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夢の覚書 第3夜

作者: 悠々

翡翠色の水面である。私はもう一人の誰かと連れ立って歩いている。そこは、美しい湖畔であった。湖のほとりには白い砂が流れ着いており、砂浜となっている。その白さと翡翠色の水がとても映えるのだった。湖は大きく、対岸は見えない。ただただ翡翠色の湖面が広がっている。私は、船をこいでいた。湖に漕ぎ出ているのである。目的は魚を獲ることだ。この湖は、水の透明度も高く、水面の奥のほうまでよく見える。しかし、その深さは相当なもののようで、湖の底は見えず、折り重なった翡翠色によって淀んでいた。私は昼に魚を獲りに湖へ出て、夕方に岸へ戻る。そして、夜はその魚を焼いて、もう一人の誰かと食べるのだ。彼(あるいは彼女)は、私に教えてくれる。この湖が翡翠色なのは、湖が生きているからだと。生命の持つ美しさが翡翠色の輝きになるのだと。道理で、夜となった今でも湖面はうっすらと発光しているようだった。次の日、私はもう一人の誰かと舟を漕いでいた。かわるがわる順番に。普段は私一人で漁に出ているが、今日は違った。なぜだっただろうか。理由は覚えていない。ともかく、二人して漁に来たのだ。私が舟を漕ぐ手を止めると、もう一人の誰かは止まった舟から、湖を覗いていた。深いはずなのに透き通っていて、不思議な感じがすると笑っていた。そこで漁を開始してどのくらいたったころだろうか。一瞬、舟が揺れた。あっと思った瞬間バランスを崩した彼女(あるいは彼)は、湖に落ちた。しかし、水しぶきは上がらず、湖面には波もなかった。まるで、最初からここには私一人しかいなかったかのようだった。とても静かな舟の上に、私一人が残された。目の前には、深く透き通った翡翠色。

唐突に、湖が翡翠色である理由に思い至った。そこで目が覚めた。


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