高家由良氏の滅亡③
興和4年。英寇から4年後の4月。由良貞臣率いる由良軍全3000人の内、1500人が岩松領に向けて進軍した。
由良貞臣は黒革の具足を身に纏い、兜は熊をモチーフとしていた。陣羽織も羽織っている。馬も立派である。この装いには、自分がいかに高貴であるかをアピールしていることが見え見えであった。
「ふふふ。これであれば5日の内に俊光乃至は岩松の息の根を止められるぞ。」
貞臣は自信があった。彼はライフル銃を1500丁オランダから輸入していた。そして、オランダから密集戦法をしっかり伝授してもらっていた。大勢で密集して銃を発射し、後ろの兵が前に出て攻撃する。この繰り返しをしながら徐々に敵陣に近づく。そして敵が怯んだら従来の騎馬、足軽により攻撃する。もちろん。従来の通りの野戦も行う。貞臣はこのような和洋の戦術を組み合わせれだ確実に勝てると踏んだ。
「上田。岩松の情報は?」
「は。渡良瀬川近郊に兵を置いています。およそ700人です。」
「そうかそうか。よし、一気に俊光を叩く。全軍進軍するぞ!」
午前4時に先方隊1400名を率いて貞臣は進軍した。
一方岩松俊光は渡良瀬川近郊の平野に陣を構えていた。兵は700名。兵士は皆特に鎧を身に着けず、せいぜい胴を付ける位だった。俊光は足に草摺りを身に着け、胴を付けるぐらいで、頭は鉄板入りの鉢巻を付けるぐらいだった。しかし、下の服は筒袖、ズボンといった動きやすい物であった。
「金井。何を心配している。顔色が悪いぞ。」
「いえ、弾正殿。なんでもありません。」
「分かっている。勝てないと思っているんだろ?切腹を覚悟せにゃならんと。」
「い、いえ。」
「心配するな。必ず勝てる。お前は俺に従っていればいいんだ。無能。」
「・・・。分かりました。」
「さあ、自信たっぷりに攻めてこい。由良。」
午前7時頃、太田から由良軍およそ1500名が現れた。総大将の由良貞臣も出陣している。現場主義というよりは、自分が岩松を滅ぼして500年の楔を絶つということをアピールしたいのだろう。自信満々といった感じだ。
「やっぱり相当ライフル銃を装備しているな。これ見よがしに。」
俊光は軽蔑の眼差しを由良に向けた。そして、最初に由良軍が進軍を開始した。そして、渡良瀬川近くで止まり、対岸にいる岩松軍にライフルを向けた。
「よし。作戦通りにやるぞ。敵に乗せられるなよ。」
「了解です。」
「皆の衆も全力を尽くせ!いくぞー!!!」
「オー!!!」
読者の皆様。由良軍は対岸からライフル銃を向けている。ここで岩松軍が川を渡っても狙い撃ちされるだけである。一体俊光にどんな策があるのだろうか。