高家由良氏の滅亡②
登場人物・・・由良貞臣 由良家17代当主
五木慶永 由良家家老
由良貞臣。由良家第17代当主。47歳。祖父の代から幕府の要職に就いていた。領内は太田、足利の一部。懇ろの長尾氏の領土を合わせると、太田、足利の領土を持っていることになる。決して領土は多くない。
しかし、由良貞臣は英寇以後の幕府混乱を上手く渡り歩き、更なる出世を約束された。なんと官位が従6位から5位に格上げされた。しかし、英寇では大した活躍はせず、むしろ、岩松に負担を押し付けていた。由良にとって岩松は搾取の対象であった。そして、政治手腕を活かしてさらなる高みを目指したがっていた。
だが、貞臣には目障りな存在がいた。そう、岩松俊光である。奴は幼少期から生意気なガキであると貞臣はいつも思っていた。特に自分に対して常に蔑んだ目を向けてくる。しかし、礼儀が人一倍しっかりしているのである。なので、由良家内での評価が高かった。そう、俊光は貞臣に対してのみ蔑んでいたのである。貞臣は相手の悪意を感じ取ることに長けていた。その俊光の態度に憤りを感じていた。必ず殺してやると考えていた。そのため、俊光の粗探しに必死であった。そして、岩松領内の生糸貿易の成功に目を付けた。由良氏は岩松に対して非合法ではあるが、生糸生産の利益の一部を徴収していたのだ。しかし、利益が出てもその分を徴収金に含めていない。俊光のボロそこにあると踏んだ。そして、幕府にその実情を訴え、岩松が不正に商売を行っていると訴え、見事、幕府から岩松俊光討伐令が降りたのである。
「おい、慶永。準備は順調か?」
貞臣は家老の五木慶永に質問した。
「は。殿。武具の用意は整い、兵員も揃いつつあります。」
「よしよし、上出来だ。今回は俊光を討伐するが、いずれは岩松を滅ぼす。あの家は由良にとってはしこりにすぎぬ。」
「はい。しかし、今さらですが、早急に事を運びすぎでは?」
「いいや、そんなことはない。あの俊光という餓鬼はすぐにでも滅ぼさねばならん。だいたい岩松など、とっくに滅ぼしても良かったのだ。あの家は幕府に家系図を渡さなかった。つまり幕府に敬意を示さなかった。岩松に鉄槌を下せなかったことを私は非常に後悔している。」
「やはり500年前に岩松を滅ぼしておくべきでした。しかし、その念願も叶いますね。もう俊光が可哀そうなどと言っていられないですね。」
「そうだ。これで由良家にとって新しい時代が始まるのだ。」
そうして、足利の情報が入ってきた。
「そうか。長尾景允よ。農民一揆をしっかり解決したか。よしよし。これで長尾も心置きなくわが軍の見方をできるな。はっはっは。」
由良貞臣は岩松俊光を打ち負かすことを心待ちにするのであった。