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エピソード2 バーチャルリゾート


 「ほらこっちこっち!! クランのみんなはこっちに居るわよ!!」


 アキマサがシンディに引っ張って連れてこられたのは空港の待合室に似たラウンジ。

 そこの一角に四人の男女がおり、椅子に腰かけていた。


「おう、来たなアキマサ……ムン!!」


 その内の一人が立ち上がりいきなりボディビルのポージングの一つ、サイドチェストを決めながら最初に話しかけてきたのは細マッチョ体型の笑顔からこぼれる歯の白が眩しい青年。

 タンクトップにブーメランパンツ、肌は日に焼けており黒光りしている。

 

「ケンジ、お前は相変わらず暑苦しいな」


「ほっとけ、はっ!!」


 お次はバックダブルバイセップスだ。

 ケンジはアキマサの古くからの友人で、数年前にこのアナザーリアリティで出会った。

 シンディと並びこのクランでは最古参である。


「おはようアキマサ、暫くぶりだね、会えて嬉しいよ」


「ようコウ、元気だったか?」


 アキマサとコウは固い握手をする。

 コウと呼ばれた青年は清潔感のあるイケメンだ。

 そしてその甘いマスクによりアナザーリアリティ内では女性にモテモテなのだ。

 但し先ほど述べた通りこのアナザーリアリティではアバターを自由にクリエイト出来る。

 なのでこの姿のコウが現実のコウと同じ姿かどうかは定かではない。

 何せここに集う男女は誰一人直接会った事が無いのだから。


「わーーーい!! アキマサだーーー!!」


 可愛らしい小さな少女がアキマサに飛びつく。


「おっと!! おいキャシー、いきなり飛びつくなよ!!」


「エヘヘっ、ゴメンねーーー!! テヘペロ!!」


 頭の後ろに手をやり、白目をむいて舌をぺろりと出すキャシー。

 ここアナザーリアリティは未成年のダイブを基本許可していない。

 だから目の前にいるどう見ても十歳程度の容姿のキャシーの中の人は恐らく成人女性であると思われる。

 この様に全く元の姿と違う姿を設定し、キャラクターまで変えて生活できるのもこのアナザーリアリティならではの醍醐味とも言える。


「ウフフフッ……坊や、待ってたわよ」


「ミカさん!! おはようございます!!」


 長く美しい黒髪を靡かせアキマサに近付くグラマラスで綺麗な大人の女性。

 アキマサはピンと気を付けをしたのち勢いよくお辞儀をした。


「あーーーー!! 私の時と態度が違い過ぎるーーー!!」


「うっ、うるさいなシンディ、どうだっていいだろうそんな事……」


「どうでも良くないーーー!! これは差別だわ!!」


 シンディはアキマサにコブラツイストを掛けた。


「いだだだだだっ!! 止めろーーー!!」


「アキマサ、ギブ? ギブ?」


 キャシーがふざけてプロレスのレフェリーの真似事をする。

 このアナザーリアリティ内は基本的に暴力行為は出来ない様に設定されている。

 だがこういったおふざけの範囲内に限り多少の刺激は感じるように出来ていた。

 だからアキマサが騒ぎ立てる程の痛みは実際に受けてはいないのだ。


「あらあら、仲がいいわねぇ……若いっていいわねぇ……」


「ミカさん!! そんなんじゃないんですって!!」


 くすくすと笑うミカにアキマサは全力で弁解するがそもそもミカはアキマサにそこまで特別な感情を抱いていない様子。


「なあコウ」


「何ですケンジ?」


「何でミカさんの様な超絶美女が俺たちのクランにいるんだろうな……」」


「さあ、なんででしょうねぇ……」


 その様子を見ながらそんな会話をするケンジとコウ。


(そうなんだよなぁ、どうしてミカさんは俺たちの所に居てくれるんだろう……聞けばミカさんには毎日のように他所のクランからお誘いが来ているというし……)


 コブラツイストを決められたままアキマサはもの思いに耽る。


「なぁシンディ、そろそろ技を解いてくれないか? さっきから骨ばった身体が当たって痛くてかなわないんだが……」


「何ですって!?」


 シンディが激昂した隙にするりと身体を抜くアキマサ。

 

「フン、まだまだ甘いなシンディ君」


「アキマサ!! こうなったら格闘エリアで勝負しましょう!!」


「はいはいそこまで、気持ちは分からないでもないがいつまで二人だけでじゃれてるんだ」


 見かねてケンジが割って入った。


「止めないでよケンジ!! アキマサには一度私の強さを分からせてやりたいのよ!!」


「やれやれ、それじゃあ逆効果ですよシンディ……ていうか目的を見失っていませんか?」


「もう、分かったわよ……」


 コウに窘められてやっと大人しくなるシンデイ。


「……ったく、この暴力女は……」


「ムキーーーッ!! 何ですって!?」


「はいはい、もうその辺でね?」


「はいっ!! 分かりましたミカさん!!」


 再び直立からの最敬礼をするアキマサ。

 その様子を面白くないといった表情で睨みつけるシンディ。


(やれやれ、彼らの恋路は前途多難だな)


 両掌を上に向け首を竦めるコウであった。




「ハイ!! じゃあ今日は何をする!?」


 手を大きく打ち景気付けをするケンジ。


「ハイハイ!! まずは格闘エリアで身体を動かしましょう!!」


 シンディが元気よく手を上げ意見を主張する。


「却下!! お前はアキマサに仕返しをしたいだけだろう!! それにここに居る誰もお前には敵わないよ」


「えーーーーっ!?」


 何故シンディが格闘エリアにご執心かというと、彼女は格闘エリア【グラップルファイター】というバーチャル格闘ゲームで上位ランカーだからだ。

 バーチャルではあるが実際にアバター同士が戦う姿はまるで本当の格闘大会を観ているかのような錯覚に陥る。

 このゲームではラウンジとは違い痛みを感じるリミッターが一部解放されており、実際に殴られたり蹴られたりの衝撃が伝わって来る。

 とはいえさすがに命に係わるほどのダメージが伝わってくる訳ではない。

 最高で気絶程度で済まされる。

 だがこのゲームは余程覚悟のある者しか参加していないので、現在プレイしている人間は自然と上級者しか残らないといった寸法だ。


「次は? 次の意見のある人は?」


 いつの間にかケンジが仕切り役になっていた。


「プールに行きたいの!!」


「よし!! それに決定!!」


「やったーーー!!」


 キャシーの意見に即座にOKを出すケンジ。


「……そうだな、プールサイドでゴロゴロしていたい」


「えーーー!? 勿体ないでしょう折角のプールなのに!! 私と泳ぎで競争しようよ!!」


「……シンディ、お前は身体を動かしてないと死んじゃう病気か何かなのか?」


 アキマサは呆れた渋い顔でシンディを見つめる。


 取り合えず一行はプールに行く事となった。

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