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第77話 持つべきものはたくさんの友達

「じゃあ早速使ってみますか!」


 蓄光器を手に入れたあたしは、ファイクちゃんを連れて寮へ戻ってきた。

 あたしの部屋には誰もいなかった。リール達は別の場所で練習をしているようだ。


 床に蓄光器を降ろし、杖に持ち替える。上部の窓に杖の先を当てて、頭の中に思い描いたイメージを魔力に乗せて流し込んだ。

 すると窓にカラーの一枚絵が浮かび上がった。それがコマ送りのアニメのように徐々に動いていく。


「ちょっとストップ。次の動きは……ああ、こんな感じだったっけ」


 蓄光器に映像を記録させておけるから、あたしは直後の動きだけイメージしていれば良い。追いつかなくなったらいったん止めて、頭の中を整理してから再開することも出来る。

 これは今までより革命的に楽だ。文明の利器ってすげー!


 イメージ通りの映像が出来上がっていることに満足しながら続けていくと、一分ほどで体力の限界を感じた。倒れる前に慌てて杖を窓から離す。


「嘘!? こんなに体力持ってかれるの?」

「わたしがやったら10秒も持たないと思います、十分凄いです」


 入学式の時に使った魔力紋のペンといい、魔法道具って意外と燃費悪いな。


 少し休憩してから、起動用に改めて魔力を流す。すると、側面の窓が光りだし壁に映像が映し出された。


「わあ! 凄く綺麗です!」


 試作したのは、魔法少女の変身バンクだ。演出が派手で動きも多いが、一話に一回必ず見るものだからあたしでも覚えていた。ブルーともグリーンとも呼べる絶妙な色合いのこの子が一番のお気に入りだ。


 色の表現限界でドット風になってしまったが、映像は合格点。ただ、ここで新たな問題が発覚してしまった。


「音がない……音響も別に用意しないといけないのか」


 映像に合わせて魔法で音を作れば良さそうだが、こんなに体力の消費が多くては練習する回数も限られる。なんとかならないものか……。


「とっても素敵だったんですけど、これだと練習するのも一苦労じゃないですか?」

「うん、そう思ってたんだ。一回でヘロヘロだもん」

「色が多いほど、必要な魔力は多くなります。一度に使う色を少なくすることで、もっと長く光を込めることが出来るはずです」


 やっぱりカラフルだと労力がかかるのかー。仕方ない、そこは妥協しよう。


「作りたいものは今の続きなんですか?」

「いや、今のはお試し。そもそも、どんな題材で作るのか考えてなかったや」


 道具が手に入ったからには、いよいよどんな映像作品にするのか決めないといけない。

 あたしが知ってるアニメでウケを狙えるだろうか?


「誰でも分かりやすい話なら、絵本を参考にするのはどうでしょう?」

「こっちの世界の童話か! 面白そう!」


 なるほど、こちらの世界の十八番なら大ウケまでは行かずとも外れはしない。

 リールやハルヒじゃこの発想には至らなかっただろうし、ファイクちゃんに相談して良かった。持つべきものはたくさんの友達だ。


 早速図書室に……行こうと思ったら、もう閉館の時間だった。カマゼル先生を訪ねた時には日が傾き始めてたし、仕方ない。題材探しは明日にまわすことになった。


「ありがとう、一人で考えるよりスムーズに進んだよ!」

「わたしも楽しかったです。それでお役に立てたならなによりです」

「次はファイクちゃんの出し物を考えなきゃね」

「あ……そうでした」


 ユングルに言われたノルマの事を思い出したのか、ファイクちゃんの笑顔が陰ってしまった。

 慌ててあたしは考えていた案を伝える。


「あのね、この蓄光器を凄く簡単にしたものをおもちゃにしたら、面白そうだと思わない?」


 だいぶ大雑把な表現だが、要するにペンライトを作ってみてはどうかと提案してみた。

 蓄光器の中にある石は巨大なものだが、小石程度のものならさほど値段は高くない。それをハートや星型に加工して、装飾した棒の先に取り付ける。発光用の魔力はクラスメイトで協力して込めておき、購入されたらそこで起動してやるのだ。


