表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちない話  作者: ポンパドゥール
1/1

少年は悩んでいた

最近Simejiの調子が悪い。

とある日の朝。


ふっと目が覚めた。

枕元の目覚まし時計を見ると、朝の薄暗いフィルターの向こうに5:30の表示。

一家四人で川の字になって寝ている和室に、外の気配が押し寄せていた。

とはいえ、外はまだ暗い。

暖かくなって来てはいるが、まだ寒い季節である。

朝が来たと勘違いした鳥が、独り寂しく鳴いている。


隣で寝ている父を見た。

大音声でいびきを轟かせている。


そして得心する。

ねぼすけの僕がこんな時間に起きたのは、普段は単身赴任でいない父のいびきの所為だったのだ、と。


目が冴えてしまい、これ以上寝れるとは思えなかったので、のそのそと布団から這い出た。


水を飲んで、部屋の机に向かう。

もう受験生なのだ。

4月になれば高校生も最後の年。

一緒に遊んでいた友達が、大学のために受験勉強をし始めたので、まるで置いて行かれているような焦りを感じていた。


静かな静かな世界。

夜が開けるのを待つ世界。

この世界には、怠惰な人間は活動していないのだ。

そう考えると朝の空気が尊く思えた。

だからと言って、普段早起きかと言われると、否定せねばならないのだけれども。


机の上には、昨日やっていた数学の問題集とノートがそのままで広げてあった。

結局、問題を解けなくて、放置して寝てしまったのか。

昨日の夜を思い出し、問題に目を通したが、やはり解けなくてうんざりする。

受験生になれば、一年間も勉強に向き合わなければならない。

その果てしない未来に不安を抱いた。


秀才の友達がいることを思い出す。

あいつはあろう事か、数学の模試で満点を取ってしまった。

あいつならこの問題も分かるかもしれない。

助けを求めるLINEを送ろうとして、文面を打ったが、送信はせずにスマホを放った。

まだ勉強に本腰を入れられない、

自己嫌悪が嫌だったが。


カーテンを開けてみようと思った。

世界は着実に時計の針を進めていた。

起きた時より、空は明るくなっていた。

冷たい窓の向こうには、もう少しで朝日が昇るだろうという気配がする。

鳥の鳴き声が三つ、聞こえていた。


僕は、この時間が好きだ、と思う。


数学を脇にやり、英文法を開ける。

数学ほどの拒否反応は起こらない。

小さい頃に英会話教室に行っていたからだろうか。

あの英会話で習った内容は、学校で全く役に立たなかったが、英語に対する苦手意識を少なくするためだったのかもしれない、と考える。


ぼんやりと、集中しているのかしていないのかという状態を続けながら、英文法を解いていた時。


それは突然に、隣の家から実に突然に、訪れた。



「ぶあぁっくしょーーーいっっっ」



突然の出来事に、僕は驚き、笑いがこみ上げて来た。


沢山の人が花粉と戦う季節である。

そしてそれが自分も例外ではないことを思い出した。

同時に、鼻がむずむずする。

目がうずうずする。


もう駄目だ。思い出してしまった。

僕に現実を突き付けた隣人を恨みながら、僕も一発。



「っくちゅん」

次話も待っててくれたら嬉しい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