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軍神アレスと元鬼人グレイラット

【元鬼人】レイ=ミルロット


 ふむ、どうしたものか。


 どうやらミリが言うに、シオンは人が死ぬのを見るのがダメらしい。正直理解出来ないのだが、私も虫が嫌いな次期があったし多分そういうものだろう。

 その時は確か、虫塗れの洞窟で一ヶ月生活して克服したんだっけ。


 シオンにも一ヶ月殺人生活…… いや、シオンが指名手配されたら他の人と協力して私を殺すとかほぼ不可能になってしまうだろう。流石にそれは避けたい。

 人間社会を捨てて生きる道も教えたが、その前に仲間を作って欲しい。


 指名手配されないで殺人を克服する方法か……… 昨日みたいに盗賊を探して、そこにシオンを放り込んで殺すしかない状況にするぐらいしか思い浮かばない。


 いや、確か現代の魔物で人型の魔物がいたような。似たものから慣れさせていくという手段もありだろうか。


 そんなこんなのこれからを、道場で単身素振りしながら考えてると、突然脳裏に聞き覚えのある声が響いた。


『よう鬼人グレイラット、すっかり腑抜けたな』


 声の主は、戦いの神として信仰されている軍神アレスの声だった。前世でもちょくちょく話しかけて来ていたが、私が誰にも挑まないようになるとアレスからの連絡も途絶えた。

 転生で眠っていた時間を除くと、実に二十年ぶりだろうか。


(ああ、アレスか。久しぶりだね)


 対話の相手は神様なので、耳を傾ける必要も目を合わせる必要もない。私は素振りを続行する。


『お前は本当に腑抜けた。戦士と知れば勝負を挑み、問答無用で殺していた時代はどこにいった。んで今は後継者でも育ててるのか? 全く、老いて腑抜けたと思っていたが転生して更に腑抜けた』

(随分と好き勝手言ってくれるね? 今私は、私を殺す人材を育ててるだけだよ)


 全く、私が何をやっているか知りもしないで批難を浴びせるとか、神様としてどうなのだろうか。私は腑抜けたのではなく、計画性という言葉を老いてやっと覚えただけだ。


『クハハッ、計画とでも言いたいのか? 笑わせてくれるな、貴様程計画が似合わない人間もいねぇよ。貴様に計画なんて不可能だ』

(アレス、君は何を分かったつもりになって喋っているんだい?)

『理解しているぞ、貴様より貴様のことをな。知ってるか? 自分のことは自分が一番知っていそうで、自分が一番知らないって話を』


 仮にそれが真実だとして、見てもない奴に説教されたくはない。


『断定する、今のお前は最高に腑抜けだ。シオンを我が子のように可愛がって育てて。それで本当に殺せると思っているのか?』

(殺させるよ。その為にわざわざ手塩にかけて育ててるんだからね)

『………自覚の片鱗すらないのか。いいか、俺が言っているのはシオンのことじゃねぇ。貴様がシオンを殺せるのかって話だ』


 アレスは何を言っているのだろうか。今の時点でシオンなんて相手とも思えない程弱いし、もし私が歯向かえない程シオンが強くなるのであれば、それは本望。

 その程度分かってないでよく分かってるとか断言出来たな。


『まぁいい。折角貴様に話しかけたんだ、シオンは俺が貰うぞ』

(あ?)


 軍神の突然すぎる言動に素振りしている身体を止まる。運動程度無意識に出来る筈なのに、無意識に止めてしまった。

 神様の大半が快楽主義で気分屋なことは知っているが、その言葉は聞き入れられない。


『不満そうな顔してるな。何、別に無理矢理奪おうって言ってる訳じゃない。あいつ自身に聞くんだ、俺の寵愛を受けないかって』

(それならどうぞご自由に)


 別にシオンに聞くだけなら奪われるようなことは特にない。なんせシオンは私の元で順当に強くなっている、わざわざ不確定な加護を授かってまで私を捨てる理由がないからだ。

 軍神が強硬手段を取らない限りはシオンはアレスの加護を拒否する。


『ククッ。貴様の思い通りに行くかな?』


 最期にそう言ってアレスは声を消した。脳内に語りかけられているような感覚が綺麗に消えうせた。

 悪口だけ言いに来たのなら少し不快だが、まぁ別にいいか。


 再び素振りに入って身体を鍛えていると、シオンの部屋からミリが戻ってきた。


「お嬢様、シオンが目を覚ましました」

「うんありがとう」


 確かシオン、体力が限界を迎えて倒れたんだっけ。いつもギリギリを見極めて休ませていたつもりだったが、始めての実践練習で気持ちが舞い上がっていたのだろうか。


「っと、シオンの容体でも診てあげないとダメだね」

「その点ですが、今は見にいかれない方がよろしいかと。何やらシオンは悩まれている様子ですので」


 ん? ………まぁ、ミリが私に後ろ向きな意見をするとか珍しい。珍しいということは、ミリなりの考えがあるのだろう。だとすれば行かない方が良さそうだ。


「分かった。ミリ、調子良さそうだったら教えて」

「了解しました~」


 とはいえ、シオンに何があったのか少し気になりはする。まぁ行かないと決めた以上行かないのだが。

 ………一人で練習でもしてるか。


 ………えっと、一人の時はどんな訓練してたっけ。


 なんか、シオンもミリもいないと退屈だなぁ。ちょっと私が前世を生きていた頃の奴が展示されているという博物館にでも行ってみようか。

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