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俺様皇子と出会い

人気の無い裏庭。

季節の花がひっそりと、けれど可憐に咲き誇る裏庭は内緒の話をするには絶好の場所だ。


そんな所に男女の姿が1組。

他の学校のものよりたっぷり、ふわりと広がるスカートを身に纏うのは隣のクラスで美人だと有名なあの子に違いない。

艶やかな茶色の髪はしっかりとけれどふんわりと巻かれており、一言話すたびにさらさらと揺れている。抜けるほど白く綺麗な指が緊張を物語るようにそわそわと動いていた。話すたびに動く小さくて紅い唇がなんとも言えないくらい可愛らしい。


男子の方は学校、いやこの国に知らぬ人がいないに違いないあの人。

そう、ハヴィエル・ディ・クルーガー皇子だ。

鍛えられた肉体は直接見えないものの、適度に鍛え上げられたことが制服の上からでもわかる。なぜ皇子が鍛えているかというと、文武両道たらねばならぬという言い伝えのせいだ。簡単に言えば自分の身くらい自分で守れなくて国など守れるものかということらしい。すごく納得。

頭ももちろん良い。更に言えば顔もとても整っている。

鼻は形が良く高さがあり、目は切れ長で他のパーツも見事なくらいにいい感じに配置されている。そして夜空のように深く青い髪も美しい。

性格も良いらしく、非の打ち所がない皇子様らしいが直接会ったことがないし、そういう縁も予定もないのでどうでもいい。

そんなことよりなんでその2人が裏庭にいるかということの方が気になる。

人気のない所に男女がいればもちろんすることは決まっている。

告白かイチャイチャのどっちかしかない。

そのどっちかという話だが、あの子がそわそわしているし親密な雰囲気ではない。ということは告白か。


良い。すごく良い。私とは無縁の青春真っ盛りって感じで最高!

上手くいくと良いなと下世話な気持ちで告白を見守る。

いやあ、それにしても2階のこの教室からだとすごく裏庭が見やすい。流石に告白を上から見られてるとは思わないだろう。それにこの教室は家庭科室。全然知られていないどマイナー部活の手芸部の活動日時なんて皆んなほぼ知らないだろうから問題なーし!


なんて思っていたら、突如女の子が走ってどっか行ってしまった。

は?なんで?エリザさんすごく美人じゃないの。性格は同性には厳しいらしいけど男子には優しくて評判良いから告白受けない理由なくない?

私が男子というか皇子だったら受けるけど。あ、嘘。私の友達のフィオナがいい!最高に綺麗で最高に性格いいしいい匂いするし大好き!!


くるり

突如背中を向けていた皇子が振り返る。

私は反射的に頭を机にくっつける。危険な予感しかしない。これはやばい。

私の基本外れる勘がそう告げた。

静かに椅子を引き、家庭科室の電気を消し、裏庭からの移動に使うであろう階段に近い方のドアの鍵を閉める。

これでバレない?いやいや、まだ不安じゃない?ってことで、私は教卓の下に隠れる。

普段勘が当たらないタイプだから今回も当たらないでほしいなーなんてちょっとビクビクしながら隠れているとカツカツという物音がする。

普段ここの廊下を通る人少ないのにな。これ絶対やばい気がする。


ガッ!ガッガッツ

強い力で扉を開けようとする音がした。しかも何回も。怖い。すごく怖い。

さらに数回開けようとしていたがふと音が止み、また足音が聞こえる。

諦めてくれたのかな?

スパン!

はい、諦めてなかったー!!

自分なんであっちの鍵閉めなかったし!猛反省だぞ☆

………無理。怖くて可愛子ぶりっ子して現実逃避してみたけど全然逃避できない。怖い。無理。

静かな家庭科室に靴音が響く。音の発信源が移動している。これは絶対探してるよ!!ま、まあ教卓の裏にいるなんて気付かな


「教卓の後ろ」


低めの美声が冷ややかに私の居場所を言い当てる。

ひぃい!怖いよ!どうしよう!ええい、もういっそのこと無視して去るのを待とう。当てずっぽうに言ってるだけかもだし!

