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ボタクリは野菜を買い叩こうとする

 焼き肉パーティーが終わり、俺はミーアを家まで運び、次の日を迎える。


 ミーアはしばらく起きそうにないが、きゅうはとても元気で、家の中を走り回る。


 最近ミーアと一緒に居てもらったせいかきゅうは運動不足かもしれない。


 思えば昨日は子供達と元気に走り回り、体力が有り余っているようだった。


「きゅう、食事が終わったら散歩に行ってくるか?」


 きゅうはてちてちと家の入口にタッチする。


 昨日はたくさん食べた。


 おなかが空いていないのか。


「そうか、散歩がいいか。よし!散歩に行こう。ミーアに声をかけてくる」


 きゅうのテンションが上がりジャンプする。





「ミーア、俺ときゅうで散歩に行ってくるぞ」


 ミーアが俺の袖を掴んだ。


 昨日のキスの件もあり、俺は袖を掴まれドキッとする。


「私も行く」


「昨日酒を飲んで具合は大丈夫か?」


「悪くないよ」


「分かった」


 ミーアは酔っぱらうが具合は悪くならないタイプのようだな。


 酒を飲んだ時のミーアはいつもより妖艶さがアップし、魅力的だった。


 昨日のキスをまた思い出して自分の顔が少し赤くなるのを感じる。


 俺はまだ覚醒していないミーアに外套を着せ、靴を履かせた。


 ミーアをおんぶすると、家の入口のドアを開ける。


 きゅうは外に出て全力で駆け出し、俺とミーアの周りを行ったり来たりする。


「きゅうは運動不足だな」


「・・・・・うん、そうだね」


 ミーアは半分眠ったまま返事をする。


「村の外に行くぞ」


 俺は村の外まで軽めに走る。


 風が気持ちいい。


 草の匂いがする。


 そして、アサルトボアが4体出て来た。


 斥候スキルで感知していたから驚きはしないが、もう少し遅く出てきても良かったんだぞ。


「ミーア!魔物だ!」


 ミーアを下ろしている間に、きゅうがアサルトボアに噛みついて倒していく。


 きゅうはとても元気、というか力が有り余っているようだ。


「きゅうはもっと運動させないと駄目だね」


 ミーアは目が覚めたようで自分で歩く。


「昼まできゅうの運動に付き合うか」


「出来れば毎日外に出た方が良いかも」


「そうだな」


 こうして毎日外で魔物狩りをする習慣が出来た。





 ◇





 村に戻ると、怒鳴り声が聞こえる。


「この村の野菜を買ってやると言っているんだ!」


 あいつはボタクリ。


 ゴンの野菜を買い叩こうとしていたやつだ。


 ゴンは負けずに口を出す。


「だから売らねーだよ!」


「ふん!強情な奴め!私の後ろには【ブラックギャング】が居る!おとなしくしたがった方が身のためだぞ」


 ゴンがブラックギャングの言葉を聞いてひるんだ。


 俺が割り込む。

「ブラックギャング?なんだそれは?」


「また貴様か!邪魔ばかりしおって」


「悪いがこの村の野菜は俺が買い取る事にしている。帰ってくれ」


 適当にあしらう。


 早く帰れ!


「痛い目に会わんと分からんようだな!やってしまえ!」


 ボタクリの後ろに居た2人の男が前に出る。


 1人はナイフを持ち、もう1人は剣を持っていた。


「喧嘩をしたいのか?」


「喧嘩ではない!お前が一方的に打ちのめされるのだ!」


「サンダー!サンダー!」


 俺は2人に雷を放ち、殴って気絶させた。


 村の自警団も集まってくる。


「ああああああ!」


 ボタクリは奇声を上げ慌てて逃げ出す。

「きょ、今日の所は許してやろう!!」


「おい!待て!こいつらを持って帰れ!」


 俺の言葉を無視してボタクリは走って村の外に出ていった。


 ボタクリ、走るのが遅い。


 運動不足かよ。


 ボタクリはまるまると太り、ゆっくり走って逃げていく。


 ゴンは集まった自警団と深刻な顔をして話し始めた。


「ま、まずいだよ。ボタクリがブラックギャングを引き連れて来ただよ」


「ゴン、ブラックギャングってどんな組織なんだ?」


「隣街を仕切る支配者達だよ」


 自警団の男が説明する。

「ブラックギャングは約1000人の戦闘員からなる組織で、邪魔な人間をことごとく暗殺し、周りから金を奪う犯罪集団です。きっとこの村に何か仕掛けてくるでしょう」


 この村の自警団が300人でブラックギャングは1000人か。


 しかも、あっちは何をしてくるか分からない犯罪集団。


 出来る事はしておくべきだろう。


「自警団の武器を急いで作ろう」


 ただでさえ数で劣る。


 武器だけでも揃えておこう。


「だども金がねーだよ」


「それは後だ。今はすぐに武器を作る」


 自警団の男が俺に尋ねる。


「あなた様は一体何者なんですか?武器を作り、大量のアサルトボアを狩り、偉い治癒士様を引き連れ俺達を救っています。街の復興がありえない速度で進んでいます」


「俺は普通の人間で治癒士のおつきの者だ」


「嘘はいけねーだよ。ノーマが治癒士を引き連れてるだよ。もうだまされねーだ」


「私はノーマについてきてるだけだよ」


 ミーアもゴンの意見に乗っかる。


「集中したい。今は武器を作るぞ」


 俺は話を終わらせた。


 俺はその日武器を作り続けた。


 もう俺を詮索しないで欲しいのとボタクリをぎゃふんと言わせたい気持ちがせめぎ合う。


 村の人間を助けつつボタクリをぎゃふんと言わせ、ブラックギャングを潰しつつ俺は目立たないように出来ないもんかね?


 暗殺はしたくないし、そもそも相手にBランク以上の使い手が複数いたらこっちが負ける可能性すらある。


 なんせ相手は1000人。


 ・・・・・思いつかないぞ。


 辺りが暗くなり、武器作りが終わると、自警団の者が集まってきた。


「武器を受け取ってくれ。使う武器はなんだ?」


「私は槍です」


 俺が槍を渡すと俺に深々と礼をして武器を受け取る。


 後ろには自警団が並んでいる。


「武器はここに置いておくから、皆で持って行ってくれ」


 ゴンがまた口を挟む。

「それはいけねーだ。偉いお方から賜る武器をそんな適当に受け取っちゃなんねーだ」


「俺は普通だ」


「それは通用しねーだ」


 村人全員がゴンの言葉に頷く。


「何度も言うけど、俺達はお忍びの旅をしているから、外に俺達の情報が漏れるのは困る」


 南部に気を取られている内に、ノーマの元に勇者と賢者が迫っていた。



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