 お祭りの喧騒の中でも光るものは目立つだろうし、子供は喜んで振り回すだろう。それが宣伝となって客が増えるかも、という作戦付きだ。


「す、素晴らしいです! わたしの得意な光魔法がメインだし、装飾ならもっと得意なともだちがいるし……これならいけそうです!」

「でしょ? で、この石……どこで取れるんだろ? まあハフトリープさんに聞けば分かるか。あたしが採ってくるよ」

「蓄光石のことですか? そこまでしてもらうなんて申し訳ないです!」

「いいのいいの、最近受けた依頼に比べたら楽だろうし、あたしの出し物の事いろいろ考えてくれたお返しだよ。安くても買うとなったら費用がかさむでしょ?」

「それはそうですけれど……」


 それでもためらいを見せるファイクちゃん。


「じゃあ、まだまだ決めなきゃいけないこともあるし、文化祭まであたしの出し物手伝ってくれない?」

「分かりました、でも蓄光石は買い取ります! タダでもらうわけにはいきません」


 ここまで言われてはしょうがない、あたしは蓄光石探しをギルド経由で依頼として受けることに決めた。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 次の日、あたしとファイクちゃんは図書室にやってきた。


 入口近くを埋め尽くすのは魔法の基礎や歴史など勉強関係の本。そこを抜けていくと、目当ての絵本コーナーに辿り着いた。


 勉強の本に比べると少ないが、カラーボックス一つ分くらいの量はあった。学生の年齢的に需要はあるのだろう。

 全部読破する暇は無いので、ファイクちゃんのおすすめを抜粋してもらった。


「王道はやっぱり四神様が活躍する話ですね! 『はるかぜふくたいりく』、これはトゥーリーン様のお心の広さが詰まったとても優しいお話です。『あらしをのりこえて』、これはわたしのお気に入りなんですけど、活躍するのがディザンマ様なので春の大陸ではそこまで人気じゃないです」


 どうもあたしの想像する絵本とは違い、神話を読みやすく優しく書いたものがメジャーなようだ。神様が身近だから子供の頃から学ばされるのは当たり前か。

 童話のような話もあるが、ファイクちゃんの反応からするに神話系を選んだ方が良さそうだ。


 いくつか試しに読んだあと、気に入ったものを借りる手続きをして、図書室を出た。

 寮へ戻るために一度外へ出たところで、遠くにリールを見つけた。シルエットでぼんやりとしか分からないが、多分シュロムも一緒だ。

 いつも通りじゃれ合っているようだが、やたら爆発音が聞こえる。ドカーン、バゴーンとやかましい音を立てながら、二人はこちらへ近づいてきた。


「これならどうだ、散開魔法発射! ババババババ!」

「にゅわー、やられたー」


 シュロムのセリフに合わせて、爆竹の様な連続した破裂音が響き渡る。ただ、掛け声とは違い音だけの魔法の様で、エネルギー弾が出たりはしていない。


 リールは大袈裟に苦しむ演技をしたあと、ふらふらと落下し地面に横たわった。

 なんだか面白そうなことをやっているようだ。雰囲気は掴めたので飛び入り参加してみる。


「リール! あたしをかばってこんな姿に……」

「ムウ……危ないよ、早く逃げて……」

「はっはっは! 二人まとめて吹き飛ばしてやる! ドーーーーン!」

「「ぎゃーーーー!」」


 シュロムが放った爆音に合わせて、二人で後ろに飛んで再び倒れる。


「僕にたてつくとこうなるんだよ、よく覚えておくことだね」


 シュロムは握っていた杖の先をふっと吹くと、駆け寄ってきてあたしの手を引いて体を起こしてくれた。


「あはは、ありがとうムクさん。凄い演技力だったよ!」

「久しぶりに中二心が疼いちゃって。その魔法、随分派手な音が出るね?」

「最近はまってるんだ、色んな音を出せるようになったよ。もちろん音だけで、威力は0なんだけどね」

「シュロム君。その才能、あたしの元で生かしてみる気はないかね?」


 離れた場所からでも響く音、この魔法は映像に付け足す効果音として大いに役立つ予感がした。

 掴んでいた手を改めて握りしめられたシュロムは、頭にはてなを浮かべていた。


「ナカガワさん、いきなりそんなこと言っても分かりませんよ。文化祭のステージ発表に協力して欲しい、ってことですよね?」

「そう! そういうこと、シュロムは音響担当ね!」

「え、え? ステージ発表って、リールがやるやつ?」

「リールは敵だよ。その爆音で、打ち負かしてやろうよ!」


 ファイクちゃんの補足説明でもまだ理解出来ていない雰囲気だったが、リールが敵だと聞いたあたりでシュロムの口元がつり上がった。


「リールと勝負なら、僕がいれば百人力だよ!」

「しゅろも相手になるの? ますます負けられなくなった!」


 リールのやる気にも火をつけてしまったようだが、これで仲間を増やすことが出来た。

 さて、もっと準備を進めなきゃ!

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