本当にパーティー抜けます!
どうやってパーティーを離脱するか?
ノーマは教会での寝たきり生活に味を占めていた。
のんびり生活最高かよ。
ノーマは諦めず策を練る。
この粘り強い性格も含めて勇者に評価されているのだが、本人は気づかない。
まず年齢で考える。
俺とミントが15才、勇者と賢者が17才か。
このままじゃおっさんになるまで離脱出来ない。
俺はぞっとした。
年齢で切り崩す事は難しい。
次になんとなく自身のステータスを眺める。
ん?状態異常の耐性がFからEに上がっている?
ずっと呪い状態だったから耐性がついたのか・・・・・。
それにしてもランクアップが早い。
厄災の魔物の呪いだからか?
待てよ。
今勇者パーティーは魔物狩りに出かけている。
勇者パーティーはみんな忙しい。
みんな忙しくしている間に離脱の準備を進める!
だが、ただ逃げ出せばお尋ね者になってしまう。
・・・・・王!王と話をつければ勇者と話をする必要は無い。
勇者パーティーと話をして駄目なら他のルートから未来を切り開いていけばいいんだ!
希望が見えてきた。
王との対談をお願いしつつ、準備を進める。
俺ときゅうはこのグリーンサマル王国の王都から出て、魔物狩りを始める。
きゅうの戦闘力を確認しておきたい。
ステータスを確認すればきゅうの強さは想像できる。
きゅうのステータスは、
格闘 Cランク
狐火 Cランク
攻撃魔術と格闘を使いこなす。
だが、実際戦ってみないと分からない事もある。
きゅうはお散歩気分で俺の周りを走り回る。
俺は斥候スキルで魔物を探す。
「居たぞ。ブラックウルフが5体。きゅう、戦ってみてくれ」
きゅうが狐火の先制攻撃でブラックウルフを3体倒す。
残った2体を前足と牙で難なく倒す。
「きゅう、よくやったぞ」
きゅうが尻尾を振りながら褒められに来る。
「きゅきゅう!」
俺はきゅうを撫でながら考える。
きゅうは強いな。
テイムによって生まれ変わった為、厄災の魔物ほどの力は無いが、足手まといにはならないだろう。
「きゅう。肩に乗ってくれ」
きゅうが小さくなって俺の肩に乗る。
使い魔は自身の大きさを変えることが出来るのだ。
「次は物資の調達だ」
俺は暇を見ては物資を揃えていくが、1回に大量に揃えると目立ってしまう。
少しづつ少しづつ物資を揃える。
きゅうはシスターに預けて、服も変装して万全の状態で買い物をしていった。
うまくいかなかったのは髪と瞳の色を黒から違う色に変えて変装する事だったが、やはりジョブランクが低いと難しいか?
◇
【謁見の間】
俺は準備を進めてきた。
十分な物資を揃え、きゅうとの戦闘も連携を取る訓練を重ね、更に状態異常耐性はSランクまで上昇し、呪いは完全に解呪された。
「ノーマよ。呪いの調子はどうだ?」
王は20才と若く、活力にあふれている。
国民からの人気、特にその顔立ちの良さから女性人気が高い。
「呪いは順調に良くなっています」
本当は完全回復しているが、そこはぼかして言う。
「それで?会談を望んだ理由はなんだ?」
「勇者パーティーを離脱したいのです」
俺は王の顔を見つめる。
「お前の考えを教えてくれ。ただ離脱したいだけでは納得できん」
「私は村人職です。頑張って修行してきましたが、剣も魔術も中途半端なまま限界に達しました。苦しいのです。皆がどんどん前に行き、私だけ、俺だけが取り残され守られるのが苦しいのです」
俺は目頭を押さえる。
王の家臣が俺に同情の目を向ける。
いいぞ!もっと同情しろ!
「勇者パーティーからは、ノーマは優秀だと聞いているがその点についてはどう思う?」
その質問が来るのも計算済みだ。
「人のいい勇者パーティーが私の悪口を言うわけが無いのです!みんなに庇われれば庇われるほど苦しくなるのです!優しい勇者パーティーに変わって私自身で言うべきかと思いました。俺は、俺自身をパーティーから追放すべきだと!俺があ!自分で言わなきゃ」
俺は言葉に詰まり顔を隠す。
泣きまねだ。
王の家臣は涙を浮かべる。
哀れな俺に同情する。
くっくっく!計画通り!
勇者パーティーにはついて行けない。
みんな強すぎるが俺は弱いんだ。
のんびり生活したい!
「ノーマよ。辞めたとしてこれから何をするつもりだ?」
「国を見て回りたいのです」
国と言うのはもちろん他国も含めでだ。
だが、あくまで自国を旅する感じでぼかして言う。
何故か王は笑っていた。
「分かった。認めよう。ただし見た結果の報告はしてくれ」
「それは王命でしょうか?」
「そうだ」
定期報告か。少し予想外だ。
だが、王命は悪くない。
何か言われても王命だからで済ませられる。
「俺王命だから!」というカードは強力なのだ。
勇者に連れ戻されそうになっても「王命だから」で済ませる!
そして勇者パーティーとはもう会わない!
完璧な仕上がりだ!
◇
ノーマが出ていき、王と側近の2人だけになると側近が切り出す。
「王よ、このまま行かせてよろしいのですか?ノーマ殿は明らかに休みたいだけですぞ?」
「分かっている。だが、縛りすぎてもいかん」
「ノーマ殿は優秀ですぞ」
「そうだな、ソロで何でもこなせるオールラウンダーだ。しかもうまく勇者パーティーから逃げ切る行動力と策を持っている」
「厄災を倒すためには、勇者・聖女・ノービスが力を合わせる必要がありますぞ」
昔からの言い伝えで勇者・聖女・ノービスが力を合わせる事で厄災を打倒できると言われているのだ。
「そうだな。ノーマは厄災には効果的だ」
「でしたらパーティーに連れ戻すべきでは?」
王は笑う。
「ノーマは自由にさせた方が良いかもしれんぞ。何かが変わるかもしれん」
「何かとは?」
「それは分からんが、最近テロリストの影が見える。魔物も活性化しており、他国の情勢も動いている」
「ノーマが解決のカギになると?」
「分からんが、ダイスを振ってもマイナスにはなるまい」
王には知恵があった。
不確実な未来に種を撒く事を決して怠らない。
ノーマを野に放つ行為は王にとって投資であった。
いくつも種を撒き、1つでも実れば蒔いた種以上の収穫がもたらされる事を王は知っている。
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