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二日目 終了

 二日目は散々な結果だった。

 いや、攻撃出来なかっただけで生き延びる、という点においては上々ではあった。大半の人は三分から四分辺りで脱落していた。

 ただ皆、開始時とか余裕がある時に何回かターゲットを倒していた。相手が人の形をしているからだとか、そんな理由で倒せない受験生は僕を除いて二人しかいなかった。


 由々しき事態だ。取り合えず飯を食べよう。

 今回注文したのは肉と野菜を炒めただけの簡単な料理とライスを三人前。他の料理もあるにはあるのだが、見慣れない見た目のものばかりで食べる気になれなかった。

 僕は注文した料理をフォークとナイフで食べる。


 そうしていると、クレティアが対面に座ってきた。

 一度自分から話しかけてたから思うのもなんだけれど、よくこんな僕に話しかけてくるな。


「今日の午後は大丈夫だったかしら?」

「いえ……… クレティアさんも私と話していて大丈夫なのでしょうか」

「話し合うぐらいなら構わないって許可を取ってきたわ」


 彼女は後ろに視線を配る。入り口付近で楽しそうに会話している二人が見えた。


「あんたを入れるな、とは言われちゃったけどね」

「まぁ、どっちみちですけどね。ところで私と話すより他の人を勧誘した方がいいのではないでしょうか」

「確かに三人しかいないことを考えるとあと一人や二人は欲しいとこよ。でももう皆、三日目に備えてチームを組んでいるし、あぶれてるのは嫌われてるのも分からないガキばっかりよ」


 随分と他人への評価が厳しい女性のようだ。


「そんなのを勧誘するぐらいならあんたと無駄話してた方が幾分マシよ」

「出会ったばかりですのに随分と私の評価が高いですね。私、家柄も金もない平民ですよ」


 クレティアは右手の指を突き立て、テーブルを軽く叩く。そして頬杖をついた。


「爵位なんて関係ないわよ」

「そう、でしょうか?」


 リコン兄さんやアレス様からは爵位の影響力を馬鹿にするな、と教えられた。


「そうよ。より良い爵位を得る為に上におべっか使って、汚いことして、他人の足を引っ張って。あんなの堕落した人が生み出した制度よ」

「………なるほど」


 彼女は伯爵家の苗字を授かっている。それでいてその発言をする。私に話しかける時点で分かっていたが彼女は少し、変わっている。


「周りが見えるかしら? 皆爵位に拘るやつらばかりよ。他人の目ばかり気にしてあんたの悪口言う人ばかり」

「んー……」


 初日の噴水近くであったのは僕が地べたに座ってたのが悪かったが、それ以降も何かと理由をつけて陰口を叩かれていた。


「確か言われてましたね。ですがそういう時は教員が止めてくれましたから」

「………皆ってのは言いすぎたわね。この話題はやめましょ」


 そう言ってクレティアは頬杖を解いて、テーブルの上で腕を組んだ。


「ところで三日目の試験内容は詳しく調べたかしら」

「いえ。受験生同士で戦うとは聞いていますが、それ以上は」

「折角の縁だし、情報共有してあげるわ」


 ………それは嬉しいけど。


「すみません、そろそろ食事が冷めてしまうので食べてもいいでしょうか」

「食べながら聞いてくれればいいわよ」


 そう言われ、僕は食指を進めた。


「いい? 三日目はバトルロワイヤル、仮想空間で行われるわ。制限時間は最長十時間、但し自分が死んだらそこで終わりよ。

 得点は主に、自分がトドメを指した敵の数と生き延びた時間が考慮されるわ」


 ピタリ、と食指が止まる。口元を抑え、中の食べ物を飲み込んだ。

 自分はまだ人に剣が向けられないから、それだと圧倒的に不利だ。


「開始地点はそれぞれランダムなんだけど、開始前に事前に誰と一緒に始めたいかは聞いて貰えるから、チームを組もうって言ったのはそれね」

「なるほど、ところでそのルールだと強い人に最初に狙われたら終わりですよね」

「そうね、だから三日目の試験ことを『理不尽』って呼ぶわ。因みにそんな事故を避ける為に皆、人脈を駆使してチームを組むのよ。もしくはお互い不干渉を決めたりね」


 ………組まない、と言ってしまったがそれを聞かされ心配になってしまった。


「とはいえチームを組んだとしても侯爵や公爵、王族なんかに狙われたら終わりね。彼らは大きなチームを作るってのもあるけど、そもそも彼ら自体が強いのよ。特にグレイ王国第一王子とかね」

「えーっと、強いってことは…… フィレイ殿下ですか?」

「見たことはないけど現国王より強いって噂よ」

「確かにそうですね、あれは狙われたら終わります」


 そう答えると、彼女の目つきが険しくなった。


「見たことあるのかしら?」

「ええ、昨日の試験で。確か十二人に分身して、三つ同時に魔法を行使していました。魔力も桁が違いましたし、加護も色濃く授かっていました」

「………まさに規格外ね」


 その上を行く師匠も二年後に入ってくる。二年後の試験は地獄だろう。


「ま、お互い頑張りましょう。出会ったとしても狙わないであげるわ」

「はい、不干渉というやつですね」

「そうね。あ、分かってると思うけど、多分あんた執拗に狙われるわよ」

「一人だと恰好の的ですし、結構嫌われてるみたいですからね。頑張って逃げ延びます」


 そう言って食事に戻ろうとした時、クレティアが目を細めて、僕を睨んできた。


「あんた、人に剣を向けられないって噂が流れてるわ。少なくともこの建物にいる子は全員知っているし多分、明日にはもっと広まってるわね」

「………っ!」


 この建物と周辺の建物で、受験生が合わせて五千人近く滞在している。全体ではわずかな割合だが、それでもその数は馬鹿に出来ない。


「それじゃ。明日に備えてさっさと寝なさいよ」


 彼女は立ち上がり、食堂を出る。割り当てられた部屋に行ったのだろう。

 しかし…… どうしたものか。


 僕は冷めた野菜炒めを口に入れながら、考える。

 結果、良い案が思い浮かばなかったので考えるのを一度やめ、さっさと寝ることを決めた。明日には解決策が思い浮かんでることを願って───

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