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神媒師  作者: ふみ
第一章 初めての務め
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017 暮らす街

 大黒様が軽快に歩き始めたので二人は従って歩き出した。


 その後は会話も少なく5分ほど歩いて綺麗なマンションの下まで着いた。

 10階建てくらいの高さだろうか、瑞貴も前を通ったことはあったが秋月が住んでいたことは知らなかった。


「ここの12階、最上階の部屋に住んでるの」

「へー、ここなんだ」


 上を見上げて間抜けな感想しか出てこない。高級そうなマンションの最上階に住んでいるのだから不用意な発言は下衆い感想になりかねないので要注意である。


「滝川君の家からも、そんなに離れてないでしょ?」

「まぁ、そうだけど、あまりこっちには用事がないから頻繁(ひんぱん)には通らないね」

「大黒様のお散歩コースで、また通ったりしないのかな?」

「いや、コースは決まってないから、大黒様しだいだね」


 大黒様にとっては散歩ではなく視察のための外出なのだからコースを決めて行うものではないと瑞貴は考えている。

 神様なりの勘が働くことで察知することがあるのかもしれず、いつも大黒様に任せてしまう。


 本当は秋月が躊躇いなく自分の家を教えてくれて瑞貴の住所を知っていることに気が付くべきだが瑞貴は会話を流してしまっていた。


何処(どこ)へ行くのかは、大黒様が決めてるの?」

「そうだね。視察……、散歩のときは大黒様の行きたいところを回るようにしてるから」


 そのやり取りを聞いてから秋月は大黒様と見つめ合ってしまっている。何か通じ合うものでもあるのなら秋月の方が神媒師に向いているのかもしれない。


「それじゃあ、送ってくれて、ありがとう」

「いやっ、俺の方こそ助かったよ。ありがとう」


 それだけ言葉を交わすと秋月はマンションに入っていった。

 大黒様は秋月の後ろ姿を眺めており、しばらく動かなかったので瑞貴も動くことが出来ない。


 しばらく時間が過ぎると大黒様は今来た道を戻り始めて歩き出す。


「また、そっちに戻るんですか?」


 戻らずに進んだ方が遠回りにならずに帰ることが出来るのだが、まだ戻るつもりはないのかもしれない。


 大黒様の行動も不自然ではあったし、そんな行動に瑞貴は嫌な感覚がしていた。それまでの楽しかった空気感とは全く別の感覚になっていた。

 大黒様が怒る時に空気が重くなる感覚。それを何倍にも薄めたくらいで錯覚かもしれなかったが嫌な感じがする。


「なんだろう、少し気持ち悪い」


 調子に乗って秋月に余計な話をしてしまったこと。明日の早朝から新たな神様の手伝いが始まること。色々なことが重なり合ってしまい薄ぼんやりとした暗い影を作ってスッキリできないだけかもしれないが少し違う。


――秋月と話して舞い上がってたのかな?


 こんな形で出会って会話することになるとは予想もしていなかった。

 瑞貴が勝手に頭の中で作り出していた見えない棘に覆われている秋月のイメージとは大きく違っていた。同い歳の普通の女の子と一緒に過ごしただけの話になる。


 秋月を特別視しそうになっている気持ちを切り替えることにした。『思っていたよりも気軽に話せた』とだけ認識しておけば済む話として済ませたい。

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