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お二人様は何者でしょうか?

 ノーマ一行は無事勇者パーティーと聖女の刺客に遭遇することなく、南部へと逃れた。


「どうしてここに来る事にしたの?」


「ここは、領主が居なくて、王家を代理する市長や村長が管理している地域なんだ。面倒な貴族と会わなくて済むからな」


「そっか。ここは温かいね」


「そうだな。国の中で南部が1番温かい。前に防壁が見えるだろ。あの町は人口約3万で国で1番南の街だ」






 防壁の門に向かうと、兵士が金を徴収している。


「2人と使い魔が1体、3人分で通行料は3万ゴールドになる」


「ねえ、高いよ」


「仕方ない。入ろう」


「おい!早く3万の出せ!」


 3万ゴールドを払って街に入る。


「やっぱり高いよ」


「そうだな。ナイツ領はただで入れたし、ここより兵士も丁寧だった。そろそろ昼だ。気を取り直して食事にしよう」


「そうだね。おいしいものを食べて楽しもう」


「きゅう」






「1食2000ゴールドはやっぱり高いよ!」


「そうだな、ナイツ領は安い所だと500ゴールドで食事が取れる。他を回ってみよう」


「そうだよ。ここは高いよ」


 食事を取れず、きゅうの機嫌が悪くなってくる。





「2200ゴールド、次は2500ゴールド、さらにその次は2000か、全部高いぞ」


「街に入る時も高いし食事も高いよ。宿屋も高いのかな?」


「かもしれん」


「きゅう!きゅう!」

 きゅうがご飯頂戴と鳴く。


「分かった分かった。ストレージにある物を出して食べるか」






 俺達は街の外れに移動して食事を済ませる。


 きゅうはおとなしくなった。


 今は小さくなって俺のフードに入って眠っている。


「今から宿屋を見に行きたい。もしかしたら、王都より物価が高いかもしれない」






 宿屋を回ってみるが、どう考えても王都より高い。


「他の街は無いのかな?」


「街は無いが、もっと下にブルーカントリーっていう村はあるぞ」


「私はテントでもいいよ」


 叫び声が聞こえる。


「喧嘩かな?」


「見に行ってみよう」


 商人と農家か?


 揉めているようだ。


「そんな!こんな安い値段じゃやっていけねーだよ!」


「ふん!売れないなら別に構わん!帰るんだな」

 

 商人と思われる男が、リヤカーに野菜を積んだ男を罵る。


「だども!トマト1個20ゴールドは安すぎるだよ。商人だけ儲かっておらたちは困るだよ!ボタクリ、何とかしてけろ」


 ボタクリという商人の顔は意地が悪く見え、目つきは犯罪者のように悪い。


 しかもとても太っており、宝石を必要以上に身に着け、センスの悪さを感じた。


「何度も言わすな!売りたくないなら売らなくてもいい!売るのか売らないのか!?どうするんだ!」


 ボタクリは見下すように怒鳴った。


 トマト1個20ゴールドは安すぎる。


 この街の物価を考えれば不自然なほどの安さだ。


 商人の店を覗くと、トマト1個200ゴールドと書いてある。


 20ゴールドで買って200ゴールドで売るだと!


 おかしくね?


