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第47話 指名依頼

なんだかんだで投稿出来ました。良かった良かった。


「ちらっ……ちらちらっ……」

「ムウ、真ん中よりちょっぴり左側に名前あったよ!」

「ネタバレ! でもそれって合格ってことだよね!? よっしゃー!」


 今回も指の隙間から恐る恐る掲示板を見ていたのだが、一足早くリールの報告をうけてしまった。それ、人によっては怒りだすからダメなやつだぞ!


 ともあれ、全てのテスト結果が発表され、合格を確認。これにてようやく、テスト期間が終了した。


「再試無しとかあたし史上初だよ! むしろ人の再試をお手伝いしてるし。なにこれ達成感が凄い」


 先日ファイクちゃんと約束した通り、飛行試験の再試を見守った。

 彼女はやっぱり緊張していたが、あたしが声を掛けると少しだけ落ち着いて、無事に試験に合格した。ちなみに、ランズも今度は特攻を我慢して普通に飛んでいた。


 再試験の結果落ちてしまった2組の男子数名は、長期休みの間に補講を受けるらしい。ユングルも入っていれば良かったのになあ。等級を上げただけの事はあるらしい。


「明日の授業が終われば長期休みだ! 何しようかなあ、お祭りもあるんだよね?」

「4月中どこかの街で催し物がありますが、一番盛り上がるのは4日ですね。私も神官見習いとして祭事の手伝いをするので、一旦家に帰ろうと思っています」

「お、リサが仕事してるとこ見てみたいな。じゃあ月初めはリサに付いて行くとして」

「残念じゃが、お主の四神休暇の行き先は決まっておるぞ」


 休みの計画を立てていたところに声を掛けられ、後ろを振り向いた。しかし、こちらに目を向けている人が見当たらなかった。


「……いい加減飽きてくれないかのう」

「今のは素です。ごめんなさい先生」


 頭を下げて、丁度良く目線に入ってきたフェアユング先生に謝った。

 いつもこの時期になれば身長いじりは落ち着いてくるらしいのだが、今年は概念の化身コンゼツォンやあたしのように身長が高い生徒が多く、必然的にいじられることが多くなっているようだ。


「あたしの休暇の予定が決まってるって、どういうことですか?」

「数日前に、ある方から指名で依頼が届いたのじゃよ。お前さんと虚無くん、それから上崎……『ハイルン』宛にな」

「え、私を知っている人からですか?」


 ハルヒではなくハイルン、概念の化身コンゼツォンの名前で指名されているとはどういうことか。

 フェアユング先生から手渡された封筒には見慣れない花の封印が押されていた。


 その形をみたリサがはっとして呟いた。


「これは夏の大陸の花、ゲラニームではないですか」

「そこから依頼が来たってこと? ますます分からん」


 悩んでも分からないことだらけなので、あたしは慎重に封を開け、中の手紙を読み始めた。


────────────────────────

依頼内容・フォイカイト砂漠の異変の調査

場所・同上

報酬・「夏祭り」無料券


「砂漠で雨が降り続き、その中で魔物が暴れている」っていう情報があった。最近お前たちの話を聞いて、ますます興味も湧いてきたから、こちらに来て顔を見せてもらうついでに引き受けてくれないか? 夏の大陸一番のお祭りを無料で楽しめるように取り計らうから、よろしく頼むぜ! 