私は教卓。私は教卓。私は教卓!!

しかし皇子は無慈悲だった。

ダンっという音と共に教卓が大きく震える。

「すいませんすいませんすいませんお命だけは勘弁してください」

私は恐怖におののいて教卓から転がり出て、皇子の前にひれ伏した。決してジャパニーズ土下座ではない。近しいけれど。

「見たよな?」

「見てないです!」

嘘です。見ました。めっちゃ見ました。

でもここは見てませんで切り抜けるしかない。こめかみにたらりと冷や汗が流れ落ちるが気にしている場合ではない。命がかかっているのだ。

「すっごい視線感じたけど。俺、皇子だからそういうの鋭いだよな。」

「見てません!」

「へー、そう。じゃあここで何してた?」

「手芸です!フェルトでケーキ縫ってました!」

「これ?綺麗にできてんな。じゃあなんでこれ縫ってたのに隠れた?」

「え、えと、隠れたい気分だったんですよ〜」

務めて明るい声で答えるが、絶対無視されてる。私わかる。

「電気消して、鍵かけて?」


「すいません!めちゃくちゃ見ました!告白現場めっちゃしっかりガン見しました!お二人の名誉のために黙ってますんで!むしろこのことはお墓まで持っていくレベルに黙っている所存ですのでご容赦を!!」


私は手を前に伸ばし、さらに平伏する。

不敬罪で捕まって豚小屋の中で一生を終えるになるかもしれない。むしろ死刑かも。頭の中で嫌な想像がいくつも浮かぶ。

震える私を嘲笑うかのように足音が近づいてきた。

「告白されてるとこ見て、俺から逃げようだなんて立派な不敬罪だな。罪を犯したなら償って貰わないと。」

がしりと腕が掴まれる。やめてください私の太い腕を掴まないで普通体型だけど腕太いんです深窓のお嬢様と違う庶民の娘なんで!

腕をぐいと引っ張られ、反対の手で顎を無理やり動かされる。

大層お綺麗なご尊顔が私を見ていた。すごい…お美しいお顔……です……


「お前の友人をモノにするのを手伝え。」


「は?」


なんかよくわからないというかわかりたくないことを言われた気がする。というか脳が理解することを拒否している。

「恐縮しきって言語も理解できないか?もう1度わかりやすく言ってやる。」

「はぁ、お願いします」


「お前の友人のフィオナ・キャンベルを妻にしたいから手伝え。」


なんてこったい。やっぱ聞いた通りだった。

フィオナ美人だしいい子だもんわかる。

噂上の皇子は物腰柔らかだって聞いたのにこの皇子はそうじゃない。むしろテンプレ通りの俺様って感じ。こんな俺様野郎にフィオナはあげたくない。

フィオナは素敵で優しい旦那様の元へお嫁に行って欲しいのだ。

こんな怖い俺様皇子なんかじゃなくてね!!


「返事は?」

「アッ、ハイ!」


やばい。庶民だから溢れ出る人を屈服させる皇子様オーラに勝てずに従ってしまった。ごめんフィオナ、まじごめん。上手く邪魔するから許して!!


「よく言った。コルティナ・セレス。今日からお前は俺の従順な友人(下僕)だ。精々フィオナと俺のために尽くせ。」


なんとも言えない深い深い海の色した瞳が愉悦を示すかのようにその色を濃くする。

終わった。私終わった。これからはこの皇子にこき使われてポイってされるんだ。フィオナ、巻き込むことになってごめん。


私はそっと心の中で綺麗に笑う美人な友人に謝った。





拙い文章を読んで頂き、どうもありがとうございます。

もし誤字脱字などありましたら、お手数ですが教えて頂けますと幸いです。

お気に召しましたら、次話も宜しくお願い致します!

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