 それに商人の身なりがあまりに良く、リアカーで野菜を売る男はぼろぼろの服を着ていた。


「ねえ、私が野菜を買うよ」


「俺もそう思っていた」


 俺達はリアカーの男に歩み寄る。


「俺がその野菜を買おうか?」


 商人は怒り出す。


「貴様!商人ギルドには入っているのか!入っていなければルール違反だ!」


「なんだ?南部にはそんなルールがあるのか?」


「この街の中では商人が決めたルールがあるだよ」


「そういう事だ!分かったら引っ込んでいろ!」


「この街の中だけの話か。その野菜はこの街で作ったのか?」


「おらは南のブルーカントリーから来ただよ」


 商人はさらに怒鳴る。

「商売の邪魔だ!引っ込んでいろ」


 俺は商人を無視して話を続ける。


 何を言っても怒ってくるタイプだ。


 まともに取り合う気はない。


「野菜を金に換えて、何か買いたいものがあるのか?」


「ブルーカントリーで病が流行っているだよ。みんなに薬を買わなきゃなんねーだ」


「後天的な病なら直せるよ」


「決まりだな。ブルーカントリーに行こう」


「ふん!こいつらは詐欺師に違いない。お前は騙されているぞ」

 商人が鼻を鳴らすようにバカにしてくる。


「だども、もし助かるなら助けて欲しいだよ」


「分かった。すぐに街を出よう」


「これだから学の無い奴は困る!騙されていることも気づかんとは!」


「この2人は悪い人に見えねーだ」


「馬鹿め!ここで売らないなら、更に買取価格を引き下げるぞ!」


「それは困るだーよ」


 農家と思われる男がボタクリの言葉に反応する。


「反応するのはよくない。無視して街を出るぞ」


 男は少しおどおどしながらも街から遠ざかる。


 ボタクリは怒鳴りながら何か言っていたが、聞かないようにした。


 あいつの為に感情を使うのが無駄だ。






 俺は商人を無視して街を出た。


「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前はノーマだ」


「私はミーアでノーマのフードで寝てるのがきゅうだよ」


「おらはゴンだよ」


「所でゴン、肺炎にかかってないか?風邪っぽいぞ?」


 俺はゴンをじっと見る


「リカバリー!」

 ミーアは俺の話をぶった切るように状態異常回復の魔術を使った。


 それが1番早いけど、話をすっ飛ばしすぎだろ。


「調子が良くなっただよ!やっぱりいい人だっただ!すぐに村に来て欲しいだよ」


「待て、ここからブルーオーシャンまで何キロくらいだ?」


 俺はリアカーに積んでいる野菜が気になった。


 重いだろ?


 まさかこのままリアカーを引いて帰るのか?


「10キロくらいだよ」


「まず、その野菜を買いたい。重いだろ?ストレージに収納したい」


「魔術師様だっただか。金はいいだよ。それより村のみんなを直して欲しいだよ」


「だが、一旦金を渡しておかないと不安じゃないか?」


「大丈夫だよ。2人とも悪い事はしねーと思うだ」


「魔術師じゃないけど、野菜をストレージに入れるぞ」


 ストレージでリアカーの野菜を全て収納した。


「リアカーがカタカタ音がするのが気になる。直していいか?」


「直してもらえればありがたいだども、魔術師の魔術を使うのに、錬金術まで使うだか?」


「まあ、色々あってな。それじゃ直すぞ」


 俺はストレージから鉄と木を取り出し、リアカーを直していく。


 鉄をほとんど使ってないのか。


 これじゃすぐ壊れるだろ。


 俺は鉄をぜいたくに使ってリアカーを直していく。


「リアカーの形が変わってるよ!」


「丈夫に作り直した」


「それ修理じゃないよね!」


「ま、まさかあなた様は賢者様じゃねーだか?」


「違うぞ。みんなリアカーに乗ってくれ。俺が引っ張る」


 俺はきゅうをリアカーに乗せた。


 ミーアもリアカーに乗り込む。


「ゴン、早く乗ってくれ」


「失礼だども、お2人様は、何者でございましょうか?」


 ゴンは急に敬語になった。


「俺は普通の人だ。早く乗ってくれ。村の病を助けるんだろ?」


「分かりましただ」


「無理に敬語を使わなくて大丈夫だぞ」


「そうはいかねーだ、です。お二方はきっと偉い人と見たです」


 そう言いながらゴンもリアカーに乗り込む。


 俺はリアカーを引きながら走る。


 もちろん速度は抑える。


 きゅうが起きて前を見る。


「きゅ♪きゅう♪」


 きゅうは元気になって上機嫌だ。


「いい速度だよ。丁度いいね」


「やはりただ者じゃねーだよ!」


 ゴンは半日かけて街まで来たが、ノーマの人力リアカーによって快適な帰還となった。






最後までお読み頂きありがとうございます!少しでも面白いと思っていただけた方はブクマ、そして下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします!

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