夏の大陸 ディザンマ

────────────────────────


「「ディザンマ様!?」」

「うーんと、夏の大陸の神様だっけ? 話を聞いたって……あ、トゥーリーンか」


 神様の名前を見て驚くハルヒとリサを尻目に冷静に分析してみた。

 大神殿での対談を、他の神様たちに伝えてくれたのだろう。そこでディザンマが興味を持って、依頼を寄こしてきたという訳だ。

 依頼を任せてみよう、と思えるくらいには信頼を勝ち取っているらしい。ここで実力を発揮すれば、もっと良い関係を築けるかもしれない。これはチャンスだ。


「普通は指名依頼が入るようになれば一人前の冒険者だと褒め称えるところなのじゃが、如何せん相手が問題じゃ……。お主等、名前を売る所を間違っておらぬか?」

「そうですね、本当は『秋』や『冬』に認めてもらいたくて頑張ってるんですけれど」

「いやそうではなくて……。なんでいきなり世界の頂点を目指すのじゃ……。とにかく依頼書は渡したからな、詳しいことはギルドで聞いてきなさい」


 フェアユング先生は見た目にそぐわない悩ましポーズのまま、その場を立ち去った。


「あたしは行くよ! リサのお仕事が見られなくなるのは残念だけど」

「神様直々の勅命を断るなんてあってはならないのです。こちらの祭りは皆さんが帰ってきたら改めて楽しみましょう」

「リサと離れるの?」

「仕事を貰っちゃったからねー、リールもご指名されてるから一緒に頑張ろう!」

「うん! 頑張るよ!」


 リサは帰省の準備があるというのでまっすぐ寮へ戻り、あたし達は詳しい話を聞きにギルドハウスへ向かうことになった。


「砂漠で雨か……」

「おかしな話だよね。その魔物のせいなのかな?」

「それならいいんだけど……。聞いてみないと分からないよね」

「?」


 ハルヒがいつになく難しく考え込んでいたが、思い当たる節でもあるのだろうか。

 滅茶苦茶強い魔物だったら嫌だなあ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 テスト期間中は訪れていなかったので、久しぶりのギルドハウスだ。

 中に入ると、意外にも閑散としていた。受付すら誰もいない。


「あれ、誰もいない……ハフトリープさーん?」

「はーい! ちょっと待ってね!」


 大声で呼びかけてみると、受付の奥から返事があり、すぐにハフトリープさんが現れた。


「んにゃ! あんた達か」

「こんにちは。なんだかギルドが寂しいですね?」

「しばらくはこうだろうね。里帰りやら祭りやら、皆遊ぶのに大忙しさ。月の終わり頃になると、それで金が無くなった学生たちが依頼を受けに来るから混雑してくるんだけどね」


 帰省するのはリサだけではないようだ。むしろ寮に残りっぱなしなあたし達の方が珍しいらしい。

 ハルヒにお願いすれば地球に帰れるんだけど、何やってたのか聞かれても答えづらいしやることもないし……。


「それよりアンタ、なんで夏の神様なんかに呼び出されたのさ」

「色々ご縁がありまして。で、その依頼の詳しい話を聞きにきたんです」

「どんな色々があったら神様から依頼がくるんだい。あーでも、前の依頼ではトゥーリーン様も関わったんだっけ……っと、これだねー」


 ハフトリープさんは話しながら書類を漁り、目的の資料を流れるように取り出した。やっぱり受付スキルが高い。


「まずはレーヴェっていう都市に行って、ディザンマ様に会いに行きな。この時期ならほぼ確実にビーチにいるだろうから、その線で探してみるといいよ」

「え、待ち合わせ場所が決まってる訳じゃないんですか」

「この時期は神様忙しいからねー、神官すら把握してないってこともよくあるよ。その中でも探しやすい方だとは思う。なんてったって、彼が四神月の始めにやることは決まってる」

「リサが言ってた通りなら祭事……神殿で啓示とかしそうなものだけど、ビーチ?」

「ああ、大陸全土から人を集めて行う、サーフィン大会だ」

「ねえ、ここって変な概念の化身コンゼツォンしかいないの? そういう縛りなの?」


 何度も感じたデジャヴに嘆くと、ハルヒも同感したようで乾いた笑いを見せた。


「ははは……本当に、なんでなんだろうね。偉い人ほど変だよね」

「まあいいや。そもそも、夏の大陸にはどうやって行くんですか?」

「交通手段は確保してくれたみたいだよ、はい」


 ハフトリープさんは学生証に似た、白っぽい板を手渡してきた。

 ルーフルト→レーヴェ行き、3月39日午後3時発、と書かれていて周りが綺麗な模様で縁どられている。三日後の日付だ。


「隣町のルーフルトからレーヴェ行きの船が出てるんだ。この時期に突発的に船を取れるなんて流石神様だよ、帰省ラッシュに旅行ラッシュだからね」

「船があるんだ! 魔力で動かしたりしてるんですか?」

「まさか、巨大な乗り物を動かし続けるのに魔力なんて使ってたら、特級でもない限りすぐにガス欠しちゃうね。ボニートっていう海の魔物を使役して、船を引っ張ってもらうのさ」

「アインホルンの馬車みたいなものか、なるほど。なんかワクワクする」


 授業でだいぶこの世界について学んだつもりだったが、まだまだ知らないことはありそうだ。


 調査に必要なものは現地調達、持っていくものは着替えなど最低限の旅行の荷物で大丈夫と教えて貰った。

 なんだか夏の大陸にタダでバカンスに行くみたいだ。倒す魔物がどんなものか分からないから不安はあるけれど、むしろこの前の反省を生かすチャンスだと考えよう。いざとなったら最強ヒーラーのハルヒがいるし。

 そのハルヒはまだ神妙な顔をしているけれど……まあ心配性なのはいつものことだ。


 すっかりやる気になったあたしは依頼を受ける手続きをし、出発に向けて準備を進めるのだった。


来月でなろう投稿一周年、7月にはコンゼツォン一周年を迎えます。

とりあえずはそこまで投稿を続けられるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。

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