキルは覚えれば覚えるほど習得速度が上がって覚えるのが楽になっていくぞ」


 更にノービス職の利点はスキル成長のスピードが早い事だ。


 もちろんスーパーノービスになっても限界のジョブランクがBランク止まりで器用貧乏である点は変えられない。


 だが、ノービスジョブ特有のスキル成長の速さと、更にゴンはすでに剣術をDランクに上げ、スキル取得スピードは早くなっている。


 剣術で培った基礎能力の多くは斥候スキルに応用可能で、少ない訓練で斥候のジョブスキルを取得できるだろう。


「教えてくれるだか?」


「教えるぞ」


「ぜひ!おねげーしますだ!」


 ゴンが頭を下げた。





 ゴンと俺は木の柵作りから離れ、弓を持つ。


「さっき教えた通りに、このカカシに弓を打ってみてくれ」


 ゴンは5メートルほど離れた場所からカカシに弓を打った。


「当たっただよ!」


「後5回打ってみて欲しい」


 ゴンは5発すべてをかかしに命中させた。


「次はもう少し遠くから打ってみようか」


 こうして10メートル、15メートルと離れて弓を打ってもらった。


 ゴンはすべて命中させる。


 弓は問題無しか。


「ゴン、弓は問題無い。次はナイフの使い方だ」


 斥候の武器はナイフと弓だ。


 この2つを覚えれば武器の扱いは合格だ。


 俺はストレージからナイフを取り出す。


「俺の動きをマネして振ってみてくれ」


 俺はナイフでゆっくり突く動作をする。


 ゴンは剣を使っていただけあって覚えが良い。


「突きだけでいいだか?」


「そうだな。動きは悪くないから、俺をナイフで攻撃してくれ」


「だども当たったら大変だべ」


 ゴンの攻撃に当たる気がしないし俺に当たっても俺を傷をつけることは出来ない。


 だが、思いっきり攻撃してもらえないと訓練にならない。


「分かった。それじゃ練習用の木のナイフを使おう」


 俺は錬金術で木のナイフを作った。


 もちろん刃が無い安全なナイフだ。


 お互いが右手にナイフを持って構える。


「よし、行くぞ」


 俺がナイフで突きを繰り出す。


 ゴンはナイフを横に払って攻撃を受け流した。


「そうだ!それでいい!」


 ゴンは剣術のランクを上げている。


 切り払いは自然に出来て当然。


 剣からナイフに変わって動きは少しぎこちないがすぐ慣れるだろう。


 ゴンは俺に突きを何度も繰り出し、すべて防いでいく。


「いいぞ!今日は疲れるまで突きを使いまくってくれ!」


「分かっただよ!」




 ◇




 夕食を皆で食べるが皆がゴンを見つめる。


 ゴンは右手を使わず左手でぎこちなくパンを口で引きちぎりながら食べていた。


 ゴンにいつもの元気は無く、瞼は重そうに見えた。


「ノーマ、何をしたの?」


「右手が痺れてくるまでナイフを使ってもらった」


 周りの村人とミーアがゴンに同情の目を向けた。


「ほどほどにね」


「ゴン、明日は右腕がうまく動かないと思うから、かくれんぼと鬼ごっこをしようか」


 ゴンの顔が明るくなった。


「分かっただよ」


 かくれんぼと鬼ごっこと言ったが、こっちの方がきついぞ。


 子供の遊びっぽく言ったが、要は追跡と逃走だ。


 斥候は剣士のような武器を使う能力よりもとにかく走って逃げたり追跡するのが大事。


「明日はきゅうも参加して鬼ごっことかくれんぼな」


「きゅう♪」


 きゅうがはしゃいで走り回る。





 ◇





【次の日の早朝】


 きゅうは家の入口で待ち構えていて俺は笑ってしまった。


 よっぽど楽しみだったんだな。




 ゴンの家に行くとゴンは家の前に椅子を出して座りながら半分眠っていた。


 昨日の疲れがまだ残っているんだろう。


 今日はさらに疲れるぞ。


「おはよう。早速村の外に行こうか」


「・・・・・分かっただよ」


「ゴン、調子はどうだ?」


「腕だけでなく、他も色々筋肉痛だーよ」


「ナイフは腕だけでなく腰の回転も混みで全身の動きを連動させて使うからな」





 村の外に出るとすぐ訓練に取り掛かる。

 

「今日は鬼ごっこの逃げる方をやってもらう。10数えるからゴンは走って逃げてくれ」


 ゴンは力を抜いて走って遠ざかる。


 まだ覚醒していないようだけど、すぐ目を覚ますさ。


「3・2・1・0、きゅう!ゴンを追いかけろ!」


「きゅう♪」


「きゅう!肉球アタックだ!」


 きゅうはゴンに走っていき前足で肉球アタックをお見舞いする。


「痛!地味に痛いだよ!」


「もっと早く逃げないと肉球アタックの餌食だぞ!」


 ゴンの走る速度が上がる。


「きゅう、ゴンと同じくらいの速度で追いかけろ!ゴンの動きが遅くなったら肉球アタックだ」


「きゅう♪」


「こ、怖いだよ!ひぇ~~~~~~!」


 迫りくるきゅうをちらちら見ながらゴンは全力で走って逃げた。


 こうしてゴンときゅうは村の周りをぐるぐると回る。


「俺は周りの魔物を狩ってくる。最近ポイズンスパイダーが多いからな」


 ゴンは疲れた顔をしつつも訓練をこなし、鬼ごっこ・かくれんぼ・弓・ナイフの訓練を続ける。


 飽きられないように様々な訓練を織り交ぜごまかしつつ訓練を続ける。

 

 ゴンは斥候Fランクを取得した。


 ゴンは元々剣術を学んでおり、その上人1倍働くため体力が高く斥候スキルの取得に時間はかからなかった。






「ゴン、次は斥候のEランクを目指してみないか?」


 俺の提案にゴンの顔は曇ったが、「みんなを守るには必要だーよ」と渋々了解した。



最後までお読み頂きありがとうございます!少しでも面白いと思っていただけた方はブクマ、そして下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします!

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