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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

demon hero

作者: Penguin

 2105年、地球にはモンスターやヴィランと呼ばれる人類の敵が跋扈する荒廃した世界となっていた。彼らは突如として地球に現れ、人類を次々と襲い、虐殺や隷属させるといった行為を繰り返した。

 

 勿論、人類も彼らに好き勝手な事をさせるつもりは無かった。しかし、彼らには銃や爆弾といった兵器が通用しなかった。国土が小さく、陸続きの国々はあっさりと陥落した。


 人類の存亡もここまでかというとき、人類にまるでモンスターやヴィランと同じような力を持つ者たちが現れ出した。彼らは白く輝く武器を使い、とても人間とはいえない身体能力で人類の敵による侵攻を退けて見せた。


 彼らは、その姿から神の使徒などと呼ばれた。彼らを中心に、人類は生息しうる土地を死守することに成功していた。



「やっぱり凄いなぁ。あんな化け物を倒せるんだもんなぁ。」


 人類防衛都市14区に住む少年、赤坂涼は通信ホログラムに表示されているヒーロー達の活躍に言葉を漏らす。


「そういえば、母さんから晩御飯の材料を買ってきてって頼まれてたっけ。」


 学校帰りに13区のいつものショッピングセンターに晩御飯を買うために入って行った。


「今日は、ハンバーグだっけ?ええっと、合成肉と植物肉に...」

 

 彼が晩御飯に必要な食材を選んでいる時、警報が鳴った。


(緊急事態発生、緊急事態発生、現在14区に大型モンスターが襲来しました。現在、現場の状況が確認できませんが、甚大な被害が生じている模様。13、14、15区の住民は地下シェルターに逃げ込んで下さい。繰り返します。...)


 母さんが危ない!持っていた買い物カゴを投げ捨ててシェルターに逃げ込む周りの人々と逆の方向に走り出した。


 ここから、家までは走ればそんなにかからない!母さんは足が不自由なんだ!早くしないと!母さんが死んじゃう!父さんみたいに!


 僕は巨大なドラゴンのシルエットが見える方向に必死で走った。母さん!母さん!大丈夫、きっと大丈夫。そう自分に言い聞かせながら必死に足を動かした。


「母さん!大丈夫?早くシェルターに向かおう!」


 なんとか、モンスターが家を襲う前に着くことができた。家の中には警報にびっくりした母さんが車椅子に乗るのに失敗して床に倒れているのが見えた。どうやら、寝ていたところに警報が鳴ったから慌ててしまったらしい。


「母さん、大丈夫?早くしないとモンスターが...」

 

 倒れている母に近寄り、起きあげようと腕を持った時、ヌルッとした感触を手に感じた。


「え?母さん?血?なんで?だって、まだここにはモンスターは来てない筈でしょ?だって、だって、あの巨大な化け物はあそこにいるじゃん。ねえ、母さん、返事してよ。ねえ!ねえってば!」


 母がついさっき死んだのだという事実が信じられない彼は何度も何度も唯一の肉親である母の肩を揺らしながら焦点の合わない目で語りかけた。


 その時、母の体からギチギチと何かが這い出るような音がした。そのすぐ後、母の頭部が弾けてヌメヌメとした体表の1メートル程の大きさのミミズのような何かがゆっくりと脳味噌や頭蓋骨を食しながら這い出てきた。


「あ、あ、あ、母さん?頭はどうしたの?ね、ねぇ?返事してよ!」


 最愛の家族の凄惨な死に直面した彼の頭は狂ってしまった。


 母さんが死んだ?僕が間に合わなかったから?僕と母さんを助けるために死んじゃった父さんとの約束を守れなかった?これは僕が弱いから?神が僕のことなんてどうでも良いと思ってるから?

 

 彼が失意に沈み、自問自答していると声が聞こえてきた。もっと彼が幼かったころ、よく頭の中に聞こえてきていた懐かしい声が聞こえてきた。


『神なんか信じてるからこんなことになっちまったんだぜ?契約者。もっと神なんか信じず相棒である俺様の声を聞いてれば守れたのによ〜。お前はここで諦めるのか?復讐してぇだろ?力が欲しいなら幾らでもくれてやるぜ?なんたってお前は俺様の契約者だからなぁ。』


 彼は思い出していた。父親から言われた言葉と幼い頃に悪魔と契約した事を。


 父は言っていた。


「お前には、生まれつき良くない存在が着いてしまっている。でもな、安心しろ。父ちゃんが絶対に母さんと涼を守ってやるからな。もし、何か聞こえても絶対に受け入れるなよ?絶対に幸せになれなくなっちゃうからな。父ちゃんとの約束だ!」


 母の頭部から這い出た寄生型のモンスターは目の前に無防備な状態で座り込む獲物がいることにギチギチと歓喜の音を鳴らした。


「おい、クソ悪魔。」


 彼は今更、飄々とした声色で脳内に語りかけてきた、かつて何も分かっていなかった自分と契約した悪魔を苛立ちながらも呼んだ。


『随分な物言いだが、どうした相棒よ。俺様にキレても仕方ないぜ?そもそも、俺様の声が聞こえなかったのはお前が俺様と関わろうとしなかったからだからな?』


 どこか言い訳じみた事をいう悪魔に問いかける。


「本当に復讐出来るだけの力を手に入れられるのか?母さんや父さんを殺したモンスター、何もしてくれなかった神、どうしよう無いほど役立たずな僕自身。この全てに復讐するだけの力を手に入れられるか?」


『相棒!自分自身に代償があっても良いってんなら、復讐なんて楽勝だぜ!俺様がお前に復讐の力を与える、その代わりお前は力を使うごとに俺様に記憶か感情か身体の一部を渡すってのはどうだ?お前が許せないお前自身の戒めにもなるぜ?』


 自分の事などどうでも良くなっていた彼は悪魔と本当の意味で契約を結んだ。


 そして、災厄がこの世に誕生した。


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